マガジンX・ざ総括での2代目フォレスターの記事
前回の72F(初代スバル・フォレスターのビッグマイナーチェンジ)の記事で
初代フォレスターの話はもう完結したはずだったのですが、
その後継の2代目フォレスター(SG型、開発符号88A、2002年~)について
マガジンXの覆面座談会企画の「ざ・総括」における記載を紹介したいと思います。
ちなみに、マガジンXは自動車メーカーの広告を一切掲載せずに
新車スクープと業界や新車の悪口ばかりを記事にするような雑誌です(笑)
今回とりあげるのは、2002年5月号No.177になります。
ボクは2代目フォレスターの開発にはまったく関わり合いがないのですが
79Vで異様に高評価だったマガジンXで2代目がどう評価されたかというよりも
先代(つまり初代)との比較として評価されているのでエゴサーチ的な感覚の記事でした。
その意味では79Vの評価と同じく少々自慢話みたいになってしまって恐縮ではありますし
2代目の開発者の方々も様々な制約の中であのような車になったわけですから
当てつけているように聞こえたとしたら申しわけありません。
もちろん、初代の弱点などもちゃんと書かれてますから称賛だけではないですし。
それでは少し長くなりますが引用します。 (以下引用)
走りはトヨタ風な味付け これが今日的な進化か
PL さて、走らせるとどうか?
プ スバルのクルマとしては、やはり走りが“売り”でないとね。
E1 とくに悪くはないんだが……。良くもないね。
T2 先代、とくに初期型はすごく運転しやすく、しかも限界でも信頼できる、フットワークの良い
クルマでした。ところが今回はトヨタ的洗練、じつはカン違い路線に迷い込んだ感じがするんですよ。
プ スバルといえども、素人の重役や販売営業がチョイ乗りして、あれこれ言うのが強くなってるん
じゃないの。するとどうしてもトヨタ的方向にゆくんだよ。
T2 まず何より、脚のストロークが突っ張ってる。ちょっと向きを変える、という動きではロールし
ないですよ。先代はそこを上手に動かして、旋回のペースが上がるにつれていい感じでロールが深く
なってゆき、足がしっかり粘ったのに。
T1 たしかに先代初期型はよくまとまっていた。その分、普通のドライバーでも簡単に元気よく走っ
てしまう。彼らがバカッとハンドルを切るとグラッとロールする。それがイヤだ、という声が相当に
来ていたんだろうと思うよ。
T2 でも、それはロール速度をダンパーでコントロールし、舵を止めて一定円旋回に入るところでロ
ールも止まるようにセッティングすればいいんですよ。 (中略)
T2 タイヤのグリップ限界付近の挙動も、先代より悪くなってます。旋回する中でアッとアクセルを
抜いたりすると、リアが粘らずズズッと滑る。それだけならまだ何とかなるけど、グリップが回復し
たところでドンッと揺り戻しが来る。そういう速い車体の動きを、ダンパーが押さえられない。小さ
な動きでは渋く、速く大きな動きになると減衰が足りない。これじゃ逆ですよ。 (中略)
スバルがどう煮詰めるか 企業としての姿勢を問う
PL では総括しよう。
プ 今買っても、同級他車との比較ではそれなりの商品ではあるよ。でも2年半ぐらい後になるだろ
うが、マイナーチェンジに期待しておく。 (中略)
T2 でもスバルらしさが薄れて、当たり前の軟派SUVワゴンになってしまった感じですよ。
E2 そう、潔さがないね(笑)。
T1 どうも最近、その「スバルらしさ」が薄くなっている感じだな。オレのような立場の人間として
は、実験部門がしっかり働き、走りをきちんと仕上げてあるという、日本のメーカーとしては稀なク
ルマづくりこそ、スバルの持ち味だと思うし、走る中でユーザーが何となくそれを感じて、他のメー
カーのクルマに乗ると「これじゃ違う」と思う。それがジワリと浸透して、今のスバルのイメージが
できたんだと思う。しかし、現行レガシィあたりから、量販を狙ってトヨタ的わかりやすさ、表面だ
けを繕うモノづくりに走る傾向が感じられる。それがこのクルマではとくに強い。 (中略)
デ しかもGM傘下に入って、アメリカ型マーケティング重視の経営を、というプレッシャーはがぜ
ん強まっているはずです。
PL したがって、経営陣や企画・開発のまとめ役が、よほど強く自分たちの行き方を守らないと、ス
バルのクルマづくりは退化する。そういう方向に流れる危険性は高いな。
