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新書「13億人のトイレ」を読了

B201007_11 
角川新書の「13億人のトイレ 下から見た経済大国インド」佐藤大介著を読みました。
タイトルからも分かるようにインドのトイレ事情について書いてある本です。
世界中の便器などのデザインとかには昔から興味がありますから
面白そうだなと思って買ってみたのですが、
そういう面白さとは全然次元が違う内容となっていました。

著者は共同通信社の記者としてインドに赴任していた人ですが
ITとカレー以外でインドを日本にどう伝えるか悩んで「トイレ」に着目したとのことで
その意図を「おわりに」にて次のように書いています。           (以下引用)

 日本では、ほとんど誰もが清潔なトイレにアクセスすることができ、トイレのある暮ら
しが日常に組み込まれている。しかし、インドではそうではない。「トイレ」というキー
ワードで、貧富の差やカースト、都市と農村の格差といった、インドのさまざまな姿が見
えてくるのではないか。                          (引用終わり)

サブタイトルにある「下から見た」というのは排せつである“下”と下級層の意を重ねているのでしょう。
そして、上記の「インドではそうでない」というのは便器の形でもトイレの形態でもなく
トイレそのものが日常的に家の敷地に存在しないというのですからびっくりです。

戦後直後の日本は別としても、ボクが生まれた頃には各家庭にトイレがあるのが当然で
ボクが子どもの頃は田舎なので家でも学校でも和式でボットン(落下式で汲み取り式)でしたけど
そのうち水洗式になり洋式になり今やシャワートイレがなかば常識的になりました。
チャイナではひと昔前は田舎の方に行くと大きい方でも個室でなくて皆が縦に並んで
つまり前の人のケツを見ながら、あるいは後ろの人の視線を感じながら用を足すとか
用を足した後はロープが張ってあってそれを跨いでケツを拭く(誰が拭いた後かも分からない)とか
いろいろと仰天な話は聞いたことがありましたが、
インドではトイレがなくて野糞が当たり前に行われているというのですから仰天です。

もちろん、インド政府としても「スワッチ・バーラト」というトイレを作り野糞を禁止する政策を
2014年から5ヶ年計画で進めてきたようですが、
その2014年にモディ首相が宣言した内容が以下のようなものだとのことです。(以下引用)

 「私たちの村では、六〇%以上の人々が屋外で用を足している。母親や姉妹でさえも、
 それを強いられている。この苦しみをなくす必要がある」
 「今日でも、女子専用のトイレがない学校がたくさんある。それを変えていく必要が
 ある」
 「汚物を取り除く仕事は、サファイ・カルムチャリ(筆者注:道路や下水道の清掃作業
 にあたる人たちのこと)だけに任せていいのだろうか。それは国民全ての義務ではな
 いだろうか」                                (引用終わり)

で、5年後の2019年にトイレが十分に作られて野糞がなくなったのかというと……
政府発表では数値的には計画通りトイレが作られて野糞はなくなったのだそうです。

が、実態はすべての家にトイレが設置されたわけではなく
特に農村部の貧困世帯ではいくらトイレ設置に補助金がでるとしても経済的にそんな余裕がなかったり
ヒンズー教のトイレは不浄のものなので家(の敷地内)にあるべきでないという考えがあったりして
ごく一部の家にトイレが設置されただけであったりするのが現実のようです。

また、トイレがあっても男性たちは依然としてトイレを使わずに野糞をしていたりなのだそうです。
それは、トイレの管理(汲み取りや清掃)にお金がかかるからという理由だったりするわけです。

 

それにもまして、トイレがない家の女性のとんでもない実態が凄すぎます。
例えば、家から1kmほど離れた茂みまで明るくなる前に数人で用を足しに行くのだとか。
茂みとは言え丸見えなので暗い時にしか行けず結局1日1回しかいかないそうです。
女性ですから大だけでなく小も含めて1日1回ですよ、人間の身体ってそれに耐え得るのか?
でもその女性たちは慣れてしまったと言っているのですから驚愕です。

