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D1での成果は「官能評価者の資格認定基準」だけかも

この記事で、1999年春に突如第2操安乗担当(D2)から
第1操安乗担当(D1)に異動したことを書きましたが、
実は翌2000年初頭にはまた突如そのD1担当もおさらばとなって
全く違うというか新設の不思議な部署へと異動となってしまったのです。
それについてはまた後ほど記事にしたいと思います。

要するにD1担当でレガシィ系の操安乗り心地開発に従事したのは丸1年にも満たず
ほとんど消化不良のまま、また次の部署に異動となったというわけです。
その1年弱で何をやったのかなぁと思い返してみると、
確かに現行(3代目)レガシィの不具合対策や年改・水平対向6気筒車の開発や、
それで先日の記事のように北米走行試験へ行ってきたり、
次期(4代目)レガシィの重心、ヨー慣性モーメントなどの諸元目標設定などやりましたが
やはりどれも何かこうやり切った感もないし思い入れもあまりありませんでした。

そんな中で今思い返して自分として一番のというか唯一の成果だったかも知れないなと思うのは
「官能評価者の資格認定基準」というBR(ビジネス・ルール)を新規で作成・発行したことです。
BRは仕事の手順の規定ことですけど、ビジネス・マナーとは全く違いますのであしからず。
そして、「官能評価者の資格認定基準」とは官能評価(フィーリング評価)をする人の資格を定めて
その資格であればどこまでの官能評価をすることが出来るのかを整理して
さらにその資格を有するかどうかはどのような基準で認められるかを明確にした規定です。

 

操縦安定性などの基本的な特性は各種の計測器によって計測することは出来ますが
それでもすべての性能を計測した数値で表すことは難しいですし
やはりお客さんが運転して感じるものであるだけに
(将来的に完全自動運転になれば別ですが、それでも乗り心地の官能評価は残るでしょう)
官能評価で優劣や〇×を評価・判定する必要性があります。

ところが、当然ながらそのような官能評価をするには誰でもできるわけではなく
能力・訓練・経験などが必要です。
ところが、当時のスバルの実験部署では入社間もない人でも任されればどんな官能評価でもするし
かといってその結果を設計などの関係者が信じるかどうかはその時次第のところがあったりして、
一方で今までそのような能力・訓練・経験を要しなかったちょい偉い人が異動してきても
例えば課長なら課長としての発言力が大きくなったりするわけです。
あるいは、本来は全然能力は別のものであるはずなのにモータースポーツで速かったりすると
何故か周りの人はその人の官能評価の結果を信じ込んだりしてしまったりしてました。

そりゃぁおかしいだろうと常々感じていたし、
官能評価の重要性を設計や企画部門に訴求するためにもきちんと規定すべきと考えたわけです。

なお、官能評価でなくなんでもかんでも数値計測して数値で判断しろという考えの人がいましたが
ボクはその数値がCAE(シミュレーション数値解析)やデータベースに繋がるならやるべきですが
そうでないならわざわざ数値計測で証明する必要はないという考えをもっていました。
官能評価で判断できることを多大な工数かけて数値計測する必要はないですし
どんなに数値計測技術が進んでも人間の感性でしか感じ取れないものはあるし
そこを大事にするのがスバル流の開発手法だと考えていましたからね。

 

そんなわけで、それまではこのような規定は操安乗り心地の部署以外でもありませんでしたし
そういう規定が必要じゃないかという議論もなかったわけで、
おそらくボクが初めてそういうことを考えて自分で勝手にゼロから規定を作りだしたわけです。

で、その中身は、実は非常に簡単なものであって、
例えば、官能評価範囲としては、安全性などに直結する重要課題であるかそれ以外であるかを分け、
さらにそれを絶対評価(つまり判断)できるか相対評価(A,Bどちらが良いか)までなのか分け、
それ以外は単なる3人以上のアンケート評価などに参加できるかどうかとして設定してます。

走行試験範囲としては主に運転技術のことになるのでテストコースライセンスとリンクしてます。
そして、そのようなライセンスと操安乗業務の経験年数、職能資格によって
官能評価者の資格が決まるような基準わ設けています。
その資格は0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲで分類され0は新入社員レベルで
Ⅲだと主事(係長になれる職能資格)でかつ経験年数5年以上とかとしています。
さらに、特殊走行が可能のライセンスの人はⅢs、Ⅱsなどとなります。

このBRをボクが作った時はボクは主事になっていて操安乗業務も10年近くで
テストコースライセンスは制限がなく特殊走行ができる“特殊”でしたから
ボクの官能評価者としての資格はⅢsということになり、
独りで特殊走行して重要課題の絶対評価が出来るということになります。
まぁ、ある意味ではこのBRによって自分の発言権を強くしたかったんですね(汗)

もちろん自分だけでなく実験部員の官能評価結果に箔をつけたかったわけです。
単なる感情的な権威づけではなく、ISO9001の中に組み入れることで
官能評価でもきちんと資格を有してる人が例えば安全性上NGであると評価・判断したら
もうそれは計測結果でNGと同様にスルーすることは許されなくなるということです。

つまり、この記事にしたようなうやむやのうちに周りや上司が×を〇にすることができなくなるのです。
そうです、一番の狙いはそこにあったのです。それだけあの件はボクにとっては苦汁だったのです。

 

と、なんだか個人的怨みでこのBRを作成したみたいになってしまいましたが
実際にはその後もずーと長いことこのBRは廃棄されずに使われてるみたいですから
まぁそれなりに意義のあるBRではあったのではないかと密かに自負しているものなわけです。
実際にはどうなのか有名無実化してないか今もあるかどうか、まぁ分かりませんけどね(笑)

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コメント

今もこのBRはあります.
JETさん作成の初版は2002/11/25発行ですね.
今は⊿3です.
もちろん,今でも官能評価の報告書には資格レベルを記入しています.

投稿: shiba | 2020-09-25 16:49

>shibaさん

それを聞くとちょっと嬉しくなりますね。
初版は確か1999.8.3のはずで2002.11.25に自らΔ1の改定をしています。
手元の下書き用のを元に書いてますのでたぶんですけど。

投稿: JET | 2020-09-25 17:25

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