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79V系開発と並行して44Sにも齧(かじ)った

前回記事で初代フォレスター(79V~72Fの途中まで)の操安乗り心地開発と並行して
(次期)サンバー、ドミンゴとともに次期インプレッサ(2代目、開発符号44S)の
操安乗り心地開発にも携わったと書きましたが、
その44Sについては項目だけの紹介でしたので今日は少しその話を書きます。

ちなみに、次期サンバー(33E,6代目サンバー)と44Sの開発スタートは少しずれてたので
完全に79V,33E,44Sと3車種掛け持ちでテンテコ舞でやっていたわけでもありません。
もっともどんなに業務が立て込んでもテンパると全てが出来なくなってしまうので
出来る事だけをやるというのがボクの考えでしたから、テンテコ舞な気分にはならなかったですが。

でも、そんなだから周りからは余裕があるように見えて、いろいろと兼任させられちゃったのかもね。
それに、当時は実験屋は試験車が出来てからが勝負だ、みたいな雰囲気があって
目標性能立案や机上検討・シミュレーションみたいなものはほとんどしないか片手間にやる程度で
だからその時期は幾つも兼任させて仕事量はたいしたことないだろうと考えたのかもしれないです。
それでも、周りを見てボクみたいな兼任をさせられてた人はほぼいませんでしたが……

それに、当時からボクは試験車が出来る前の検討こそ最も重要であると考えてましたし
もっと言えばその前段階の先行開発の充実こそ最も重要であるのに
当時のスバルはそこをまるっきり疎かにしていて大問題だと認識していたんですけどね。


実際には初期検討から台車(初代インプレッサをベースに改造した試作車)の途中までしか
ボクは携わっていませんので、あまり多くを語ることは出来ないのですけどね。
このころは、その台車の次に新型の形をした1次試作車があって、
その次にも新型の形をした3次試作車(2次がない)があって開発完了という
割と長い期間かけて開発していたのでその後の状況はあまり知らないですしね。

ただし、基本的には初代インプレッサからのキャリーオーバーでしたから
まるっきりの新車開発というほどでもなかったかと思います。
まぁそれを言ってしまうと、初代インプレッサがほとんど初代レガシィからのキャリーオーバーで
レガシィのリアフロアを短くして縮めただけですし、
嵩上げするしないは別にすればフォレスターも初代インプレッサのキャリーオーバーですけどね。

まぁスバルという会社は本当にお金を掛けないというか大きな投資しないで
伸ばしたり縮めたり幅広げたりして車種を増やしているんですよね。
ただ、共通プラットフォームという概念がつい最近まで無かったので
レガシィ作ってから思いつきでインプレッサ作って、さらに思いつきでフォレスター作るって
その都度キャリーオーバーしながら、でもちょこちょこ弄ってやりくりしていたんです。

なので、この44Sでも厳しくなった衝突安全基準に対応するために
衝突用サブフレームをフロントに追加して似て非なるボディになってしまってます。
本来ならより合理的に衝突安全性を確保できる共通プラットフォームを開発して
次期レガシィや次期フォレスターにも使えるものとすべきなんですけど
そういう発想がなく、44Sは44Sだけのつぎはぎボディにしてしまったわけです。

つぎはぎボディなので当然重くなってしまいます。
乗り心地にはプラス要因にもなり得ますが操安性ではマイナス要因の方が大きいです。
そんな要因なども考慮に入れつつ目標性能を立案しました。

なお、商品企画部の狙いは「高密度スポーツマインドカー」と言われていました。
モータースポーツマシンでもなく、スポーツカーでもなく、スポーツマインドカーなのですが
にも関わらず、ランエボに負けない速さとか競技車両ベースとしての戦闘力確保なども
ちゃっかり要求しているという本音と建て前がはっきりある言葉になってましたね(笑)

 

