新書「できそこないの男たち」を読了
光文社新書の「できそこないの男たち」福岡伸一著を読み終えました。
福岡伸一著の本はこの記事でも紹介したようにボクは何冊か読んでいます。
結構、目から鱗的な新発見がありますし、それ以上に着眼点がとても斬新で面白くて
書店で何気なく手に取ると福岡氏の著書であることも多々あります。
著者は生命科学の大学教授ですからこの本も生物の仕組みや遺伝子などから
ヒトとしての男・生物としてのオスとは何かを解説している科学読本ではあります。
しかし、科学参考書や論文みたいなお堅い無味乾燥した文章ではなく
たとえ話や物語調の文学的な表現で書かれているので
あまり構えずに読み進むことができる本になってます。
そうはいっても、Y染色体の中の男を男の形態にたらしめている
SRY遺伝子発見に至るまでの経緯の話などは十分に専門的ですし、
それでいてドキュメンタリータッチのストーリー展開で楽しめます。
この本の内容としては、
男性は生命の基本仕様である女性を作り変えて出来上がったものであり、
だから所々に急場しのぎの不細工な仕上がり具合になっていると。
故に「できそこないの男」なんだということです。
そして、生命誕生まもない頃の生物はメスだけで子孫を作れる単為生殖・単為発生であって
進化の過程でオスが発現したのは遺伝子の多様性と変化をもたらすためだけだったと。
その意味では、男はママの遺伝子を誰か他の娘のところへ運ぶ「使い走り」を
行なっているだけの役目でしかないということです。
まぁ、確かにそうかもしれないですね。
シングル・子無しのボクはその役目すら果たしていないことになりますが。。。(爆)
驚いたのはアリマキという虫の生態についてで、
アリマキは基本的にメスだけでメスの子どもを卵でなく子どもとして生んで繁殖するそうで、
生まれた時点でそのメスの子どもの胎内にはすでに子どもがいるという
ロシアのマトリョーシカのような状態になっているそうです。
それだけでも驚きなのですが、さらに驚愕なのは、
年に一度だけ冬が近づくとオスが生まれて交尾して受精卵が作られるけれど、
それは直ぐに孵化せずに春になってから孵化するんだそうです。
しかも、生まれてくるのはこれまたメスだけ。
まさしく、繁殖するのにはメスだけで十分、ただし遺伝子の多様性と変化のためだけに
そして厳しい冬を卵の状態で越冬するためだけに
一時的にオスが作りだされるのがアリマキという虫ということです。
ただし、ヒトの男はただ遺伝子の「使い走り」だけやっていればいいかというと
社会的にはそういうわけにもさせてくれないので、
それはそれでまた辛いというか哀れな存在かなと思いますが……
なお、エピローグに次のようなちょっと興味深いことが書いてありました。 (以下引用)
自然は、加速を感じる知覚、加速覚を生物に与えた。進化とは、言葉のほんとうの意味に
おいて、生存の連鎖ということである。生殖行為と快感が結びついたのは進化の必然である。
そして、きわめてありていにいえば、できそこないの生き物である男たちの唯一の生の報償
として、射精感が加速覚と結合することが選ばれたのである。 (引用終わり)
もちろんこれは定説でもなんでもなく著者の一考察にすぎないのですが、
視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚に加えて加速度の知覚を加速覚と称して
それが射精感と結びついているというのは面白いしなんとなく分かる気もします。
ボクは加速覚という言葉よりG感覚という方がしっくりきますけどね。
もちろん、ここでのGはG(グレフェンベルク)スポットのGではなく
加速度の単位としての重力加速度(Gravity)の意味ですけど(笑)
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