「『宇宙戦艦ヤマト』の真実」豊田有恒著を読了
著者が今(2017年)になってこの本を書くことになったのは
まえがきの冒頭に、次のように書いてあります。(以下引用)
今さら、なぜ『宇宙戦艦ヤマト』なのか、訝しく思われる読者もおられるだろう。
実は昨年(2016年)、『宇宙戦艦ヤマト』を記事に取り上げるということで、某大
新聞の取材を受けて取材に協力したことが、この本を書く気になった動機である。取
材を受けて、企画がスタートした時点でのいきさつなど丁寧に説明したにもかかわら
ず、当方の意向を無視されるだけならまだしも、まったく違う方向に強引にねじまげ
られたからである。 (引用終わり)
これだけだとどの新聞がどのようにねじまげたのかまったく分かりませんし
そのことについては本文のどこにも詳しく書かれていませんでした。
その代わりに本文のほとんどの部分が宇宙戦艦ヤマトのプロデューサーである
西崎義展氏への恨み辛みが延々と書かれているという本でした。
さらば宇宙戦艦ヤマト/宇宙戦艦ヤマト2の頃にはすでに
西崎義展氏の独裁的な態度やら松本零士氏との確執などが聞こえてきていましたが
当時のボクはその頃までは純真に宇宙戦艦ヤマトを愉しみたかったので
そのような情報からは意図的に避けていましたし、
その後もボクの中の宇宙戦艦ヤマトのイメージを穢したくない思いから
そのような裏事情などについては敢えて触れないように過ごしてきました。
ただ、その当時から持っていたボクの宇宙戦艦ヤマトの美化されたイメージも
もう宇宙戦艦ヤマト2202とかテレビ放映されるようになって
ズタズタにされてしまったので
ここらでこの手の暴露本みたいなものに触れてみるのもいいかなと思い
本屋で手に取り買って読んでみたというわけです。
もちろん、この本の内容は西崎義展氏への恨み辛みだけが書かれているのではなく
西崎義展氏の功績の部分にも触れていますし、
それだけでなく手塚治虫氏からの日本のアニメの発展についても書かれていますし、
当然ながら宇宙戦艦ヤマト誕生の裏話などもたくさん書かれています。
例えば、宇宙戦艦ヤマトのストリーの発端は『西遊記』であったこととか、
戦艦ヤマトを使うのは松本零士氏の発案だったとかなどです。
西崎義展氏と松本零士氏は著作権問題で訴訟まで至って
結果的に西崎義展氏が勝訴することになるのですが、
それでも著者は次のように書いています。(以下引用)
しかし、ヤマトの場合は、原作があって始まった企画ではないから、より複雑であ
る。ぼくは、本人に対してもいつも同じ表現を使っているが、おおよそ松本零士原作
だと言いつづけている。ぼくは、絵、キャラクターには、まったく関わっていない
し、人物設定とも関係ない。従って、SF原案とでも呼べば、だいたい順当な役割だ
ろう。著作権となると、戦艦大和を使うとしたことも含めて松本がほとんどというこ
とになるが、ぼくが仮に20パーセントとすれば、藤川圭介が10パーセント、山本
暎一が10パーセントなど、法的には解釈が分かれるだろうが分割するわけにもいく
まい。四捨五入か五捨六入か知らないが、やはり松本をもっておおよそ著作権者とす
るのが妥当なところだろう。こうした裏事情に詳しくない一般のファンの認識でも、
『宇宙戦艦ヤマト』は、『銀河鉄道999』と並ぶ松本零士の代表作という位置づけだ
ろう。 (途中省略、なお赤字部分は本来は傍点が付けらていた部分)
西崎が果たした役割は、あくまでプロデューサーであり、クリエイティブな部分と
は関係ない。西崎は、もともとはSFにもアニメにも詳しくなかったから、知り合っ
たころはまだしも謙虚だったが、やがて自分だけで作っているかのように錯覚し、し
だいに傲慢になっていく。 (引用終わり)
うーん、ですね。
それでも裁判では西崎氏が勝訴し宇宙戦艦ヤマトの著作権は西崎氏のものとなり
西崎氏が亡くなった今でもその息子が著作権を譲り受けているらしく
そこから様々な利権が絡んで宇宙戦艦ヤマト2199や2202などのリメイク版や
実写版などがまたぞろ生まれているわけですからね。
いかに当時のアニメ業界が著作権など含めた契約が曖昧なままに
創られていたのかということなのでしょう。
それと、こんなことも書かれていました。 (以下引用)
ともあれ、『さらば宇宙戦艦ヤマト』と謳ったからには、これで終わりだと思って
いた。ぼくは、西崎との縁が切れたと考え、さっぱりした気分と、やや寂しい気分と
を味わっていた。 (引用終わり)
いや~、ボクも『さらば』で終わりだと思ったし、終わりにしましたよ。
この本を読んで一層、『さらば』より後はリメイク版も含めて
宇宙戦艦ヤマトではないと確信いたしました。
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コメント
高斎正とは懐かしい(^^♪
おおたけも以前はよく読んでました。
豊田有恒もよく読んでましたね。
投稿: おおたけ | 2019-04-27 18:17
おおたけさんも読んでましたか、高齋正。
もう30年ほど前の作品ばかりですが今でも本棚にあるので
また読み返してみようかな。
投稿: JET | 2019-04-27 18:50
ご紹介いただいたこの本の記述部分は、当時どこからか小耳にはさんだ情報と一致しているし、私の西崎氏への気持ちと一緒です。
「さらば」で綺麗に完結したお話をお金儲けのために改編した許すまじ人物と思い込んでいます。(^^;)
詳細が気になるので、購入して読んでみようと思います。
あと、高斎正という作家さんは知らなかったのですが、ググってみたら「レオーネ」を冠した気になるタイトルが!
こちらも購入してみたいと思います。
投稿: ぶらっと | 2019-04-30 23:57
>ぶらっとさん
「レオーネが荒野を……」はボクが高齋正の小説を読むきっかけになった本ですね。
実はボクも最近(といっても2000年代ですが)の高齋正の著書ってあるのかな、
とググってたらいつのまにか数冊ポチってしまいました(笑)
投稿: JET | 2019-05-01 05:33