ちなみに、44Sの初期型はヘッドライトが丸目でデザイン的には不評だったように言われてます。
ネット上でもSOA(北米販売会社)からの要求で丸目になったとか
ポルシェみたいにしたかったけどエンジンルームの制約でできなかったとか回想話が出ていますが、
ボクがまだデザイン検討中の段階のクレイモデルを見た第一印象では
NAの普通のグレードとしては「プレーンで愛らしくていいじゃん」って感じましたね。

インプレッサというとWRX中心に考えてしまう人がどうしても多くなってしまうんですが
スバルの本分はスボーツカーでもプレミアムカーでもないので基本は普通のグレードであり
その普通のグレードがあってこその派生車的なWRX等のヤンチャなグレードであるべきなので
このようなデザインテイストは間違ってはいないと考えていました。

それに、SOAからの丸目要求もポルシェのような高級スポーツカーのイメージというよりも
むしろクライスラー・ネオン(初代)のような親しみやすいイメージであったと思っています。
北米でもWRXの熱狂的なファンは既に存在していましたが
それでもSOAの販売の主力は普通のグレードでありましたからね。

そんなスタイリングイメージからもボクは普通のNAグレードを中心に目標性能を検討し
ともするとWRXに引きずられてしまうことを極力避けるように目標性能を設定しました。
正直なところ、WRX-STiとかはおまけという感覚です。
悪い意味ではなく、おまけだからやりたい放題できるという意味もあります。

 

そこで、ボクが44S共通の走りの狙いとして掲げたのは以下のことです。
 ・スバルとしてのアクティブセーフティ,安全・安心感のある走りが大前提.
 ・その上で全グレードを通じてSPORT心溢れる走り味を狙う.
 ・ただし,チャラチャラした感じでなく質感の高い本物志向の乗り味を目指す.

けれども、実際にはグレードやエンジン仕様によって性格はまるっきり違うことになるので
そこでグループ分けしてSPORTの解釈をそれぞれに変えて整理しています。
 Ⅰ)Sport=Recreation … 皆で気軽に安心して使える.                  <一般セダン,ワゴン>
 Ⅱ)Sport=Pleasure … 普段のドライブで安心して愉しめる.         <米RS,国内SRX>
 Ⅲ)Sport=Athletic … 軽い運動の爽快感・昂揚感.健康的.           <WRX>
 Ⅳ)Sport=Sporty … 上質で粋なバランス感覚に優れた大人の味   <国内WRX STi>
 Ⅴ)Sport=Competitive … とにかく速さ命。勝利のV       <国内WRX STi-RA>

うーん、我ながらキレの無い文だなぁと情けなくなってしまいます。
正直なところ、スバルはモータースポーツのために量産車を作るようなメーカーではないし
量産車であるのに他メーカーと速さ争いをすることに冷ややかでしたから
それなのに厭々でもそういうグレードも設定しなければならないという葛藤が
そのまま目標性能の狙いの文言に現れてしまっている感じですね。
つまり、ボク自身も本音と建て前を使わざるを得ないという敗北感が滲み出てますなぁ(笑)

まぁそれでも「走り」とか「スポーツ」という言葉は
色んな立場の人が都合の良いように解釈して乱用することを見越して、
というか実際に当時のスバルではかなり偏った方向にその言葉を使うようになってたので
それをより中立的に冷静になって整理しましょうという意図は素直に組み入れています。

けれども、その報告書の最後のページには(忙しい偉い人は読まないだろうがそれも見越して)
以下のようなことを綴っていました。 (自分が昔書いた文章なので引用というのも変ですが)

