超久しぶりに自動車雑誌を買った、その理由は
当然ながら無職の身では取材を受けることもありませんのでめっきり自動車雑誌も買わなくなりました。
おそらくこの雑誌が最後で、少なくとも早期リタイア後は一冊も買っていなかったと記憶してます。
もちろん、無職でお金がないから買わないというより買っても読まないから買わないのですが。
それでもたまに本屋でパラパラと立ち読みというかざっとながめるくらいはしていたのですが
今回のマガジンXにはちょっと興味のある記事が載っていたので買ってみることにしたわけです。
立ち読みだけでなくちゃんと読みたいし、ブログネタにもしようかなと(笑)
さて、その記事は何かというと、表紙には書かれてません。
それは、このマガジンXでは(スクープ以外の)名物記事である覆面座談会の「ざ・総括 」です。
覆面で辛口評価を言いたい放題という企画ですが
以前に初代フォレスター(79V)の評価が気持ち悪いくらい良かったと書いたやつです。
今回、昨今の新型コロナ騒動の影響で新車試乗がままならないからなのか
新型車の評価座談会はトヨタ・ヤリスだけにとどまり、
その代りというか「日本の軽トラック」が取り上げられているんですよ!
しかも、もうとっくに生産終了している富士重工製RRスバル・サンバーまで登場です。
新型車批評ではないのでそんなに辛口コメントはでてないですが、
ネタバレというか著作権に引っ掛からない程度に少しだけ引用してみましょう。(以下引用)
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下-チ) スバル・サンバーの最後のRR(リ
アエンジン・リアドライブ)仕様をレストアしていた。ちゃんと走るようになったので仮ナン
バーを取った。 (中略)
自動車業界の事情通(以下-通) RR最終型のバンで、とにかく手元に置いておきたかった
んだ。RRサンバーは本当によくできていた。あれをなくしてしまったのは愚行のさらに愚行
だ。取っておけばいろいろな展開ができたはずだ。世界へも打って出られる素性だよ。
ベテラン実験ドライバー(以下-T) 生産を終了させたのはトヨタだからね。エンジニアリ
ング面で見ても見所があった。 (引用終わり)
もう最初の方から軽トラ(軽1BOXバン)というよりいきなりサンバー主役の展開です。
もっとも生産終了させたのは大株主トヨタの意向ではありますが
そうせざるを得ない状況にしてしまったのは富士重工(現スバル)そのものですからねぇ。
ですからサンバーだけでなく軽自動車撤退という結論だけでなく
そこに至るまでの過程も含めて愚行だったというべきだと思ってます。
少しアレっと思ったのは。 (以下引用)
T スバルでは軽トラが社内のドライバートレーニングで使われていたね。ダイハツもそうだ
った。実験部門だけじゃなくて開発スタッッフも運転の訓練をしていた時代だ。 (引用終わり)
ボクの知っている限り少なくともスバルでは軽トラ使ったドライバートレーニングなんてなかったぞ。
そもそもスバルでちゃんとしたドライバートレーニングなんてやりだしたのは数年前で
その時にはもう自社製サンバーは生産終了になってたはずだし、
開発スタッフの運転の訓練していた時代ってのも聞いたことがないな。
ダイハツのことは詳しく知らないけど、この時にダイハツの実験の人とも
ロールオーバーなどについて議論したこともあったけどそんな話はいっさい出なかったし。
まぁ、ちょい乗りしたり全ラインナップ一気乗りしたりで軽トラにも乗ったかもしれないので
それをおもしろおかしく記事にするために話を盛ったのかも。。。
それに、確かに軽トラはタイヤグリップに任せた強引な運転では上手に走らせられないし
そのために荷重移動やスムーズなステアリング操作など運転の基本の訓練には適してますけどね。
ただし、運転訓練というよりも操縦安定性をはじめとした様々な性能の実験や設計など
開発エンジニアを育てるのに適しているということは言えると思います。
流行やカッコやなんとなく良さそうな雰囲気だけでも売れることがある乗用車と違って
軽トラはユーザーの要求が具体的ではっきりしていてとてもシビアですので
ちゃんとした理屈でまともなモノを作らないと完全にそっぽ向かれますからね。
そして、中盤では「まず荷台長ありき」と段落づけして、セミキャブオーバーは荷台が短いけど
「そんなに嫌われる要素はないんじゃないか」と書いているんですが、
そこはやっぱり軽トラの真意をまったく理解できてないなぁというところかな。
酒屋のビールケース、農家のプラスチックケース、畳などなど様々な物を運ぶために
長年に渡って最適化されてきた荷台の長さというものがあるんですよ、軽トラには。
