文庫「日航123便 墜落の新事実」を読了
この事故(事件?)はまだボクが社会人になって群馬県在住になる前年の大学生のころのことで
ニュース報道で観ていただけであまり身近には感じていませんでした。
その後も陰謀説みたいなものがあることは耳にしたことがありましたが
そのことについてあまり真剣に情報を得ることなく今に至っていました。
著者は元客室乗務員、当時の呼び方をすればスチュワーデスさんですし
ジャーナリズムや飛行機やらのメカニズムや工学などにはさほど詳しくはないでしょうし
事故機に搭乗していたわけでもないのにどうしてこんな本を出しているのかなと思いましたが
その辺の事情も含めて、これまた森永卓郎氏の文庫解説には以下のように書かれています。
(以下引用)
著者は、事故当時、日本航空の客室乗務員を務めていた。亡くなった同僚たちを思
って、事故原因を調査し始めたのだが、彼女はその後東京大学で博士号を取得してい
る。そのことが本書が性格づけた。私も博士論文の審査の経験があるので分かるのだ
が、博士論文は、卒業論文とは比べ物にならないほど厳密な検証が要求される。憶測
は絶対に許されない。その博士論文と同じように、本書は具体的な証拠と原則実名の
証言に基づいて、事故原因に迫っているのだ。 (引用終わり)
確かに緻密で理路整然とかつ丁寧に裏取りされた証拠・証言が多角的に検証されていて
これは単なる陰謀論ではなく事実であると納得せざるを得なくなります。
そこには憶測だけのストーリー展開はありません。
そして、そんな著者の後を受けて、これまた森本卓郎氏は文庫解説で憶測を展開しています。
(以下引用)
著者は本書のなかで憶測を徹底的に排除しているので、ここからは完全な私の憶測
だ。 (中略) 自衛隊に対する国民の理解が、いまとは
全く異なり、自衛隊に対する批判が根強かったのだ。
そうした世論のなかで、国産ミサイル開発をしていた自衛隊が、ミスとは言え、五
二〇人もの命を奪った事故の原因を作ったとすれば、それは自衛隊への批判が強まる
どころか、国の存亡にかかわる事件になってしまう。そこで、中曽根政権は、ボーイ
ング社に泥をかぶってもらうことにしたのではないだろうか。
もしこの仮説が正しいとすると、ボーイング社はとてつもない負担を受け入れたこ
とになる。(中略) 事故の翌月、先進五か国の大蔵大臣、中央銀行総裁が、ニュ
ーヨークのプラザホテルに集まり、「プラザ合意」という取り決めをした。(中略)
つまり、日航123便の事故は、日本の経済社会を変えてしまうほどの大事件だっ
た可能性がある。だから、戦後最大の疑獄である日航123便の墜落事件の真相を明
らかにすることは、今後の国のあり方を考える上で、最重要事項となっているのだ。
(引用終わり)
どうして経済アナリストの森永卓郎が解説しているのかと思ったら
プラザ合意→円高→バブル崩壊→失われた30年に繋がっているという森永氏の見立てなんですね。
であるなら、日本は、日本国民はボーイング社が受け入れた負担の何万倍、何億倍というつけを
未だにアメリカに支払い続けているということになりますね。
しかし、そのような経済的な大損失はあくまでも憶測なのでさておくとしても
事実関係として自衛隊か何かのミスが事故の原因となったところまでは致し方ないとしても
墜落直後の乗員の人命救助そっちのけで墜落現場の誤報を流して墜落原因の隠蔽工作をして
最後は乗員もろとも骨の中心まで炭化するほど燃やし尽くされたというのは
あまりにも恐ろしいことです。
本当は乗員乗客は全員口封じも含めて見殺しにされることになっていたのに生存者がいたのは
次のような偶然によって見過ごされたためのようです。
(以下引用)
機首から尾根に激突した機体は、下に向かってひっくり返って四つに分断され、生
存者がいた最後尾Eコンパートメントだけが、客室の背中側から後ろ向きに山の斜面
を滑落していった。ここは昭和二十八年頃に山火事があって新たに植林された木々だ
ったため、ちょうど他よりも木の幹が細く、ヘアブラシをなぞるようなかたちで約二
百メートル、四十度くらいの急勾配を後ろ向きジェットコースターのように滑り落ち
ていったのだろうということだった。そのおかげで衝撃が緩和されて損傷の少ない遺
体が多く、助かった人はスゲノ沢と呼ばれる神流川の上流で発見されている。そこは
山頂からは木々に囲まれてまったく見えない所であり、火災は発生していなかった。
神流川沿いに歩き、スゲノ沢から入ってきた地元の消防団員によって真っ先に発見さ
れたのであった。 (引用終わり)
当時のニュース報道などでは飛行機は後席ほど安全とかの話が出ていたりした覚えがありますが
それはそれで確率的には事実なのかもしれませんが、
そういうことよりたまたま偶然が重なって隠蔽工作から漏れてしまって
かつ善意の消防団員によって発見されてしまったということだったのですね。
いやはや、日本も恐ろしい国ですなぁ。過去形でもないでしょうしね。
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