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79V先試車でのアメリカ走行試験について

これまで79V(初代スバル・フォレスター)の操安乗り心地開発についてあれこれ書いてきましたが、
今回は海外走行試験について書いておきましょう。
79Vは海外にも輸出して販売するいちおうグローバル車種でしたから
当然ながら現地での走行試験もしておく必要がありました。

試験車を輸送したり比較のためのレンタカーを用意したりと手間もお金もかかりますし
現地駐在員が同行する日程などの制約もありますから
いろいろな実験部署の人が何人か寄せ集めでチームを組んで海外走行試験をすることがよくあります。

ボクは79Vではインプレッサを改造しただけの台車・先試車と呼ばれる試験車の時にアメリカに
そして1試車と呼ばれるフォレスターの形をした試験車の時にヨーロッパに走行試験に行きました。
2代目ドミンゴの69D開発で欧州走行試験を経験済みとはいえ
本格的な海外走行試験としてはほぼ初めてのことになりますから
ある程度は試行錯誤的な形になってしまっているのはいたし方ない事かなと思ってますが、どうでしょう。
確かその後1試車か次の3試車(2試車はなかった)の頃にもう一度アメリカ・カナダの
海外走行試験をしましたが、その時はボクは行かずに一緒にやっていた後輩に行ってもらいましたね。

今日はその2つの海外走行試験のうち最初のアメリカでの走行試験について
その模様や裏話などを書いてみようと思います。
まっこの時にもそのアメリカ走行試験での動画を載せてますけどね。

先試車でのアメリカ走行試験は1995年の8月~9月に3週間近くかけて行いました。
総括部という性能まとめ部署の人、パワーユニット関係の人、振動騒音部署の人、走破性関連部署の人、
そしてボク、さらに現地駐在のアメリカ人と日本人という7名での試験チームです。

持ち込んだ試験車=先試車は赤いインプレッサをベースにして
79V仕様の足回りやタイヤなどに改造した試作車です。
エンジンはNAの2.5Lだったかな。
比較車としてジープ・グランドチェロキーとフォード・エクスプローラーをレンターで借りました。
グランドチェロキーは本格的なSUVというかクロスカントリー性能を有した車ですし
エクスプローラーはトラックベースのクロカン車という成り立ちですから
どちらも79Vとは販売上で競合するような車ではないですけどね。
まだホンダCR-Vなど乗用車ベースのSUVは発売前でしたしね。

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試験チームは(当時のボクから見ると)かなり平均年齢の高い構成となってしまっていて
ボクは最年少ということもあって走行試験ルートなどはほぼお任せ状態にしてしまってたんですが
フタを開けてみたらほとんど悪路走行オンパレードになってしまっていました。

コロラド周辺には4×4しか走れないとか難易度ランク付けされた道路があって
まぁ道路といっても生活道路ではなくレジャー用にオフロード車で走って楽しむ道路ですが
そういう道ばかりを走るような試験ルートになっていたわけです。

まぁそれはそれで大事な試験ですし、当時は走破性に関係している部署も
その評価方法も基準も持っていないような状態でしたからそれなりに意義はあるんですが、、、
それにしては運転技術が心もとない人ばかりとなってしまっていて(駐在員は除く)
スムーズなアクセル&ブレーキ操作もできずに車幅感覚もいい加減で
4輪のタイヤがどこを通過しているのかも把握できないような運転技術では
シビアな路面状況ではとても運転させることは無理との現地駐在員の判断で
結局難しい局面ではずーとボクが運転するようなことになってしまいました。
悪路走行の運転手役でアメリカまで出張してきたわけじゃないのに。。。

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その現地駐在員のアメリカ人のかたも頭抱えてしまってます(笑)

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こんなところばかり走ってました。
たまに出会う人たちは観光目的のアメリカ人ばかりで
ほとんどはジープなどのオフロード車をレンタルしてこの道に乗り入れている人たちで、
我々の一見しょぼい乗用車(アメリカ人の感覚だとアルトなどの軽乗用車くらい?)で
こんな道に乗り入れているアジア人集団は無謀でアホな奴らに映っていたのだと思いますね。
そんなこんなで、たまには発散しないとやってられないので悪ふざけもしちゃてました(笑)

