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文庫「女の子は本当にピンクが好きなのか」を読了

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河出文庫の「女の子は本当にピンクが好きなのか」堀越英美著を読みました。
著者は色の研究者とか脳や認知や児童心理の専門家とかではなく
ライターであり普通(?)の二児(姉妹)の母親という方のようです。

そして、この本ではただ単に「女の子がピンクが好きなのかどうか」
あるいは帯に書いてあるように「生まれつきなのか社会によるものか」ということだけでなく
社会におけるジェンダー差別、とりわけ日本社会でのジェンダー格差などに迫るという
意外にも(そう思って読み出さなかったので)社会派の内容となっていました。

ちなみに、この本は2016年2月刊行の同タイトルの単行本に加筆修正して文庫化して
2019年10月に発行されたものです。
5年近く前でもさほど内容的に古臭くなっているわけではないでしょう。

 

先ず最初に断っておかなければならないのは、日本のオッサンが(ボクも含まれますが)ピンクというと
ともすると「ピンサロ」や「桃尻」みたいに性風俗やエロのイメージが出てしまいますが
以下のように書かれているようにこの本ではちょっと別扱いしています。  

(以下引用)      松沢呉一氏は、昭和初期のわいせつ雑誌の版元が、政府の規
制をかわすためにひな祭りによって若い女性のイメージがついていた「桃色」という
言葉を誌名に冠したあたりから、徐々にエロを匂わせる言葉として使われ出したので
はないかと推測している。ランダムハウス英和大辞典には、英語の「pink」には日本
の「ピンク」に含まれているようなわいせつな意味はなく、わいせつを意味する色は
「blue」であると記されている。 (中略)     なお、中国ではわいせつとい
えば黄色、スペインでは緑、イタリアでは赤である。意外に思えるが、ピンクとエロ
の結びつきは、日本独自のものであるらしい。            (引用終わり
)

そんな日本でしたけど、                        (以下引用)

 ピンクが女児のものとなる最初のきっかけは、一九七〇年代後半のピンク・レディ
ーの登場だった。      (中略)          当初は間違いなく大人
の男性向けのお色気デュオだったはずである。しかしひとたびテレビに登場するや、
彼女たちが放つお色気と振り付けの下品さに、世の女児はたちまちとりつかれてしま
った。                              (引用終わり)

1973年生まれの著者がそういうのだから当時の女児はその通りだったのでしょう。
当時のボクは思春期まっただ中でしたからなんともモヤモヤソワソワした感覚でしたが(笑)

 

さてさて、そんな女児にピンクという組み合わせから意外な問題提起の内容になっていきます。
子供の玩具はブルーなどの男児向け/ピンクの女児向けと分かれて販売されていて
男児向けはロゴやエレクターセット(組立て玩具)などであるのに対して
女児向けは人形やぬいぐるみやお化粧セットなどとなっているとのこと。
このことによって、子どもの頃に理系領域(STEM=科学、技術、工学、数学の英語の頭文字)の
基礎能力を養うことができずに、結果的に成人してからの就業・給与に差が生まれているとのこと。

まっ、日本では理系領域のエンジニアなどはあまり社会的にも給与的にも待遇は良くないので
必ずしも子供の玩具による差が将来の給与に関係しているとは言えないと思いますが、
少なくともエンジニア等が社会的地位も高く高給である欧米ではその影響はあるのでしょうね。

ところが、数学&科学リテラシーに関する15歳の男女差では日本は圧倒的に男子優勢なのに対し
欧米やアジア諸国でも大差ないかむしろ女子の方が優勢だというから不思議なわけです。
まぁ中学生くらいまでは全般的に女子の方が勉強熱心で成績いいんだからでしょうけど
日本では「周囲から『女性らしい』と見られるよう『理数科嫌い』を装うことが予想される
のだそうです。まぁボクは逆の立場でそういうものなのかなぁという感じですけどね。
だって、『男らしい』と見られるように『理数科好き』を装うことはなかったので……(笑)

その結果、(以下引用)日本のSTEM系高等教育卒業者に占める女性の割合は一五・四%
で、OECD諸国で最下位である(世界銀行の調査でも、工学系女子学生の比率は日
本が最下位だ)。                          (引用終わり)
ということになってしまっているわけですし、「ピンクカラーの罠」にはまっているのだと。

そのピンクカラーとはホワイトカラー/ブルーカラーにちなんで女性の仕事と見なされがちな
サービス系、ケアワークス系、美容系、アシスタント系などの職種全般を指す造語です。
確かに日本では「ピンクカラーの罠」とも言えるべき有形無形の社会的制約が多いでしょうし
ピンクカラーは低賃金という構図も作られてしまってますから問題は深刻ですね。
もっとも未だに女性は家庭に入って専業主婦なんて言う人も男女問わずいますけどねぇ。

それに、一億総活躍社会は安倍元首相が唱えたものですがおそらく菅新首相も踏襲するんでしょうが
それならばなおのことただピンクカラーの仕事を外国人労働者に置き換えるように頼るだけでなく
抜本的に社会的な意識改革・制度改革を促すような施策が必要ではないんでしょうかね。
もうなんにも活躍してないボクがいう資格はありませんけど(汗)

 

ところで、そもそも男児と女児の玩具や色の好みは社会的に作られたものなのか生まれつきなのか?

(以下引用)被験者は、オス一一匹とメス二三匹のアカゲデルである。オスは圧倒的に
車輪のおもちゃで長く遊び、メスは車輪のおもちゃよりもぬいぐるみで遊ぶ時間がや 
や長かった。これは人間の子供とほぼ同じ傾向である。    
(長い中略)          男性の網膜に広く分布する“M細胞”は、おもに
位置・方向・速度に関する情報を集め、色には反応しない。(中略)一方、女性の網膜には、
色や質感に関する情報を集める“P細胞”が広く分布している。     (引用終わり)

ということのようですから、ある程度は生まれつきの部分はあるのかもしれません。
それでも、LGBTウンヌンの議論を持ち出すまでもなく
男児はこちら/女児はこちらと決めつけるのは可能性を狭めて才能を制限しちゃいますし
その後も男性だから/女性だからと社会的に決めつけるのは生きるのに息苦しさを感じます。

 

そうそう、これは裏を返せば「男らしく」を強要させられる男性の方の問題にもなるのです。
それについてもこの本でも触れられていますが詳細は割愛しましょう。
最後にちょっとクスっと笑ってしまったことを紹介しておきましょう。      

(以下引用)      私が「長女がパンツ一丁で『ありのままで』を歌っている。
ありのまますぎる」という内容のぼやきツイートをしたところ、すぐさま男の子のお
母さんからこんなリプライがかえってきた。「女の子はいいですね。パンツはいてく
れるから」。                           (引用終わり) (^^ゞ

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