今まで積めていたものが積めないのではまったく何の役にも立たなくなるのが軽トラです。
もちろん個人のお客さんが、トランポとして使うのにバイクが積めないとか
ボクみたいに荷室で車中泊するのに脚が伸ばせないとかの要求もありますが、
商売・仕事で使っている人にとってはそこが切実な問題なんですよね。
だから、1999年の規格改定の時でもサンバーはあえてキャブオーバーを選択したんです。
当時は衝突安全性あるいは安全イメージからセミキャブオーバーにする議論もありましたし
実際にスズキやミツビシやホンダがセミキャブオーバーにしましたが結果失敗となり
後からキャブオーバーに戻す、もしくは2本立てにするということになりました。
それに、セミキャブオーバーにするとキャビンは広くなりますが
足元は窮屈になり乗り降りもしにくくなりますし、
ホイールベースが伸びて最小旋回半径が長くなり田んぼの畦道で曲がれなくなるんですよね。
もっとも、サンバーはその前にドミンゴでキャブオーバーのままでも
小型車および輸出して欧州の衝突安全基準をも確保する技術を持っていたので
キャブオーバーにすることが可能だっことが幸いしたわけですけど。
そして、後半部分はいよいよサンバーの評価になります。
ただし、「これはポルシェ911」と少々ベタな表現を使ってます。
もちろん、ただRRというだけでそう言っているわけでもなくて
乗り心地や操縦安定性、ステアリングの応答、サスペンションの設計・設定などで
具体的に評価をしたうえで、「930系のポルシェ911を思い出す」と書かれているわけですが。
まぁそれにしても他の軽トラと比較してもほぼ絶賛という風に書かれているので悪い気はしませんね。
その“悪い気はしない”というのはそのサンバー:AKB38の所有者としてではなく
開発に携わったいちエンジニアとして悪い気はしないということです。
そう、このあと別記事にしようと考えているのですが
79V(初代フォレスター)開発と並行で次期型サンバー(開発符号33E:ミミッチー)の
試作車完成まではボクが操安乗り心地の開発を担当していたんです。
バネ定数やダンパー減衰力やゴムブッシュの硬度などチューニングは後任の人に託したのですが
ステアリングやサスペンションの基本的な設定まではボクがやったのでとても思い入れがあります。
結果としてこの33Eが富士重工製最後のスバルとなってしまったことは誠に残念でありますが。
最後にちょっと面白いことが書いてありましたので紹介しましょう。 (以下引用)
通 サンバーが「頼れる実用車」だとすると、アクティはチャラいけれど楽しいマセラティだ
な。いいリズム感だった。あのアクティの乗用車版が2代目バモスだった。
エ そう。サンバーほどしっかり感はない。雑さもあったが、あれはあれで楽しかった。
(引用終わり)
ホンダ・アクティについてはここで試乗もしてないので詳細な批評はないですが
思い出として上記のように良い車というか楽しい車として書かれています。
ただ、そのアクティも来年には生産終了とのことですので
富士重工製サンバーと合せてレクイエムとして書かれた記事なのかもしれないですなぁ(笑)
もっともここで評されているアクティはセミキャブオーバーの3代目(現行は4代目)ですけどね。
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コメント
RRのサンバーディアスの後席に乗って移動したことがありました。すごく乗り心地がよくて、気持ちよく居眠りできました。まあスバルとしての事情があったことは理解できますが、あんないいクルマの生産をやめてしまったのは、もったいなかったですね。ところで桐生工業は、今なにを造ってるんでしょうね。
投稿: よっさん | 2020-06-27 20:36
>よっさん
桐生工業は福祉車両、警察関係車両などの改造・特殊車両の開発・生産とSTIの改造車両の生産などをしていると思います。
あと、EJ20エンジンは生産終了しましたがまだ輸出向けのEJ25エンジンは生産しているんじゃないのかな。
他に伊勢崎工場ではスバル車の補用品(プレス部品)を作っていると昔聞きましたね。
投稿: JET | 2020-06-28 04:55
ご無沙汰しております。
重工社員時代、軽は重工製しか乗る機会が無かったのでサンバーの良さがわかったのは再就職先でダイハツの軽トラに乗った後でした。
軽なんてどれも同じようなものと思ってましたが当時ブームが起こった初代ワゴンRを試乗もできない状態で購入し、広さに満足しながら乗ってましたが、車検の代車でビビオの最低グレードに乗ったらあまりに走りが鮮やかで驚いた覚えがあります。
