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単行本「100年デフレ」(2003年発行)を読了

B201022_13 
日本経済新聞社の「100年デフレ 21世紀はバブル多発型物価下落の時代」水野和夫著を読みました。
元・図書館にあったものをタダで貰ってきた本ですので2003年発行とやや古くなっています。
前回読んだのがサブプライムローン問題直後・リーマンショック直前の経済についてでしたが
今回はそれよりも前の日本のバブル崩壊から平成デフレの1990年代を中心に
経済および社会について書かれている内容です。
ただ、歴史の振り返りなどもありますから16世紀あたりのデフレくらいまで遡ってますが。

総ページで400ページ近くもあり、専門用語も多く、数式も出てくるような
ちょっと小難しい内容の本ですが、内容的には面白くてなんとか読み切りました。

 

まずは「プロローグ」で以下のように書かれています。              (以下引用)

 ところが、九七年の不況は、九一年七月から金利を継続的に引き下げる過程で生じた、「新型の不
況」である。この新型というのは、二つの意味をもつ。
 一つは、需要サイドに原因があるのではなく、供給サイドに原因があるという意味である。(中略)
 「新型」というもう一つの、そしてもっと重要な意味は、世界の政治・経済・社会システムが大き
く転換するときに生じる「歴史の峠」型不況ということである。 (中略)  日本で日銀がこれだ
け量的緩和策を採ってもマネーが増えないのは、もともと経済規模や人口に比べてマネーが過剰だっ
たからということに他ならない。                        (引用終わり)

要するに、それまでの不況のように財政金融政策で不況に対処するワザ、
つまりには低金利にしてマネーをじゃんじゃん刷って公共投資してもダメというわけです。
どうしてダメかというと「新型」だからなのですがその背景には、         (以下引用)

 ある国でマネーを過剰に供給しても、その国でバブルが生ずる必然性はなくなった。マネーは国境
を越えバブルを生成させる。その結果、世界中で資産価格が急騰する。      (中略)
     バブル生成過程では強気見通しに基づいて物的設備が積み上がり、崩壊過程では需要が委
縮し、過剰設備が生ずる。その結果、デフレが加速するだけになる。
 マネーはバブル生成過程で資産インフレに吸収され、一般物価(消費者物価などで表される財・
サービス物価)は景気過熱下でも上がらない。金融引き締めは実施されず、マネーは一段と供給され
るから、超低金利が実現する。                         (引用終わり)

日本の過剰なマネーがアメリカのサブプライムローン問題やその後のリーマンショックの
引き金になったとも言われているわけですが、それを既に予言しているような内容ですし、
マネーの過剰供給と超低金利を続ける限りデフレは続くと予言しているわけで
実際に平成デフレは失われた30年とさえ言われるようにその後も続いて今に至るわけです。
これらを2000年初頭に予想しているわけですから、その点だけでも説得力があるというものです。

そして、当時の小泉政権下でどうなったかというと、               (以下引用)
                                    間接金融比率の高い
日本は、銀行にリスクが集中するシステムである。これまでは、土地本位制によって銀行に集中した
リスクを、国債本位制に置き換えることで押さえ込んでいたに過ぎない。
 不良債権処理の加速は銀行のバランスシート上、借り方サイドの貸出債権を減少させる。年金や医
療保険などの抜本的改革は先送りされたままである。人々の将来への不安は高まり、銀行のバランス
シート上、貸し方サイドの預金(マネーサプライ)は増える一方である。国民に将来不安があれば、
貯蓄は過剰にならざるを得ない。
 過剰貯蓄と貸出減は、銀行の国債保有を増加させる。これは「国債の貨幣化」現象である。土地
本位制は土建国家といわれるように大きな政府の源であったが、現在でも大きな政府の基本的性格は
同じである。国債本位制は国債発行を容易にさせ、肥大国家に邁進させる。     (引用終わり)

その小泉政権の経済対策を担ったのが竹中平蔵氏であり、アベノミクスにも加わり、
菅新首相もそのアベノミクスを継承するというのだから
この先さらにデフレは続くということになるのでしょう。
故に「100年デフレ」というタイトル通りとなってしまうんですかね。
ボクが生きている間は小さなバブルはあっても基本的にずーとデフレってことですね。
まぁそれはそれで個人的には悪くはないとは思いますが……
もっとも新型コロナ騒動で短期的にはどうなるか予測不能とも言えますが。

それにしても、「国民に将来不安があれば、」というくだりはボクみたいに経済に不勉強な人間でも
常日頃からそうだよなぁと思っていたことですし、
昨今ではそれは国民だけでなく企業も同じマインドでだから内部留保を貯め込むことになるわけで
そういう不安を取り除こうとする政策をしない限りはデフレは続くし
国民の幸福度は上がらないんでしょうね。

 

もちろん、デフレが続くのはそれだけが理由ではなくグローバル化の進展により
アジア(特にチャイナなど)による「世界の工場」からの供給過剰と大幅な為替格差もあります。
そこら辺のところは本文中に詳細に解説されてますがここでは割愛します。

そして、著者はデフレそのものが悪いわけではないということとともに
日本では生産性革命が起きていないことが最大の問題だと指摘しています。
というか、生産性革命を起こさせるような政策を採ることを提言しています。
菅新政権に期待するしかないでしょうね。

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