プ そうなると、デザイン部門の力量がない、表面的な洗練に費やす工数やノウハウも足りない、と
いう富士重工の弱点のほうがあらわになる危険性は高いんだがなぁ。 (引用終わり)
引用した前半は走りというか操安乗り心地の話ですね。
先代(79V)をヨイショしておいて現行をけなすという構図になってますが
その先代の褒めてる箇所はボクが注力して開発した部分そのものなので
単なるヨイショではなくきちんと評価されているなと思えるわけですし
それ故に素直にとても嬉しく思います。
ただ、先代の「ロールが嫌だ」という声は確かに国内からは挙がってきましたが
欧州・豪州・北米からはまったく挙がりませんでしたね。
市場の声よりもディーラー・セールスマン含めて社内の人の方がよっぽど多かったです。
レガシィGT-BやインプレッサWRXのようなのが“走り”の良い車だという概念に
凝り固まった社内の関係者が大多数でしたから(爆)
そして、後半部分はまとめとしてスバル全体の話や経営的な話にもおよんでいますが
GMからのプレッシャーというのはちょっと違うのかなと感じています。
GMはスバルの経営や商品展開にはほとんど何も口出さなかったですから。
むしろ、スバルはGMの意に反してプレミアムブランドになると言って嘲笑されただけです(笑)
ブレミアムブランドを目指すといっておきながらお金をケチって作ったので
トヨタ的になってしまったというのがこの88Aの実態だったのではないでしょうかね。
実際に収益も厳しい中で翌年発売のレガシィ(4代目)に取り組んでいるような状況だったので
88Aにはお金も工数もほとんどかけられなかったのだと推察されます。
もっともそんな事情は79Vも一緒でしたけどね(笑)
だから、引用した前半部分に書いてあったような
重役がチョイ乗りしてウンヌンはなかったんじゃないかなと思います。
やはり次のレガシィの方しかお偉いさんたちは見てなかったんじゃないかな。
それにしても、最後のPL(プロジェクトリーダー経験者)のひと言は
その後のスバルのさらなる迷走を見事に予言していますから今読んでも驚かさせますね。
それなのに、このあとのレガシィはプレミアムを合い言葉にして
デザイン重視、表面的な洗練重視で工数かけまくって開発されていくんですよね。
もっともこの雑誌が発売された時点でほとんど開発は終盤だったので
軌道修正は無理だったでしょうけどね。
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コメント
>実験部門がしっかり働き、走りをきちんと仕上げてあるという、日本のメーカーとしては稀なクルマづくりこそ、スバルの持ち味だと思うし、走る中でユーザーが何となくそれを感じて、他のメーカーのクルマに乗ると「これじゃ違う」と思う。それがジワリと浸透して、今のスバルのイメージができたんだと思う。
この引用部分のコメントは、スバル愛好家の人たちがまさに感じていたところだと思います。
この感じが薄れてしまったら、スバル車に乗る意味がなくなってしまう……。
私も同感ですね。
投稿: よっさん | 2020-07-30 19:47
>よっさん
まさにその通りですね。
走りだけでなくすべてに渡って実験部門がしっかり走り込み・作り込みをするのがスバルの持ち味ですよね。
ただ、確かに年々そういうクルマ造りがやりにくくなっているとともに
そういうクルマが求められにくい市場環境になっているのも現実なんでしょうけど。
投稿: JET | 2020-07-31 05:21
今の時代、机上のデータだけで、クルマは出来てしまうと思います。
走りの味付けにかんしても、たくさん蓄積されたデータをもとに、最適値をひねりだしてやれば、そこそこのものはできる。
でもそこに人の感覚が介在してこそ、もの作りは生きてくると私は思っています。
きっとスバルのブランドを好きな人たちは、そこの違いを「買っている」のだと。
いちファンの思い入れだけでなく、本当にスバルの乗り味がそこにこだわっていてほしい、と切に思いますね。
投稿: よっさん | 2020-07-31 22:52
>よっさん
スバルらしさというのはその通りですよね。
それがしっかり出来ていれば、別に水平対向エンジンでなくとも、AWDでなくても、さらにはEVでも自動運転でも、スバルらしい魅力は実現できるはずですから、今後も期待したいですね。
投稿: JET | 2020-08-01 05:14