 果たしてスバルが、インプレッサが44Sの時代となっても相変わらずWRCのトップに座り続けれ
る保証はないし,レギュレーション面でもトレンド面でもラリーの形態がいつまで現在のまま続くかも
保証はされていない.また,社会情勢としても4WD+ターボ+ハイパワーと言う車がこの先存続出来
るのか,少なくとも正義をもって社会に受け入れられるのかと言うと甚だ疑わしいと思われる.特に,
現在の日本の様にWRXがこれだけの販売比率を占める状況の中で,それらを駆る若者の重大事故
発生,
保険料の高騰などはいつ社会問題となるやも知れぬ状態とも言える.
 そうなった時,つまり44S=モータースポーツ及びそこから連想される特別なイメージが消え失せ
た時,それしかなかったとしたら44Sは全く魅力のない車になってしまう可能性がある.それでは当
然困る.モータースポーツが無くても,「普通の大衆乗用車とは違う何か」をきちんと表現できるクル
マであらねばならない.        
                 (中略)
 私は,現行インプレッサがモータースポーツイメージ以外に魅力が無いと言っているわけではない.
むしろ,WRCでの成功ばかりに目を奪われがちだが,現行インプレッサにはモータースポーツイメー
ジ以外の魅力はたくさんある.少なくとも,ランサーエボルリューションよは遙かに味があると思う.
この味は発売後も着々と改良を重ねてシンプルながらも人の感性に語り掛けるような,いわゆるシロモ
ノ家電的なものでもハイテクおもちゃ的なものとは違う味なんだと思う.
 44Sでもここを忘れてしまって,「WRXはモータースポーツのスポーツだ!」,「C’zはとにか
く安く!」では脆弱な体質となってしまうと危惧するのである.スポーツ競技に勝つためだけにドーピ
ングして,心も体もボロボロになってしまっては哀しい.               (以下略)

いやー恥ずかしいくらいに小生意気なこと書いてますね。
幸いにも44S=2代目インプレッサの時代でWRC参戦が終わることはなかったですけど
環境問題や市場意識の変化からは危惧していた通りに取り残されたてしまったのが
2代目インプレッサであり、同時に当時のスバルそのものであったように思います。

ちなみに、補足しておきますが、最後の「心も体もボロボロ」の部分は
水平対向エンジン不等長エキゾーストのエンジン音と掛けて揶揄しているんですが
これを読んだ中のどれだけの人に分かってもらえたかは定かではありません(笑)
そのくらい当時はスバルはワザとでもボロボロ音を残すべきと主張する人たちがいましたから(呆)

 

そして、もちろん操安乗り心地の性能数値目標の設定もしていますが
それをここに書いてもほとんどの人はチンプンカンプンでしょうから割愛します。
さらに、この目標性能達成のためにいろいろなジオメトリー変更や剛性確保などの
設計仕様への具体的提案もしています。
そこには79V開発で得たノウハウなども存分に応用させていただきました。
これも話が細かくなるし、最後まで携わらなかったので言及するのは止めておきます。

ただ、この44Sの途中までの開発でも一番揉めたのがタイヤ開発です。
というか揉めたのは某国産大手のブリヂストンタイヤです。
79Vのタイヤ開発でひと悶着あった以上のごたごたが発生してしまいました。
これについてはまた長くなりますから日を改めて書きたいと思います。   (またつづく)

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コメント

至極全うですね。

しかし最後のところ。やっぱり「石橋」・・・・

投稿: TOMO | 2020-08-10 13:38

Recreationグレードに乗っていました。タイヤはすぐ変えちゃいましたが…

投稿: たみ | 2020-08-10 14:32

>TOMOさん

毎度です。
そして毎度のことで石橋さんとは相性が悪い……

投稿: JET | 2020-08-10 14:33

>たみさん

あぁそっちの方でしたか。
結構バランス良かったんでは?
そのタイヤはたぶん揉めませんでしたよ(笑)

投稿: JET | 2020-08-10 14:36

初のマイカーというのもあるんですが、疲れ知らずでどこまでの乗って行ける感じでしたね。中古も数少なくなりましたが、機会があればもう一度乗ってみたい車です(買っちゃうとインプレッサ2台持ちになってしまいますが)

投稿: たみ | 2020-08-10 16:07

>たみさん

以前のマイカーってまた所有してみたいくなるものですよね。
ボクも初のマイカーではないですが初代ジャスティやFFレックスが無性に欲しくなったりします。

投稿: JET | 2020-08-10 16:49

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