新書「『永遠の0』と日本人」小林栄太郎著は途中放棄した
この本は小説&映画「永遠の0」、アニメ映画「風立ちぬ」、映画「終戦のエンペラー」について
いろいろと批評をしているという本になります。
ボクは「風立ちぬ」だけはテレビ放映されたものを録画して観た記憶がありますが
「永遠の0」と「終戦のエンペラー」は観たこと・読んだことはありません。
何を題材にしたストーリーであるかはなんとなく把握してるくらいです。
そしてこの本ではそれらの小説・映画についてはほぼネタバレの中身となっています。
まぁそのこと自体は最初に小さい文字で断ってあるので不問にすべきでしょう。
「永遠の0」は特攻を扱った百田尚樹著の小説です。
百田氏も安倍晋三親衛隊の一人らしいのですが、
ボクは過去に百田氏の新書「大放言」を読んでいて極端な右傾という印象はなかったです。
実際にこの本の中でも「日本は韓国に謝るべき」(もちろん昨今の状況の話ではない)と書いてますし。
一方で小林栄太郎氏は「永遠の0」をこれでもかというほど持ち上げて
逆に「風立ちぬ」と「永遠のエンペラー」をこれでもかというほどこき下ろしています。
別に本人が映画を観てそう感じたというのならどう批評しようが本人の勝手なのですが
この「『永遠の0』と日本人」という本はこれらの小説・映画を批評しているというよりは
これらの小説・映画を担ぎ出してその実はただただ自分の思想を述べているだけだと感じます。
自分の思想があるならそれをそのまま本に書くならそれはそれで好きな人が読めばよいでしょうが
他人の作品をダシにしてあるいはその蓑に隠れて自分の思想を押し付けがましく書くという
そういう構造をとっているこの本には激しく苛立ちを覚えたという次第です。
例えば、以下のような文章はとてもまともな感性の人間が書けるものではないでしょう。
(以下引用)
映画『永遠の0』の空中戦の美しさもまた、そうした伝統に則
る、戦争のロマン化と言えるだろう。戦争賛美の危険思想などというレッテルは無意味である。
性欲は強姦の原因になるから男性を全員去勢すべきか。性欲があるから幸福な家庭があり得、
美しい恋愛が可能であり、人生の喜びが生まれる。 (引用終わり)
そして、実際にこの本では小林栄太郎氏の戦争賛美と呼べる思想が次々と展開されていく。
先の大戦(著者はあえて大東亜戦争と呼ぶ)を必然であったとし正当化しようとしている。
そんな思想だから零戦設計者・堀越二郎を題材にしているのに空戦すら出てこない
アニメ映画「風たちぬ」のそのあり方、さらには宮崎駿氏のファンタジーな作品すべてをこきおろす。
ボクは別に宮崎駿ファンでもスタジオジブリファンでもないけれども
このような他人の作品を穿った視点でとらえてこきおすことで
自分の偏った思想を一方的に展開していくという小林栄太郎の姿勢には怒りを感じました。
というわけで、半分ほど読んでこの本を閉じました。再び読み始めることはないでしょう。
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