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新書「動的平衡2 生命は自由になれるのか」を読了

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小学館新書の「新版 動的平衡2 生命は自由になれるのか」福岡伸一著を読みました。

以前に読んだ、同じ福岡伸一著の「動的平衡」の続編とも言える本になります。
そして、この本も新書化にあたって加筆されているため“新版”ということになってます。

おさらいになりますが、動的平衡というのは、          (以下引用)

 動的平衡の定義は「それを構成する要素は、絶え間なく消長、交換、変化しているにも
かかわらず、全体として一定のバランス、つまり恒常性が保たれる系」というものである。
                               (引用終わり)

つまり、人間も生まれた時から死ぬまで変わらずに(徐々に成長し老いていく)存在しているようで
実はそれを構成する分子レベルでの要素は数ヵ月前とはまったく別物になっているということです。

 

この本では、こちらの本でも出てきた「エピジェネティックス」についても次のように
音楽に例えてすごく分かりやすく述べられてます。            (以下引用)

 たぶん、遺伝子は音楽における楽譜と同じ役割を果たしているにすぎない。記された音
符の一つ一つは同じでも、誰がどのように演奏するかで違う音楽になる。遺伝子はある情
報で私たちを規定するのと同時に「自由であれ」とも言っている。そう考えた方が、私
たちは豊かに生きられるのではないだろうか。              (引用終わり)

そしてその「自由であれ」ということに関して次のようにも述べています。 (以下引用)

 とすれば、遺伝子の中には「産めや殖やせよ」という命令の他に、あらかじめ別の種類
の命令が含まれていることになる。それは「自由であれ」という命令が。その由来と意味
を考えることがおそらく『動的平衡』(木楽舎、小学館新書)に続く本書における私の新たな
課題となるだろう。                          (引用終わり)

この文章なんかは著者の意図とは違って、独身無職のボクが読むと
そうか子孫繁栄に寄与せず自身の遺伝子を残そうとしていないぼっちの人間でも
仕事からも社会からも「自由であれ」と求めてしまうのは「動的平衡」だからなのかと
妙な解釈をしてしまうのは愛嬌ということですかね(笑)

 

そして、この本では単に人類や生物というものを対象にしているだけでなく
そこから「動的平衡」の概念を広げて食糧問題、地球環境問題、時間論、宇宙論など
どんどんと「自由であれ」という感じで話題が広がっていきます。
それも、絵画、音楽、詩など様々な芸術や科学の例なども交えての展開であり
著者の博学・多趣味ぶりを伺わせてくれるものになってます。

最後の章で著者は次のように本書の一貫したデーマについて書いています。(以下引用)

 本書『動的平衡2』の一貫したテーマを一言で表せば、次のように要約できる。世界の
認識方法として、機械論的な見方と動的平衡論的な見方があり、私は後者をとる、という
ことである。                            (引用終わり)

ですから一見脈絡もなく話が吹っ飛んだりしているようで「動的平衡」で繋がっているのです。
そして、環境問題についてはCO2による温暖化に対して疑問を提示しつつ
それとは違った視点で以下のような指摘に考えさせられました。    (以下引用)

 しかし、近代以降は化学肥料の大量生産をはじめとする化学的な窒素固定量の増大に
よって不均衡が生じ、窒素が生態系の中に過剰に流出するようになった。(中略)
 私たちは、二酸化炭素の問題以上に、窒素の動的平衡に責任を持たねばならない。
                                 (引用終わり)

確かにボクもCO2による温暖化は相当に眉唾モノの話だと思ってますが
化学肥料についてはもっと世界的に真剣に考える必要があるでしょうね。

 

他にも癌や花粉症やエントロピーの話(考え方)などはやはりそうなんだなーとか
思うところがあって面白かったのですが、ここでの紹介は割愛させていただきます。
最後に男のボクとしてとっても驚いたことを紹介しましょう。    (以下引用)

「長い時間を一緒に過ごす女性たちは、同じときに月経になる傾向がある」のである。
この論文は1971年、科学雑誌『ネイチャー』に掲載されると、多くの女性たちが
「確かにそうだ」と肯定し、この現象は「マクリントック効果」と呼ばれるようになった。
                               (引用終わり)

どうやらフェロモンが関係してそうだということだが
それが生物学的に進化論的にどんな意味があるのかは不明なのだそうです。
それにしても驚きですねぇ。
一斉に休暇を取られると困るような職場では要注意ですね(笑)

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