朝日新聞社の「科学史の事件簿」を読了
朝日新聞社発行の「科学史の事件簿」『科学朝日』編を読み終えました。
背表紙以外には細い横線が1本しか書かれていないちょっと変わった本です。
というか、境町図書館にあったのをタダで放出したものを貰ってきた本で
本来はなにかしらのカバーが付いていたものだと思われます。
1995年発行の本なのでまぁ最新のことは載ってないですね。
また、科学を扱っていても左開きの縦書きの本で難しい数式などは出てこないです。
タイトルからも分かるように科学の歴史におけるいろいろな事件を扱っているのですが
教科書などに載っているような偉人の業績やそれにまつわるトピックスみたいな話というより
ほとんどが裏の事件や闇の事件などについての話となっています。
「あとがき」には以下のように書かれています。 (以下引用)
本書は、『科学朝日』で連載した「科学者をめぐる事件ノート Part Ⅱ」を一冊にまとめたものである。
(引用終わり)
Part ⅡということならPart Ⅰがあったはずですがそちらは日本の科学者を中心に書かれていて
こちらのPart Ⅱでは海外の科学者を中心としているということのようです。
そう、本のタイトルでは“科学史”となってますが焦点当ててるのは“科学者”の人という形ですね。
よくある科学者と兵器開発・戦争とか政治思想との絡みから人体実験や人造人間みたいな話だけでなく
男女の関係やら科学者同士の確執などゴシップネタみたいなものもあってなかなか面白いです。
その中から幾つか紹介してみましょう。
●スティーヴン・ジェイ・グールドという進化論関連の科学者の章ですが
面白いというか驚かされるのはアメリカ国民の話です。(以下引用 ※漢数字は算用数字に変換)
日本では、総理府の行った最近の世論調査によると、「人間はより原始的な動物から進化したもの
である」という説を肯定する人は、ほぼ80パーセントである。それに対し、否定派は10パーセン
トにすぎない。一方、米国のある新聞の世論調査によると、「人間は下等動物から進化した」という
説に対して、肯定派約40パーセント、否定派も約40パーセントと、両派はほぼ拮抗していた(中略)
さらに違う点が、米国では、創造論という強力な代替説があることだ。 (引用終わり)
これって意外にも2020年の今でも変わってないんじゃないですかね、米国では。
地球は平らだと主張して自作ロケットで確かめるとか言って打ち上げで事故死した米国人もいたしね(呆)
●バート・J・ボークという天文学者の章でも似たような話が出てきます。(以下引用)
1970年代初めに、占星術ブームなるものが学生の間に広まったことがある。とくにそれは、米
国においていちじるしかった。 (中略) それがこともあ
ろうに、知性の聖域である大学のカリキュラムのなかに天文学の代わりに占星術をもち込むことを要
求した。
なかには学生の要求に屈して、占星術を大学のカリキュラムに取り入れた大学や短期大学もある。
(引用終わり)
星占い(星座占い)で無邪気に一喜一憂してるくらなら良いですけど
それを科学的とか学問だとか思ってる人が多いってあまりにも情けないですよね(呆)
●イグナツ・フィリップ・ゼンメルヴァイスという医療研究者の章です。(以下引用)
近年とみに院内感染による被害が世間の関心を惹いている。 (中略) 世間から隔離
された白亜の施設である病院は、見たところ清潔である。だが、いまも昔も衛生学的見地からすれば、
もっとも汚染された場所であることに変わりはない。 (引用終わり)
もちろん、新型コロナウイルスの話ではなく、菌もウイルスも特定されてない時代の話ですが
このゼンメルヴァイスという人が手洗い消毒を初めて取り入れて感染症の予防効果を示したそうです。
●ロバート・フックという人でニュートンに消された人として登場してきます。
フックの法則:F=kx (バネの反力はバネ定数×バネの伸びまたは縮み)のフックさんです。
というか、それ以外ではフックのことはまったく知りませんでしたが
天体望遠鏡の構造についてアイザック・ニュートンと対立し
また惑星運動から万有引力のアイデアをフックがニュートンに示唆したと主張した人なのだそうです。
そう、フックさんは力学だけでなく天文学にも精通していたとのことです。
それだけにとどまらず、 (以下引用)
コルク断面の観察は、細胞(cell)の用語の命名者、ひいては細胞の発見者としての名誉を
フックにもたらした。 (引用終わり)
さらに、 (以下引用) 彼の技術的発明の多様さと膨大さである。それは、
真空ポンプから、時計の歯車を正確に回転させるためのバネ付きテンプ、気圧計やランプの改良、気
象自動記録計、水深の測定装置、馬車の改良に及ぶ。
フックはユニバーサル・ジョイントの発明者でもあり、英語では、それはフック・ジョイントと
も称される。 (引用終わり)
エー、フックの法則とフック・ジョイントは同じフックさんだったなんて
それ以外にも実に多才で17世紀のダ・ヴィンチとも言えるような人だったなんて初耳ですよ(驚)
●電気自動車で有名なテスラの社名の由来にもなったニコラ・テスラについての章です。
もちろん、この本が書かれた時にはテスラ社はありませんが、、、 (以下引用)
今現在、テスラの名を熱狂的に語るのは、ある種特異な嗜好の人々、
つまりはオカルト信者に限られている。 (中略)
派手なパフォーマンスにかまけて、テスラはここでも時代に乗りそこなったのである。
以後、テスラは大衆向けの雑誌や新聞の記者、また後に米国SFの父として知られることになる電
気雑誌の編集長ヒューゴー・ガーンズバックの代表される大衆科学ジャーナリストたちにとって珍重
すべき奇人として、一生を送ることになる。 (引用終わり)
ここでテスラ社やそのEVのことをとやかくいうつもりはないですが、ちょっと笑っちゃいますね。
| 固定リンク
コメント