新書「『やりがいのある仕事』という幻想」を読了
朝日新書の「『やりがいのある仕事』という幻想」森博嗣著を読み終えました。
早期リタイアして完全無職生活をしている人間が「やりがいのある仕事」なんて
いまさら口にするのも憚られるようなことなんですけど、
逆にもう関係ない状態になっているからこそ呑気に酒飲みながら読めるかななんてね(笑)
そして、著者の森博嗣氏はボクとほぼ同世代で愛知県出身、大学工学部卒で模型好き
なんだかボクと重ねあわせたくなってしまいますからいまさらながら読んでみました。
もっとも、重ねあわせたくなったといっても彼は大学助教授を辞めて作家になって
公務員時代の30倍の収入になったというのですから
ボクなんかとは収入・資産はとんでもなく違うんですけどね(哀)
そんな著者は大学助教授を47歳で辞めて
作家業は一日一時間だけ仕事してあとはほとんど遊んでいるそうです。
ボクが「やりがいのある仕事」を口にするのが憚られるなんて言ってたら
著者がそれを言うのも、というか本に書くのも嫌味になりそうな気もしますね。
ただ、この本が主なターゲットとしているのは同世代のシニア世代ではなくて
これから就職して社会人になろうとしている人も含めて若い世代の人たちのようで、
そういう人たちに対して「やりがいのある仕事ってのは幻想だよ」とか
「働くことってそんなに大事なことじゃないよ」とアドバイスしているという本になります。
著者が大学助教授として学生や卒業生に接してきた経験を踏まえて
そのような立場からのアドバイス本ということなのでしょう。
そうは言っても、いきなりまえがきの冒頭に
この本に書いてあることは、一言で言えば、「身も蓋もない」ことである。
なんて書いてあるので笑ってしまうんですけどね。
そして、この本の内容のほとんどはまえがきに要約されてます。
「人生の目的は、自由の獲得のため」
「人は働くために生きているのではない」
仕事の立場がどんなに偉くても、それは人間として尊敬できるというのとは別のファクタだ
仕事はみんないやらしいものだ。「下賤」な行為だ。
などなど、ボクなんかはその通り!といちいち相槌を打ちたくなってしまう内容でした。
この本などとも内容的には共通しているかなとも思います。
もちろん、まえがきだけでそれ以降は全部無駄な内容が書かれているわけではなく
特にまえがきですぐに腑に落ちないような人でも本文をちゃんと読めば
すーと気持ちが軽くなっていくかもしれない内容になってますし
今までなんとなくモヤモヤと思ってたことがすっきりした言葉で書かれていたりして
そうなんだよなぁというような内容も多く含まれてました。
ちょっとそれらを紹介してみましょう。 (以下引用)
「やりがい」もきっとそういうふうに誰かからもらえるものだと信じ
ている。どこかに既に用意されていて、探せば見つかるものだと考えている。
そんな若者が、会社に入って、やりがいがもらえないか、と人を見て、やりがいはど
こにあるのか、と周囲を探す。でも、誰もくれないし、どこにあるのか見つけられない。
(中略)
物事を成し遂げたり、小さな成功があったときに、すぐにお祝いをして、酒を飲んで
酔っぱらって大騒ぎをする。それが、仕事の楽しさ、やりがいだと勘違いをしている光
景をよく見かける。
(中略)
繰り返していうが、人生のやりがい、人生の楽しみというものは、人から与えられる
ものではない。どこかに既にあるものでもない。自分で作るもの、育てるものだ。
子供の頃にその育て方を見つけた人は運が良い。なかには、せっかく見つけたのに、
大人や友人たちから、「そんなオタクな趣味はやめろ」と言われて、失くしてしまった
人もいるだろう。そう、やりがいとか楽しみというものは、えてしてこのように他者か
ら妨害される。周囲が許してくれない、みんなが嫌な顔をする、もっと酷い場合は、迷
惑だと言われてしまう。でも、自分はそれがやりたくてしかたがない。このときに受け
る「抵抗感」こそが、「やりがい」である。その困難さを乗り越えることこそ、「楽し
み」の本質だと僕は思う。 (引用終わり)
そこまで書かれていませんでしたが、中には連日の深夜残業でヘロヘロになりながらも
栄養ドリンクや薬漬け状態で会社に居残り続けることで、逆にハイになって
これこそが仕事のやりがいだと勘違いしてそうな自虐的な人も見かけましたし、
あるいはそんな姿を周りが賞賛していると勘違いしてそれをやりがいにしているような人も……(汗)
なんにしても、やりがいは自分で探して育てるもので、
それに対する抵抗感こそがやりがいって考え方はとても合点がいくものでした。
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