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新書「台湾 四百年の歴史と展望」を読了

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中公新書の「台湾 四百年の歴史と展望」伊藤潔著を読みました。
最近は大陸に関する本半島に関する本を読んだので今度は台湾というわけでもないですが……

初版が1993年8月となってますからもうかなり古い内容の本とも言えます。
どうやって入手した本なのか忘れてしまってますけど
おそらくブックオフかどこかで格安で中古本を入手したんでしょうね。

まぁ副題のように“400年の歴史”ということからすれば初版から30年も経ってないので
誤差範囲のようなものとも言えますけど、中身を読めば読むほど近代以降というか
李登輝総統が誕生し民主化が進められるようになった1988年以降の
台湾のに主軸が置かれ展望として書かれていることからするといささか古い内容とも言えます。

といっても、ボクは台湾にも出張で行ったことがあるにも関わらず
恥ずかしながらそこに至るまでの台湾の歴史について台湾の現状(1990年代)についても
ボクは詳しくもはっきりとも理解していなかったので、この本を読んでかなり勉強になりましたけど。

 

表紙カバーの表の袖、つまり表紙カバーを一枚めくった折り返しの部分には
簡潔に以下のように本書の内容が紹介してあります。 
                               (以下引用、改行変更)
一六二四年、大航海時代のオランダ支配に始まり、今日までの四百年に近い台湾の歴史は、
「外来政権」による抑圧と住民の抵抗の記録である。外来政権はオランダ(スペイン)、鄭
氏政権、清国、日本そして国民党政権である。では近年の目覚ましい経済発展の要因はどこ
にあったのか。また急速な民主化の進捗は、対中国との関係で台湾をどのように変貌させる
だろうか。一九九三年の「シンガポール会談」を踏まえ、歴史を描き、将来を展望する。
                                   (引用終わり)

オランダ支配からの400年しか歴史がないということに先ず驚いてしまいました。
もちろん、それ以前にも先住民も大陸からの移民もいたわけですから
歴史がまるっきりないというわけではなく、
文字文化がなく歴史が記録されていないとかまとまった権力がなかったということですけどね。

日本だって縄文、弥生、古墳時代の歴史はほとんどないか
あっても神話なのか想像(捏造?)なのか曖昧なものですからどうこう言えたものでもないですが。
それでも、400年以上前の先住民にもなんらかの言い伝えや思想・文化はあったはずですから
それがどういうものであったのかも知りたいなと思うのですが、
それは本書には書かれてませんしおそらくそのような先住民も思想・文化はすべて消失していて
今となっては痕跡すら分からないということなんでしょうね。

 

著者は日本統治下の台湾で生まれて中華民国籍を経て日本に帰化した歴史学者です。
おそらく故郷の台湾に対してだけでなく
日本に対してもチャイナに対しても複雑な感情を抱いているのでしょうけど
それらを押し殺すような感じで客観的に史実に基づいて淡々とこの本を書いているように感じました。
その意味では非常に読みやすいし理解しやすい内容となっていると思います。

逆に言えば主観的な主張はほとんどありませんが
それでも日本統治については「あとがき」で以下のように個人的な意見を書いています。
                                      (以下引用)
 もとより私には、日本の台湾における植民地支配を美化する意図は毛頭ない。台湾を支配した
大日本帝国は「慈善団体」ではなく、その植民地経営が「慈善事業」でないことは当然であり、
「植民地下の近代化」も日本の「帝国主義的な野心」に発したものである。 
        (中略)            台湾の歴史は「外来政権」の支配の歴史で
あり、物理的な武力装置による「帝国主義」支配の歴史でもある。それゆえに私は、日本の台湾
統治における「植民地下の近代化」を強調するのである。           (引用終わり)

ここにも著者の複雑な心境が垣間見えますし、それがある程度は台湾の人々にも当てはまるのでしょう。

日本敗戦後には台湾の人々の中では以下のような話があったのだそうです。
                                      (以下引用)
「犬(日本人)去りて豚(中国人)来たる」とまで嘆くようになった。要するに、日本人はうるさ
く吠えても番犬として役立つが、中国人は貪欲で汚いというのであるが、そこには台湾人は日本
人や中国人とは違った存在であるという、潜在的な意思があることに注目したい。
                                      (引用終わり)

台湾の親日感情はよく報道されますが、それは日本の台湾統治を肯定しているわけではなく
あくまでも他の外来政権に比べて結果的にマシだったということなのでしょうね。
その台湾人の親日感情についても以下のような記載がでてきます。
                                  (以下引用、改行変更)
 今日の台湾人年配者に多く見られる親日感情は、これら日本人教師の存在に負うところ大である。
                                      (引用終わり)
大日本帝国軍ではなく学校の教師が身近な日本人であったし
そこには支配する側vs支配される側という対立構造がなかったが故に生まれた感情なのでしょうね。

 

なお、本書の最終章では台湾の今後の課題が述べられています。
本書が書かれた1993年における今後ではありますがその後劇的な展開があったわけでもないですが
今まさに大きな動きが出てきそうな気配となってますから、簡単に紹介しておきましょう。

 (以下引用)                          中国政府は香港とマカオ
の「一国両制」を「台湾統一」のモデルと位置づけているが、総督の立法に関する諮問機関に過
ぎない、立法評議会の民主化でさえ認めない「一国両制」を、民主化の進んでいる台湾住民が受
け容れるはずはない。しかも植民地支配下の香港とマカオは、日常生活物資の大半を地続きの中
国に依存しており、軍事的にも中国に対抗する意思も能力もない。香港やマカオは「一国両制」
を受け容れざるを得ない事情があり、台湾とは同列視できないのである。    (引用終わり)

どうなるでしょうかね。その時、日本はどうすべきなんでしょうかね。

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