新書「新型コロナウイルスの真実」岩田健太郎著を読了
ベスト新書の「新型コロナウイルスの真実」岩田健太郎著を読みました。
著者は神戸大学の教授ですが、同時に感染症の専門家でもあります。
「感染症を診断しして治療する診断治療の専門家」であると同時に
「感染症が拡がらないようにする感染防御の専門家」でもあるとのことです。
というより、以前紹介した「『感染症パニック』を防げ!」という本の著者であり
感染クルーズ船における初期の対応不備について内部告発した方です。
その感染クルーズ船のことについても書かれています。
この件ではその後、日本では素人さんからもかなりバッシングされてるそうですが
そういうところも含めて反骨精神もあって信用できる人だなというのがボクの印象ですね。
この本は今年の3月23日に書かれたものです。
あとがきで以下のようなことが書かれています。 (以下引用)
そんなわけで、本書は非常時モードで突貫工事で作られた本です。内容に不備がある
可能性もありますが、その責任は当然筆者の岩田にあります。また、これから学術的な
知見が集まり、ぼくが論じていた内容が本質的に間違っていた、ということもあるかも
しれません。その場合はぼくの不明をお詫びするとともに、あとに自説を訂正すること
でしょう。 (引用終わり)
本文中でも、新型コロナウイルスは誰も経験したことがないだからぶれない人こそ怖い。
だからこそ寛容であって自分に関係ないことはほっときましょう、と言ってます。
まぁ自粛ポリスへの批判でもありますが、パニックを防ぐには大切な心構えですね。
内容から幾つか紹介しましょう。 (以下引用)
PCRは診断の拠りどころにはなりません。陽性の場合は喉に新型コロナウイルスが
いることの証明になりますが、陰性だからといって罹っていない証明にはならない。
(中略)
「正しく診断して正しく治療する」を目指したところで、正しく診断することはできな
い。正しく治療することも、まだ薬が開発されてないので、できない。 (引用終わり)
ボクがこの記事に書いたとおりでしたね。
もっともボクは専門家でないのであくまでPCR検査を受ける側の気持ちとして書いたのですが。
(以下引用)
答えがないのなら、むしろどこにでもウイルスがいる前提で、手指消毒をして、鼻や
口には触らないようにすることでリスクをヘッジしたほうが、より堅牢なやり方なんで
す。
環境を消毒してもきりがないから、手指消毒をする。この理屈そのものは理解できて
も心情的に納得できない人もいるかもしれまん。
こう言ったら失礼かもしれませんが、その納得できない心情こそが、我々の社会のい
ろんな問題の原因かもしれないと、ぼくは思います。 (引用終わり)
そう、やたらとアルコール消毒したりゴム手袋はめたりお金やカード類さえ
汚物のように扱うのは異常としか思えないですね。
手やましてや靴底にウイルスが付いてもそれで感染するわけじゃないんだから
自己責任で手を洗って、自己責任で鼻や口には触らないというのが正解ですよね。
(以下引用)
普段、街をあるくときにマスクを着けないのは全然正しい。私も街でマスクは着けてい
ません。先日、路上で声をかけられて「岩田先生、本当にマスクをしないんですね」と
驚かれました。これ以上、あちこちで声をかけられたらマスクをしようかしら(笑)。
感染予防に資することのないマスクの使い方をしない。不要な場合は着けない。たと
え、みんなが着用していても。
これが、感染経路を理解するということです。 (引用終わり)
(以下引用)
「症状がない」ということは、仮に自分がウイルスを持っていても飛び散ったりしない
ということです。咳やくしゃみ、大声でつばを撒き散らしたりしない限り、ウイルスは
外に出ていきません。 (引用終わり)
そうそう、だからマスクしてようが人前で咳やくしゃみされたら大迷惑ですし
大声でしゃべったり笑ったりされるのはこの時期は嫌悪感を感じます。
マスクをフカフカさせて喋ってる人とか口呼吸してる人みるとバカかと思いますし。
鼻だしてマスクしてたり顎にマスクしてる人もバカとしか思えませんけど。
意外だったのは、 (以下引用)
渡航禁止をしたら一時しのぎにはなるかもしれないけれ
ど、他の国を介して、結局人は入ってくるんです。 (引用終わり)
ボクなんかはチャイナからの渡航制限、ヨーロッパからの渡航制限など
日本の対応は明らかに後手にまわっていたと思ってますし、
空港検疫での検査が不十分で隔離や待機に強制力がなかったことなどで
日本国内における感染拡大につながったと思っているのですが、
著者はもうそれは仕方ないという考え方なんですかねぇ。
感染症とは直接関係ないのですが面白かったのは、 (以下引用)
そういった指摘をしていたら、「みんなが一生懸命やってるときに、おまえはそれに
水を差すのか。出ていけ」と言われてしまうんです。安全性よりも、みんなとの調和が
大切。 (引用終わり)
わはは、分かりますよ。水を差すのは本当にエネルギーをつかいますね。
もうひとつ、 (以下引用)
日本って不思議な場所で、日本を批判す
ると左翼、日本を褒めると右翼扱いされますよね。本来は違うのですが、この国では一
応、そういうふうに言葉が使われる形になっています。
右も左も関係なく、全体主義、言い換えると多様性を認めないことが、とても危ういです。
(引用終わり)
そうか、ボクは右翼・左翼というのをその政治思想や歴史を踏まえて捉えようとしていたけど
日本人の世間一般にはそういうことだったんですね。
だから、侍なんとか、なでしこなんとかとか、ワンチームって叫んでれば右翼になれるんだ(笑)
でも、多様性を認める、それは自分自身も多様な考えを持つことにつながり
そこからニュートラルで知性的な考えも持てるということですからね。
最後に、 (以下引用)
感染症と向き合う上でまず大切になるのは、「安心を求めない」ということです。
よく「安全・安心」とひとまとめにした言い方がされますが、この「安全・安心」と
いうのは間違ったコンセプトです。 (中略)
そこに存在するのは、「安心したい」という願望なんです。「大丈夫だと信じたい」と
いう欲望なんです。安心とは、願望、欲望にすぎない。だから実在しないのです。
(引用終わり)
感染症と自動車はまったく次元の違う話なので一緒にはできませんが
「安全・安心」というのはスバルをはじめ多くの自動車メーカーがよく使うフレーズです。
何を隠そうボクも30年ほど前から言い出し続けてました(汗)
まぁ、クルマという商品はそういう“願望”や“欲望”を満たしてあげることも重要ですし
「安全」なクルマを作ってからはじめて「安心」を語れるということも理解しているので
「安全・安心」と謳っても岩田氏から告発されることはないでしょうけどね(笑)
それとは別に感染症対策として「安心を求めない」というのは確かに重要なキーワードでしょう。
炎天下の街中でマスクしているのも、ただ安心を求めているだけなんでしょうから。
でもマスクして安心しているだけでは本当の安全は得られないというわけですね。
補足)
著者はなにがなんでもPCR検査するな、アルコール消毒するな、マスクするなと
主張しているわけではないので誤解なきようお願いします。
ただ安心を求めず正しく理解して安全を確保する。
逆にただ安心するためだけの無意味なことはせず思考停止にならないように、ということです。
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