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「邪馬台国は『朱の王国』だった」を読了

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文春新書の「邪馬台国は『朱の王国』だった」
蒲池 明弘(かまち あきひろ)著を読みました。

「朱の王国」って聞くと、朱塗りの建造物ばかり溢れていた都や集落の
世界だったのかと単純に視覚的な朱色しか想像できませんでしたし
どうしてそんなことが言えるのだろうかと疑問に思ったのですが、
ここでは単に色彩としての朱ではなく
鉱物資源としての朱の意味で用いられています。
つまり、朱=辰砂=硫化水銀(化学記号でHgS)であり
そこから得られる水銀のことでもあります。
丹砂、朱砂、単に丹とも呼ばれたそうです。

水銀と聞くと現代では水俣病などの原因物質であり
人間にとってやっかいな毒物という印象が強いですが、
大昔では不老不死の薬とか言われていたこともありますし
白粉(おしろい)に使ったり船や建物の木材の防腐剤であったり
金アマルガム(水銀と金の合金)の生成による鍍金(金メッキ)などに用いられ
金に匹敵するほどの高価な鉱物であったらしいのです。

その朱は基本的に太古の火山活動の結果として生成されるものなので
大陸や半島ではほとんど採掘されることはない一方で
日本列島には多くの朱の鉱床があったらしいことが分かっているそうです。

ただ、現在ではもうほとんどが掘り尽くされて枯渇しているとのことです。
現在というより北海道以外では大昔に枯渇してしまっていたらしいです。

そして、その朱の鉱床は九州各地に散在していたのと
奈良・伊勢に大規模な鉱床があったことが分かっていて、
最初に九州の朱の鉱床が掘り尽くされて
その後に奈良・伊勢と採掘されていったらしいのです。

その過程から九州→奈良(大和)への権力の移動が起こり
それが日本書紀に書かれている神武東征などと
なんらかの関わりがあるのではないか……と著者の推測が続きます。

なお、著者は考古学者とか歴史学者ではありませんので、
この本の冒頭でも以下のように断っています。 (以下引用)

 私は鉱物や鉱山の専門家でも、邪馬台国の研究者でもないのですが、火山神話にかかわ
る本を執筆したことをきっかけとして、火山の産物である朱の歴史にひきよせられ、この
本を書きました。仮説にもとづく一種の思考実験ですから、読んでくださる皆さまが、議
論の当否を判定するためのデータをできるだけ多く提供するよう心がけます。その流れの
なかで、私のアイデアも申し添えたいとおもいます。   
(引用終わり)

「仮説にもとづく一種の思考実験」というとらえ方がいいですね。

 

また、この本の帯にはでかでかと「邪馬台国はどこにあったのか?」
というベタな論争の設問が書いてありますが、
これについてこの本の中でも少し触れられてはいるものの
著者が「邪馬台国は○○にあった」と断言しているわけではなく
それについて自説を正当化する材料をあれこれを並べ立てているわけでもありません。

ただ上述のように、邪馬台国の時代は日本は朱の採掘・輸出によって繁栄していて
その中心は九州からやがて奈良(大和)に移っていったであろうということです。
そしておそらくその朱の利権(鉱床・採掘・精製・輸送など)を握っていたのが
邪馬台国であろうとしながらも、
それが旧勢力としての九州勢であったのか新勢力としての奈良(大和)なのか
それとも九州勢が奈良(大和)に移動していったのか
様々な可能性があるだろうとしています。

いやはや、これはとっても興味深い内容でそれでいて思考実験として
破綻なく整合性がありそれ故に説得力もある展開となっています。
この手の古代日本の本の中ではもっともワクワクしながら読めた本でした。

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コメント

丹色ですね。
アプローチとしてはおもしろいと思います。
この鉱物が戦争の原因だ・・という説もあったと記憶してます。

投稿: おおたけ | 2018-09-01 19:35

>おおたけさん

おぉっ、興味ありげですね。
師匠も是非この本読んでみてくださいな。
おもしろいですよ。

投稿: JET | 2018-09-01 19:41

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