79V 1試車での欧州走行試験について
前回は79V(初代スバル・フォレスター)の操安乗り心地開発における
先試車でのアメリカ走行試験について書きましたので
今回はその次の1試車(1次試作車)での欧州走行試験について書くことにします。
1試車はもうフォレスターのカッコウをしている試作車になります。
まだ世に出ていないクルマですからスクープ写真を撮られると今なら大問題になるところですが、
当時はそれほど神経質になっていなかったしスマホや携帯のカメラも普及してない時代ですし
79Vそのものが大して目立つカッコウのクルマでもなかったことなどから
大胆にもほとんどスッピンのままで昼間でも欧州各地を走行していました。
ただ、当時も新型車がスクープされるとそれを理由に営業部門が現行車が売れなくなり
在庫処理ができなくなるとかなにかと難癖つけて開発部門に責任を押し付けてくるので
日本国内での一般公道での走行試験はほとんど出来ない状況になっていて
夜間にこっそりと前後をガードして走るしかないくらいでしたから、
むしろ海外走行試験の方が充実していたと言えるかも知れないですね。
今では海外走行試験でもすぐにスクープ画像が撮られて瞬時にネットで拡散してしまうので
ますますもって公道での走行試験はやりにくくなってしまってますね。
本当はこういう実路で徹底的に走り込むというのが乗り味・走り味の熟成には必要不可欠なんですが……
まぁ今のクルマはそういう乗り味・走り味に拘るというモノでもなくなってきちゃいましたけどね(哀)
79Vの1試車での欧州走行試験は1996年7月から8月にかけて3週間ほど実施しました。
エンジンはNA2.0Lの欧州仕様です。もうこの頃には操安乗り心地はほぼ仕上がった状態です。
参加者は総括部の隊長さん、振動騒音部署の人、エンジン実験の人、トランスミッション実験の人、
そして現地駐在員4名(内ドイツ人2名)とボクですが、
トリップは現地駐在員1名だけの計6名での行動となったと記憶してます。
ドイツ・フランクフルト郊外にスバルの欧州駐在事務所がありそこが拠点になります。
フランクフルト近郊にだけJETガソリンスタンドがありました(笑)
今もあるのかどうか分かりませんけどね。
右のはフランス・パリで見かけたスバル・ヴィヴィオ。ちょっとだけ輸出してたんですよね。
のっけから観光旅行の雰囲気の画像ばかりです。実際に休日で観光してました(汗)
夕焼けのシャンゼリゼ通り、エッフェル塔(登りませんでした)、グランダルシュ(新凱旋門)、
そしてシャンゼリゼ通りで偶然見かけた新婚さんたち(祝)
でも、休日観光といいながらも凱旋門の周りのランナバウト(ロンポワン)を
79Vで走ってみようということで無謀にも早朝に走ってみましたよ。
早朝で渋滞はなかったですけどそれでも車は多くて皆果敢に突っ込んで来ますから
サーキット走るよりも最高速出すよりも超スリリングでしたね。
※普通のランナバウトは回っている車が優先なのですがここだけは進入車優先なんです。
だからみんなどんどん突っ込んでくるのですが、
それを避けて内側に入ってしまうと永遠に回り続けなくてはいけなくなってしまいます(笑)
もちろん車間距離も詰め詰めなのでブレーキ踏もうものなら追突されそうですし
そうでなくともクラクションを鳴らされたり窓から手を挙げて抗議されそうです。
もちろんスリルを味わうためにそこを走ったのではなく
石畳の上をある程度高速で旋回しつつ他車との微妙な間合いをコントロールしやすいかどうか
そのような操安乗り心地になっているかを確認しておきたかったというわけです。
パリから一端ドイツに戻って、それから長距離トリップに出発です。
これは確かドイツとスイスの国境です。
比較車のトヨタRAV4とボルボ850と79Vの3台でのトリップです。
なんでボルボなのか忘れました(笑)
当時はSUVはあまりなかったしワゴンの王道のボルボと比較するのも良いかという感じかな。
スイス・アンデルマットで一泊しましたがチーズフォンデュを食べたことを覚えてます。
スイスからイタリア・ミラノへ到着です。これまた観光旅行っぽいですね(汗)
実際に午後からは休日扱いでアルファロメオ博物館を観に行ってきました。
ここはアルファロメオの工場内にあって既に夏季長期休暇に入っていて閉館だったのですが
警備員の方が特別に開けてくれて早足で観て回ることができました。
展示車についてはJET-POHOTOのこちらに載せてあります。
なお、スイスからミラノまでのアウトストラーダが超曲がりくねっていて
そこをフィアットパンダなんかがタイヤ鳴らしながら大型トラックの合間を縫って走るんですね。
いやーイタリアは熱いですねぇ、こっちも79Vでガンガン走ってみましたよ(笑)
イタリア・ジェノバで一泊してからモナコ公国入りしてモナコ・グランプリ・コースも走りました。
もちろんレーシングスピードで走ったわけでもなく走行試験としてはあまり意味がないですが
まぁこれは話のネタとしてはいいんじゃないかというくらいのノリですね(汗)
ニースなどのセレブ感溢れる観光地も通って、つくづく79Vは似合わないなと思いながら(笑)
フランス・アヴィニヨンで一泊です。
「アヴィニヨンの橋の上で踊るよ踊るよ♪」のアヴィニヨンです(笑)
モナコからアヴィニヨンまでの道路が適度に荒れていて速度域によっては
ヘコヘコと共振するような不快なピッチングが感じられて課題のひとつとなりました。
やはり様々な路面・交通環境で走行してみないと分からないこともあるのです。
ですから、一見ただあちこち観光してるだけだと思われるかもしれませんが
いかにバラエティの富んだ場所で走行試験をするのが大切なのだと改めて思いましたね。
この後は、フランス・リヨンを経由してドイツ・フライブルクで一泊後に
フランクフルトまで帰還しました。
おそらくこれをここまで読んだ人の多くはこれって海外走行試験っていうより
単に海外観光旅行じゃんって思ったんじゃないでしょうか。
まぁ確かにそう思われても致し方ないような感じになっちゃってますが
いちおうフランクフルトの駐在事務所周辺の定例コースなどでの地味な各種試験もやってますが
それらも含めて詳細は書きませんし写真などもありませんからね。
とはいえ、ボク自身も海外走行試験をする意義としてある程度は観光旅行的な
あちこちを走り巡ることが大切であるという考えなのでこうなってしまってるところでもあります。
次回はその辺りのボクなりの考えについて少し書いていくつもりです。
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コメント
お話を読むと、やはり現地で実際の道を走ってみることが、
いかに実のあることか、よく分かりました。
投稿: よっさん | 2019-12-19 20:08
>よっさん
そうですね。
実際の道を走ってまったく問題がなかったというのがベストですけど、
課題が発見された方が技術の蓄積とか技術者の育成という点では得られるものが大きいですね。
投稿: JET | 2019-12-20 03:04