新設部署のAWD-CoEでボクが取り組んだこと
前回のこちらの記事で、新設部署のAWD-CoEでのボクの立ち位置は
AWD(全輪駆動)に関する実験部署の窓口的なものであると自分自身で設定したわけで、
今回はもう少し具体的に何をやったのかを思い出しながら書いてみましょう。
ただ、最初から書いてしまうとなんですが、ろくなことはしなかったので
正直言ってもう忘れているというかあまり思い出したくもない感じでもあるんですけどね(汗)
箇条書きで挙げれば以下の8つくらいになるかと思います。
1)実験部員対象にAWDに関する社内アンケート実施
2)実験部員対象にAWDに関する座談会開催
3)AWDに関する実験部署対象にAWDに関する技術的公聴会開催
4)他社4WDvs2WDのカタログ諸元・価格比較調査
5)他社4WDの市場アピール方法整理
6)他社乗用車の左右LSD展開の調査・整理
7)AWD関連運動性能シミュレーション
8)AWD関連の部品メーカー、ユニットメーカーのプレゼ視聴・試乗
1)~3)はほとんど何も生産的でないのですが
AWD-CoEという部署が新設されたことの認知を実験部署内で広めておこうということと
AWDということに対してあらためて意識をしてもらいたいということとです。
そして、その後にAWDシステムの評価や開発をするとなった際に
どんな性能はどの部署が責任持って評価・開発するのか
それにはどんな試験法があってその評価基準はどうなっているのかなど、
それらを整理するとともに各々の実験部署・実験部員に自覚を持って取り組んでほしかったからです。
なので、その第一歩という感じで実施したものです。
この後でAWDに関連するそれぞれの性能とその責任部署はどこかという紐づけは
いちおう各実験部署で取り決めて合意に至ったのでそれ自体は成果とも言えるんですけど。
実際にはなし崩し的にうやむやにされてしまった部分もあったので実効力はなかったですね。
特にグズグズになってしまったのが走破性(悪路走破性、登坂性能)に関するものでした。
初代レオーネ4WDの開発の頃はどうだったのか?
ボクが入社した時は既にそれからずいぶんと時が流れてスバルでは4WD・AWDが当たり前となり
また乗用AWD・高速AWD化が進んであまり悪路走破性を真剣に評価しなくなっていたようで
責任部署がどこかも曖昧で評価方法も定まったものはありませんでした。
たぶん、レオーネの頃は自称親分たちが適当に悪路をただ走って試験してたんじゃないかな。
ただ、アウトバック、フォレスターと開発する中でもうすこしちゃんと(科学的・工学的に)
走破性を試験して評価するようにしなければいけないという雰囲気がでてきて
79V(初代フォレスター)の開発では実用性全般を評価する部署が責任部署となりました。
なので、この時の79V先試車でのアメリカ走行試験でもそこの部署の人が同行してました。
もっとも困難な走行部分はほとんどボクがハンドル握ることになりましたけど。。。
そして、この時の悪路走行の結果(路面状況と走破性)を元にSKC(スバル研究実験センター)内に
悪路走破性を評価できる試験コースを設定して評価方法も仮設定とかまでしたんですよ。
ところが、その後に人が変わったからか、そんな評価は棚上げされてしまっていたんですね。
その代わりにやっていたことは、GMの視察や自衛隊の見学などがあると
そこの部署の人がAWDパフォーマンスと称して広い斜めの斜面を
AWD車で登ったり降りたり八の字旋回するとかいうのを披露するというものだったのです。
歓迎の余興としてはそれでも良いんですけど、開発とは無関係だし科学的・工学的ではありません。
当の部署の人もほとんど余興だと自覚していたと思いますが
それまでの走破性の責任部署であり評価コースと評価方法を仮設定したことまで
余興だと思っちゃたのか、その後また放置・放棄しちゃってたんですよね。
FM5(4代目フォレスター)でボクがX-MODEという機能を提案したときでも
走破性・登坂性能はその部署が責任部署であるにも関わらず当初は全然自覚もなく
評価方法もてんでトンチンカンなことやってましたから(怒)
走破性以外でもAWD関連の評価方法は全然いい加減でしたし試験設備も全く不十分でしたね。
例えば、バサルト・磁器タイルの低μ路はあってもそれはほぼABS性能試験のためだけのもので
操縦安定性の試験をするには十分な幅がなかったりしていたし
散水施設のあるスキッドパッドや旋回低μ路は当時はありませんでした。
低μ登坂路はいちおう作ってあったものの長さが短く発進しか評価できないし
2時間かけて貯水して30分しか連続使用できないという代物で、
しかもメンテもされてなくて散水施設が壊れたままというのが当時の状態でしたね。
このあとGMのテストコース(デトロイト)に行く機会があったのですけど
GMの方がはるかに充実したテストコース路面、試験設備を備えていて
正直なところスバルがAWD-CoEなんてちゃんちゃら可笑しいなと情けなくなりましたよ。
企業規模が大きなGMなので設備が充実しているのは当然という部分もなくはないですが
逆にはるかに小さな企業である栃木富士産業(現GKNドライブジャパン)のテストコースの方が
これまたはるかに充実したテストコース路面と試験設備を備えていますから何をか言わんやです。
氷雪上のテストコースでもまったく同じで、スバルもいちおう北海道美深にテストコースありますが
ブレーキ試験用の雪上路面でさえ水平でなく下り勾配が付いていたりと笑っちゃうようなレベルです。
雪上・氷上のスキッドパッドなどはありませんし
登坂路といってもただの坂道の圧雪を適当に除雪しただけで一定の勾配でもないし
幾つかの勾配が用意されているわけではありませんし、氷結の登坂路など望むべくもありません。
一方でその氷雪上のコース管理は地元の土建屋・除雪屋さんにただ任せているだけで
路面管理のプロでもなんでもないので路面のμは管理されず成り行き任せという状況でしたね。
たぶん、今もそんなに改善されているとも思えないですが、どうなんでしょう。
このあとGM(が借用していた)のミシガン州の氷雪上テストコースに行く機会があったり
ボッシュが使用していたスウェーデンの氷雪上テストコースにも行ったりしましたが
これまた格段に充実したバラエティに富んだ施設になっておりかつプロの手で路面管理されてましたね。
ボクの嫌いなブリヂストンもまことにきちんとした氷雪上テストコースでしたし。
ただ、スバルはそんなあまりにも低レベルな状態であるにもかかわらず
市場ではある程度のAWDの評価が得られていたというのは不思議だし驚きですね(笑)
それを単にノウハウの差と片付けてしまってはその先の発展はないでしょうし
そのノウハウが整理もされておらず明文化もされていないのでは
GMに対してもほとんどAWD-CoEの役割を果たせませんからね。
かといってAWD-CoEという部署だけでそれらを全て解決していくことは無理ですから
それぞれの実験部署の自覚を促してそれぞれが一歩づつ進めていくしかないだろうということで
最初に挙げた1)~3)にまずは取り組んだということなわけです。
と、さらっと書くつもりが気付けば長々と書いてしまっていたので本日の記事はここまでとします。
続きはまたそのうちに。
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