「誰が天照大神を女神に変えたのか」を読了
左のはリイド文庫の「たけみつ教授の 面白すぎる日本神話と古代史の謎」
右のはPHP文庫の「地図で読む 『魏志倭人伝』と『邪馬台国』」です。
どちらもなかなか面白い内容でした。
今回読んだ「誰が天照大神を女神に変えたのか」は
それらの本と共通する部分もありつつも
本来男神であるはずの太陽神がなぜ天照大神は女神とされているのか?
という謎の解明に臨んだ内容となっています。
そう、世界的にも太陽神はみな男神であるし
日本各地の地方の古い言い伝えに残る太陽神はみな男神であるし
天照大神の原形とおぼしき神も男神であったとみなされているのです。
にもかかわらず、天照大神は女神とされているのはどういうことなのか?
これについては、ボクは以前にこんな本を読んで納得していたのです。
講談社+α文庫の「伊勢神宮の暗号」関 裕二 著です。
関 裕二氏の書いた本はその斬新な切り口が面白くてかなり読んでいます。
この本では、端的に言えば
女性である持統天皇が自らの正当性を示すために
天照大神を女神にでっちあげたとして、
その黒幕を藤原不比等としています。
もちろんこれは関 裕二氏の主張であって定説ではありませんが
関氏の本は歯切れよく言いきっている感があって
気持ちよく読めるので「なるほどそういう考え方があるのか」と思ってます。
100%真実ではなくともあながちいい線突いているとも思ってます。
それに対して今回の武光氏の本ではもう少し
時間的に長いスパンでとらえているようです。
これも端的に言えば天照大神を女神にした張本人は中臣氏であるとしており、
中臣氏は後に中臣鎌足が藤原姓を名乗り藤原鎌足となり
その子が藤原不比等なので関氏の主張ともつながる部分もあるわけですが
武光氏の考えでは日本書紀が編纂されていた持統天皇の時代より
200年ほど遡った継体天皇の頃にはその流れが作られていったとされています。
つまり単に女帝である持統天皇の正当化というか権威化のためではなく
もともと朝廷の祭祀を担当していた中臣氏がその自家の権威を高めるために
全国に旧来からあった男神である天照(神)などよりさらに格の高い
それらを統べる天照大神へと朝廷の天照神を昇格させたのだという説です。
ただ地方豪族の力もまだまだ強かったその時代に
そんなに簡単に女神の天照大神の話が定着するはずもなく
100年、200年かかって日本の正史としての日本書紀に書かれるまでになったと。
そして、そこには男神の天照神に巫女または斎宮としての女神が合祀されて
女神としての天照大神になるしくみ(考え方)が成り立つことや、
縄文時代の思想としての母なる恵みの大地としての
女性信仰なども寄与したであろうことなどまで触れられています。
なかなか壮大で面白い説だなと思いますね。
それと、へぇーと思った事は、
昔の日本人は当然ながら地動説なんて発想はないのですが
天と海はひとつながりのもので区別していなくて
どちらも「あま」という認識だったというのです。
漢字が入ってきて「天」と「海」と別々の字を充てることになったのだと。
それ故に、天の神も海の神も同一起源であってどちらも男神とのことです。
天の神=太陽神でありさらに火明命など火の神も起源は同じで、
また海の神から河川の神も同じでありさらには蛇の神も同じであろうというのです。
これまたなかなか面白い話です。
そう考えれば合点のいくことも多いですから納得しやすいですね。
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コメント
よく噂されるのはアマテルはもともと大和の饒速日系の神だったが、九州のニニギ系に王権を譲った。
引き換えにアマテル神をニニギ系の天皇にまつらせた。出雲と同じ構図です。
後に大和でのニニギ系の勢力が強くなり物部と仲が悪くなり、アマテル神を九州のオオヒルメに変えてしまったみたいな物もありますよね
投稿: deefe | 2018-11-07 20:31
>deefeさん
なかなか興味深い話ですね。勉強になります。
投稿: JET | 2018-11-08 04:57