当時乗ってたBF5は嫁に取られて通勤用に買ったものでしたが、ワゴンRには時間を返せと言いたくなりました。
前に伊勢崎跡地に富士号見に行ったときカバー掛けた金型がゴロゴロしてたのは見ました。
投稿: B10M | 2020-06-28 10:31
>B10Mさん
スバルの軽は4気筒エンジンとか4輪独立サスとかでコスト高で採算が取れなくなったとよく言われましたが、
それもあったでしょうけど逆にしかるべき時にちゃんと投資しなかったのでじりどんになったと思いますね。
軽枠変更などのタイミングと投資タイミングが合わなかったのもありますが、
それは政治力がなかったというか会社の本気度が違ったのでしょうね。
投稿: JET | 2020-06-28 10:45
>JETさん
私がディーラー出向してた当時商品はBC/BFレガシィ、ビビオ、SVX、あとサンバーでした。
乗用車は皆4輪ストラットで高回転型エンジン(NAに限る)。
技術に妥協しない(と思わせる)姿勢とそれに依る商品力には納得できますが、転職先の社長が乗ってた初代シーマとパルサーが同じウインカーレバーだと気が付いたとき、スバルの間違った拘りに気づかされました。
レックスのほうがシーマより立派なウインカー/ワイパーレバーだったのもビックリでした。
まさかあの日産が今ではこんなになるなんて。
投稿: B10M | 2020-06-28 13:49
>B10Mさん
初代シーマはシーマ現象なんてのを起こしはしたものの中味は何もないハリボテみたいなクルマでしたからね(笑)
ただ日産はあれで笑いが止まらないほどボロ儲けして、でもそれをその後の新車開発に投資したんでしょう。
だからなのかその後暫くしてからの日産車は意欲的で技術的にも非常に高かったですね。
ただ利益にはあまり繋がらずに、ルノーの子会社みたいになって……残念ですね。
投稿: JET | 2020-06-28 14:52
>JETさん
そういえば最初はセドリック/シーマ、グロリア/シーマでしたね。
その後のV8シーマは流石にE/G,ミッションが私のような素人でも良いもん感を感じるんで、その後自分のGFインプに乗ると軽みたいに感じるのでシーマを運転させられるのは嫌でした。
同じようにホーミー/エルグランド、キャラバン/エルグランドもトヨタにボコボコにされましたね。
今はセレナ/ランディしかないのかな?
狭くてもプレリュード、シルビアが大ヒットすることもあるのに、車ってむずかしいもんですね。
トヨタが後だしじゃんけんで唯一勝てなかったレガシィもこれまた時代の流れなのか。
投稿: B10M | 2020-06-28 16:28
>B10Mさん
トヨタってのは後出しじゃんけんで他社が開拓したジャンルをかっさらうかそれがだめなら捻り潰すかのどちらかですからね。
えげつないったらありゃしない(笑)
レガシィが日本に作りだしたツーリングワゴン文化もトヨタにかっさらわれはしませんでしたけど捻じ曲げられてというかスバル自ら変なスポーツワゴン方向に逃げ込んでしまいワゴン文化を根付かせることが出来ませんでしたね。
投稿: JET | 2020-06-28 17:19
>JETさん
確かにBFレガシィは日本を変えましたね。
レオーネワゴンに乗ってた頃実家(九州)に帰った時、
従弟にワゴン買ったって言ったらワンボックスと思われ、
姉には、この車バンなのにシートが豪華ねと言われ、
友達とガソリンスタンドに行ったらコレ軽油じゃねーのかと言われ、散々でした。
スバルサウンドはワゴン関係ないですが。
純正ホイールを買うしかない、オーディオ交換するのにも取り付けキットがない、optionに取り上げられることのないスバルが、変わりましたね。
投稿: B10M | 2020-06-28 18:07
>B10Mさん
BFレガシィが日本を変えたのか、日本が変わりつつあったからBFレガシィが生きたのか、
いろいろとタイミングがありますからね。
投稿: JET | 2020-06-29 05:15
>JETさん
なるほど。私もそんな俯瞰的な見方を心掛けたいものです。
アコードUSワゴンやアベニール、マグナム、いい時代だったのかもしれないですね。
投稿: | 2020-06-29 20:32
>たぶんB10Mさん
たしかに面白い時代だったかも知れません。
特にクルマ開発する側にとっては。
投稿: JET | 2020-06-30 05:37
>JETさん
名前いれてなかったみたいですね。
証明にはならないしなってもどうということも無いですが
B10Mでした。
失礼しました。
投稿: B10M | 2020-06-30 06:28