しかも、そこまでしても用を足しに行ってレイプされる事件が日常茶飯事というからもう絶句ですよ。
レイプだけでなく暴行殺人にまで至ってしまうのでまさにトイレに行くのが命がけなわけです
田舎の野原でレイプされるんですから通り魔とかではなく集落の知人などに犯されるということです。
日本の感覚だとにわかに信じられない話ですが毎日90件以上のレイプ犯罪が起きているらしいので
いくら人口13億人の国であるとはいえ異常な数値ですよね。

 

それに都市部ではトイレが設置されていたとしても下水設備が整っていなくて
大都市部でも7割が全体としては9割が河川にそのまま垂れ流しになっているとのことです。
工場からの廃液なども含めて河川の汚染は酷く
でもそこを聖なる川とかいって沐浴してたりするそうです。恐ろしいです。

他にも上水道の設備も整ってないし、
一方で水道管を掘り起して穴を開けて勝手に水を持って行く盗水が(盗電も)横行していて
もう公衆衛生も道徳も無茶苦茶の世界のようですね。

また、公衆トイレがあっても有料(1回4円)なので多くても1日2回しか行けないという話も
日本の感覚からすると理解に苦しむわけですが、4人家族で月の収入が1万円強しかないなら
確かにトイレにそんなお金は払えないし、だから男性はそのへんでしちゃうわけですわな。

 

ともかく驚くことばかりの内容なのですが、最も絶句してしまったのは以下の話です。
これ自体は2003年頃のことのようですが。                (以下引用)

 母もマニュアル・スカベンジャーだったというチャウマルは、七歳から母と同じ仕事に
就いてきた。一〇歳で結婚をさせられたが、相手もやはりトイレの清掃人だったという。
                                      (引用終わり)
チャウマルは女性で10歳で結婚させられたというのも驚きますが、そこではないです。
マニュアル・スカベンジャーとは何かというと次のような仕事のことです。  (以下引用)

 この三つのうちで、最も強烈なインパクトを与えるのが、乾式トイレの清掃労働者だろ
う。この作業に従事する労働者は女性がほとんどで、乾式トイレを設置している家を回り、
たまった排せつ物をかき集め、ゴミ捨て場に運んでいくのが仕事だ。 
(中略) 排せつ物はトイレの下にそのまま放置されており、女性は素手やほうきを使っ
てそれらをかき集め、かごに移していく。     (中略)      回収を終える
とかごを頭の上に載せ、通りを歩いてゴミ捨て場に向かう。こうした作業を、一日で二〇
~三〇軒のトイレで行っているという。
 女性がもらえる賃金は、一軒につき月で五〇ルピー(八〇円)にも満たないという。
(中略)      こうした仕事はダリットたちが担うべきものとされ、強制的に「世
襲」として引き継がれてきたからだ。                     (引用終わり)

最後にでてくる「ダリット」というのはカースト制度の最下層というかカースト制度の外にあるような
「不可触民」、つまりそれ以外のカーストの人はその人に触れてはいけないという不浄の人の意味です。
トイレも排せつ物も不浄なものなので不浄の民であるダリットのみが清掃するという理屈だそうです。

こういった社会の仕組みや考え方は徐々に是正されているとはいえ
依然としてインドの社会には色濃く残っていて
人口の約16%がダリットとして区分されトイレ清掃などの仕事を強いられているのだそうです。
もう人間の尊厳もなにもあったものではないですね。

 

こんなですからこの新型コロナ騒動下では感染対策も感染予防もほとんどあってないようなものです。
もっとも社会全体の上下水道があまりに脆弱なのでトイレ清掃員や下水施設管理員だけでなく
カーストの上の方の人でも感染対策は十分にできてないでしょうけど。
しかも毎日カレーを右手で手づかみで食べるわけですし(汗) 

最後にトイレとは直接関係ありませんが、その新型コロナつながりでこんなことも書かれてました。
                                         (以下引用)
 ヒンズー教で牛は神聖視されており、牛肉を食べることがタブー視されているのはもち
ろん、牛の糞や尿は「不浄なもの」と見なされず、逆に穢れを落とす物として重宝される。
そうした考えは今でも根強く残っており、新型コロナウイルスの感染が拡大した際は、
ヒンズー至上主義団体のメンバーがウイルス対策に有効だとして、牛の尿を飲むパーティ
ーを開催したほどだ。                              (引用終わり)

いやはやもうついていけませんな。

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