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新書「ケーキの切れない非行少年たち」を読了

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新潮新書の「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治著を読みました。
ケーキが切れないといっても包丁を渡すとケーキを切らずに人を切ろうとするとか
不器用で柔らかいケーキを切ることができないとかの意味ではなく
ケーキに見立てた丸い円を三等分とか五等分とかにすることが出来ないということです。
しかも幾何学的にあるいは分度器を使って正確に三等分する方法とかではなく
だいたいこんな感じというのすら出来ないということです。

まっ帯面の絵を見ればどういうことかは想像できますけどね。
それに非行少年の全員がこうだというわけではありませんが
そのような認知力が弱く知的障害を持った少年(少女も含む)が多いのだそうです。

だから、自分の見たものが何なのか理解できないし
人の話も理解できないし、時間(因果関係)も分からないし、
人間関係も構築できないのだというわけです。
それ故に著者は「反省以前の問題」と呼んでいます。

ケーキの切れない非行少年など重度の知的障害のある少年などは
おそらく知能検査などでも分かるはずなのですが、
軽度知的障害や境界知能であっても特定の分野の知能だけ著しく障害がある場合もあり
またその矯正・更生の現場ではそのことが正しく認識されてない場合が多いのが現状のようです。

小学生の頃から軽度知的障害や境界知能であって学校教育で正しい対処がされず
それがいじめや登校拒否などにつながっていきやがて非行に走ることにもなるため、
学校教育で社会面の支援について系統的な学習が必要だと著者は述べています。
社会面の支援とは対人スキル、感情コントロール、対人マナー、問題解決力などのことです。

ただ、個人的にはそれら社会面の支援って学校教育以前の問題のような気もしますけどね。
もちろん、家庭や集団生活を通じて自然に身に付く子供もいればそうでない子供もいるので
どこかでフォローしてあげられるような社会的な仕組みは必要でしょうけど
それをすべて学校教育に期待してしまうのは無理があるなと思いますね。

 

もう40年近く前の話で恐縮ですが、ボクが大学生だったころにアルバイトで家庭教師をやっていました。
ボクは理系でしたので算数・数学を教えることがほとんどでしたが
とうぜんながら生徒の学力や性格は様々でした。
生徒自ら事前に勉強して分からないところや不安のあるところだけを教えて欲しいと聞いてくるような
つまり自分で勉強を計画的に定期的に進められて課題を認識できるような優秀な生徒もいましたが
まったく学校の勉強についていけずに勉強する気もないのにきっかけ作りに家庭教師を頼むみたいな
そんな生徒を教えなければならないこともありました。

ある小学5年の子でしたが、学校の授業の内容はまったく理解できてなくて
遡っていったら九九もうろ覚えで計算の繰り上がり・繰り下がりもおぼつかない状態でした。
算数だけ教えてましたけど他の教科は十分学校についていけている印象ではなかったので
やはり軽度の知的障害と言える状態だっと思います。

学校の授業にまったくついていけてない子を週1回や2回、
2時間とか家庭教師で勉強しても挽回することはほぼ不可能ですし、
そもそもそういう子なので2時間のうちまともに集中していられる時間は限られてしまいます。

その子の親からすれば机に座って勉強するという習慣というか
短時間でもその時間を作るために家庭教師を雇っているのかなとも思えます。
あるいは単に話し相手になってもらいたいとでも思っていたのかも知れません。
実際、ちょっと自閉症ぎみな感じのひとりっ子でしたし。。。

ただ、あまりにも不可解で理不尽だなと思ったのは
そこの家庭は夫婦共働きで夫婦ともども学校の先生をしていたんですよね。
夫婦とも算数・数学は得意じゃなかったとしても生徒を教えているのに我が子は教えられないのか。
それとも、我が子だとつい感情的になってまともに教えられないのか。

夫婦共働きなので家庭教師に払う程度の経済的余裕はあるのでしょうけど
それなのに公営アパートに住んでいてふすま一枚隔てたところで家庭教師と勉強をさせつつ
本人たちはなんとテレビのバラエティ番組を観ながら大声で爆笑しているんですよね。

当時のその生徒には非行と呼べるような問題行動はありませんでしたし
その後のことはまったく知りませんけど
知的障害が疑われるならそれなりの診察や教育施設などの対応をとるとかが必要で、
家庭教師を頼んでもなんの解決にもなりませんし、
それ以前に家族をも含めた環境の改善を図ることが必要なのではないかと切望したことを思い出しました。

まっボク自身としては、個人的にそのことは良い社会勉強になったかなとは思いますが(汗)

 

それにしても、非行少年の多くがそのような知的障害を抱えていて
少年院などでも有効な矯正・更生プログラムが打てずにいる現実があり、
さらにその予備軍みたいな状態の子どももたくさんいるのが現実であり、
つまりその状態で表面的には大人になっていく人が少なからずいるというのが現実なのですから
なかなか不可解で凄惨な凶悪犯罪は後を絶たないのでしょうね。

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