ちなみに、比較車のグランドチェロキーはさすがにこんな悪路でもなんなく走れました。
エクスプローラーは意外にも下回りを頻繁に摺りましたけどトラックベースだけあって
少々擦っても壊れなさそうな頑丈さは感じられましたね。
ただ、4WD機構の信頼性がまったくなくてすぐに警告灯点灯して機能しなくなりました。
レンターを別の個体に替えてもまた壊れちゃいましたからきっとなんちゃって4WDなんですね(汗)

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エンジニア・パスにて記念撮影ですが、こんな走行試験ではエンジニア廃業みたいです(汗)
ボクは海外走行試験であれこれ部品を変えて試験するのはどうかという立場の考えですが
ホテルの駐車場でサス交換してました。
セルフレベライザ仕様の確認もしておくためですが。

 

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観光みたいな写真も載せておきましょうね。やはり壮大な景色に圧倒されますな。
悪路以外の道も走るわけですが、当然そういう道路でこそ操縦安定性・乗り心地の確認をしたいわけで
そうなると悪路もそれ以外の道路も結局ボクが運転しっぱなしになるんですよね。
それで、おっちゃんたちは後席で熟睡してるという構図になってました(呆)
まっ、それだけ79Vは乗り心地も良く静かだということで納得するしかなかったですが(爆)

Us95_0203 Us95_0268 
いろいろとストレスも溜まったのでコロラドでの休日は独りでレンタルバイクで遊んでました。
岩場ばかり走っていたからかレンタルバイクの店員に「ロック、ロック」と言われても
石・岩(Rock)しか想像できなくて、鍵(Lock)だと気づくまで10分以上も……orz

最後の方はラスベガスのカジノでひと息です。
まぁボクはギャンブル嫌いですし虚構の街って感じでラスベガスは好きではありませんが。

 

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最後はロサンゼルス近くの砂丘にて……駐在のアメリカ人が派手にジャンプして壊してしまいました(汗)
まぁ最後で良かったですけどね。

ボクが担当している操安乗り心地についてはこの走行試験では大きな問題はなく
ほぼ狙いの性能がアメリカの大地でも出ていることが確認できてよかったというところです。
まぁアメリカは広いのでこれだけ走って絶対大丈夫とはならないんですけどね。

 

ちなみに、操安乗り心地の試験よりも悪路走行テストドライバー役だったアメリカ走行試験について
その報告書にボクは操安乗り心地の結果についてだけでなく
79Vの商品性についても生意気に意見しています。
それもずばり「商品性が弱く『華』が必要である」と要旨に書いてます(汗)

ところがこれがプロジェクトチーム内で問題となって侃侃諤諤の議論となったらしいです。
それはそれで良かったなということなのですが……
その結果として車内の至る所に使えそうで使い道のないポケットが幾つも設置されることになったのです。
うーん、それが「華」ではないんですけど。。。
まぁでもそれがある意味で無骨で不器用なスバルらしいところでもありますけどね(汗)

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コメント

>持ち込んだ試験車=先試車は赤いインプレッサをベースにして
>79V仕様の足回りやタイヤなどに改造した試作車です。
>エンジンはNAの2.5Lだったかな。

なるほど。こういうクルマで実走試験をしていたんですね。
EJ25に組み合わせたミッションはMTでしたか、ATでしたか?
たしか市販車ではEJ25はAT専用だったような記憶がありますが。

ちなみに現行車の開発でもこの時代のようなきめ細かな? 仕向け地での
試験はしているのでしょうか。
PCの中でどんなことでも再現できる時代となった今では、
データだけで試験しているのかな? とも感じてしまいます。

投稿: よっさん | 2019-12-12 20:14

>よっさん

アメリカ走行試験車は4ATでしたね。
当時のEJ25がAT専用だったのは初めて知りました。

自動車メーカーによっては、そして車種によっては
ほとんどヴァーチャルなシミュレーションだけで開発することが可能かもしれないですが、
少なくともスバルではまだテストコースでの実走試験のみならず
海外走行試験など実路・公道での試験をしているんじゃないのかな。

投稿: JET | 2019-12-13 06:00

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