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インプレッサ・ハイブリッドより超手抜き開発車があった

ここでのスバル・カテゴリーの記事は昔を懐かしむシリーズに特化してるわけではないですが
AWD-CoEの記事から急に比較的最近の先代インプレッサ・ハイブリッドの話に飛んじゃったので
後者からの流れでほぼ同時期の超々短期開発のエクシーガ・クロスオーバー7の話もしておきましょう。

エクシーガ・クロスオーバー7は7人乗りのエクシーガをなんちゃってSUV風にしたてた車で
2015年4月に発売となってますので、先代インプレッサ・ハイブリッドの少し前の発売です。
ですからメディア向けの試乗会などは両車抱き合わせでこじんまりとやった記憶があります。

クロスオーバー7の提案が出たのは前々年秋の東京モーターショーの前くらいですが
その時はデザインスタディレベルで本格的にGOはかかってませんで、
その後ずいぶん経ってから開発がスタートしています。
それでも、外装大物パーツを新規でおこしていますから企画~開発完了までの期間はそれなりでしたが
にも関わらず実験部門が開発へ関与していた期間(工数)は非常に少なくほとんどゼロでした。
実際に実験部門で管理する試験車もなく、ただ外装検討用で企画部門の車両があるだけでしたし
実験部門の工数はゼロということで予算が組まれていたというホントに異常な車でした。

もちろん、この車も新たに排ガス・燃費等の認証を受けていません。
あくまでもベースのエクシーガの小改造という範囲となっていますから。

 

この車の企画の発想はいとも単細胞的で、エクシーガをフルモデルチェンジするお金はスバルにはないが
エクシーガは発売後7年となり新鮮味がなくなっている、今人気のSUV風にしたら少しは売れるんではと。
ただ、それでもそれほどは売れないだろうからお金は掛けられないと。
しかも、ベースのエクシーガとの併売は製造現場での部品種類増などで不可能だから
ベースのエクシーガは廃止と。

しかし、ボクとしては、いや実験部門としてはそんな企画にはまったく納得できないわけです。
ひとつは、スバル・ブランドとしてそういう安易ななんちゃってSUVなんてやるべきではないと。
それまでスバルはSUVと名乗るのならAWDで最低地上高は200mm以上ないと十分な走破性がなく
SUVとしては満足な性能を確保できないと公言していたのにこれはブランド毀損になると。
やるなら嵩上げして大径タイヤを履いて当然新たに認証を取ってちゃんと開発すべきとね。

こういうことを実験部門からいうのは普通の製造業ではおかしなことに聞こえるかもしれませんが
目標性能を立てて責任持ってそれを達成するというのがスバルの実験部門ですから
衝突安全性も先進安全性も走行安全性もそれ以外の基本性能も実験部門が
スバルブランドとして成立しているかどうかを意見具申するのは当然のことなのです。

もうひとつは、エクシーガとしての最期をこんな醜態で終わらせてほしくないという
まぁこれはエクシーガの開発初期から携わったボク個人の感情論に近いものなんですけどね。
でも、エクシーガと併売ならクロスオーバー7が醜態でもそこは構わないし
逆になんちゃってではないちゃんとしたSUVに仕立て直すのなら
そこでエクシーガそのものは潔く終わりになるのでそれもまた良いかなと思えるんですけどね。

結局、こんななんちゃってカッコだけSUVに実験部門としては
目標性能を提案して開発することはできないしその工数も捻出できないということで
実際に工数ゼロ、試験車無し、開発確認イベント無しが承認されることになってのです。
開発確認イベントとは社内で幾つかの節目を設けて性能・品質・出図状況などの報告をして
トップ等が次の開発段階に進んで良いかどうかを判断する会議等のことです。

経営トップへの説明も、詭弁ですけどこれは特別仕様車扱いで開発ではないという説明でしたから
実験部門は工数ゼロ、試験車無し、開発確認イベント無しというのも整合しているのですが……

 

ただ、工数ゼロとは言ってもそれなりに検討には手がかかりました。
特に外装が変わっても走行抵抗が変わらないことの確認は新たに認証を受けない前提では欠かせません。
また、車高が変わってもアイサイトの機能への影響がないことの検討はいろいろ揉めました(笑)
アイサイトはこの辺の包容力が全然ないですからね(汗)
まぁ安全問題ですからシビアにならざるを得ないのは確かですし。

そして、車高上げで操縦安定性も変わるんですけどここも工数ゼロですから
最低限の走行安全性だけ確認するけどチューニングはしないという事前の取り決めだったのに、
途中でPGM(プロジェクト・ゼネラル・マネージャー=車種開発リーダー)が替わったこともあり
その取り決めを反故にされ少しだけダンパー・チューニングをするはめになったりしましたね。
もっともボクがやったわけじゃなく専門部署にやってもらっただけですが。

 

さてさて、そんなエクシーガ・クロスオーバー7ですが少しばかりの実験の工数はあったものの
基本的にはほとんど性能確認・品質確認することもなく開発確認イベントもなく発売されました。
で、不具合出してしまいましたorz やはり手抜きをすると痛いしっぺ返しを食らいますね。
もっとも手抜きしなくても大なり小なり不具合の発生はゼロには出来ないんですけど。。。

その不具合とは、もう社内の人間でなくなったボクでもあまりに具体的に書くのは憚られますが
まぁクロスオーバー7専用の外装部品を間違った使用すると壊れて大変なことになる場合があるんですが
間違った使用といっても人間工学的についやりがちな事なのでメーカーにも責任はあることなんですよね。
おそらく実験部門がしっかり確認していれば開発段階で発覚して対策できていたはずなので
その意味では悔いが残りますね。

ただ、発売の直前に自動車評論家へのお披露目(静的展示のみ)があって
そこでも同じ問題が発覚していたらしいんですよね。
ボクはその場にいたけど別の車種メインで仕事をしていたので知らなかったのですが
その時に発売を遅らせてでも適切な対応ができていたら不具合が世に出ることもなかったのですが……

というわけで、最期に本当にブランド毀損になりかねなかったクロスオーバー7の話でした(-_-メ)

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