早期リタイアのトドメは結局会社が嫌だったから
ボクは昨年の9月末に55歳で早期リタイアして
ずーと無職生活を続けているのですが、
その早期退職の理由については今までの記事でも書いてきたように
・会社が55歳役職定年制を敷いていたこと
・セカンドキャリア支援制度が利用できたこと
・東日本大震災(および計画停電など)がきっかけになったこと
・スバルがやっとまともとも言えるようになってひと段落と思ったこと
・電動化・自動運転など今後の車技術に興味が湧かなくなったこと
・会社に拘束されない個人の自由な時間や生活をもっと大切にしたかったこと
・さらには早期リタイアできそうな資金計画が見えてきたこと
などいろいろと挙げることができますしそれらが複合的な理由なのですが、
結局、決定打となったのはその時(セカンドキャリア支援制度に申し込みした時)に
出向という形で所属していた子会社のSTI(スバルテクニカインターナショナル)での
仕事が嫌だったからということにつきます。
個人的にはSTIで働くことは嫌で嫌でしかたありませんでした。
役職定年後はSTIに出向させられることになる可能性が高いと感じていたので
それが嫌で前もって早期リタイアを検討しはじめたということもあるわけです。
別にSTIがブラック企業なわけでもないですし
○○ハラスメントがあったわけでもないですし
STIという会社も社長も従業員の皆さんにも何も悪くはないのですが、
STIが嫌で嫌でしかたなかったと書くと誤解されそうですし
これをSTI関係者が読んでいると快く思わないかもしれないと考え
退職後しばらくは直接的な表現はしないように控えていたのですが、
休職期間も含めればもう1年以上も経ってますから
そろそろいいかなとも思って本音を書くことにしました。
STI と言えば既にWRCから遠のいて久しいですが
それでもスバルのモータースポーツを担っている会社ですし
一瞬で売切れになるような限定○○台とかの高額コンブリートカー(改造車)を
開発していたりする会社ですから
いわゆるマニアの方たちから見ればある意味
羨望の眼差しで見られる会社かもしれません。
実際、ボクがSTI在籍中に今年度の新卒採用者の
入社面接試験官をしたことがありますが、
多くの学生さんが学生フォーミュラやラリーなどのモータースポーツ大好きか
スバルWRXが好きすぎてたまらないってな学生さんばかりが集まってきてました。
またスバルの社員の中でもモータースポーツ好きとか
派手で目立つ仕事をしたい人などにとっては
異動したい憧れの部署(子会社)と受け止められているかもしれません。
そういうことを喋っていた人を何人も知ってますし
これまたスバル本体に入社希望している入社面接でも
スバルでラリーやりたいとか熱弁している人もいました。
(その時はまだSTIが新卒採用をしてなかった)
そこまでではなくとも、普通のクルマ好きくらいの人でも
モータースポーツとかを仕事にできるんなら面白そうとかカッコ良さそう
なんて思う人がけっこう多いのかもしれません。
ただ、ボクはそういうところこそ嫌だったんです。
まず、ボクがスバルに入社したときも実用量産車の開発がしたかったのです。
いくら学生時代に自動車部にいてラリーやダートラの真似事とかしていたとはいえ
それは趣味でお遊びの領域のことであって、仕事とはまったく別のことです。
それなのになぜか入社早々にヘンテコ部署に配属されてしまって
モータースポーツ業界やスバルのモータースポーツ活動の
あれやこれやのブラックな部分を散々と見させられた身としては
(現代はもう少しまともなんでしょうが)
仕事としてのモータースポーツの世界には戻りたくないのです。
30年ほど前にSTIに作業応援の時やその復帰のゴタゴタもけっして良い思い出ではなく
今はその頃とは雲泥の差があるとはいえども、やっぱり戻りたくないのです。
また、ボクの中では実用量産車とは価格もサイズも庶民的なクルマの類です。
STIのコンプリートカーはほとんどがWRXなどボクから見れば
重量級ハイパワー高額車をさらにモアパワーで超高額にしてと
とても一般庶民が手を出せるようなクルマではありません。
つまり、自分の欲しいクルマでもなければましてや友人に薦めたいクルマでもないのです。
ですから、STIのコンプリートカーもチューニングパーツも
どれもこれもボクのありたい姿の方向性とは180゜違っているです。
もちろん、仕事というものは好き嫌いだけで選べるわけでもなく
働いてそれでお金をもらうということは嫌いなことも
我慢してやらざるを得ないというのは正論としてあります。
実際、STI出向する前のスバルでの仕事だって
好きなことばかりだったわけではなかったわけですし。
ただもうお金はとこれ以上そんなに要らないよとなった時には
嫌いな仕事を我慢して続けるというモチベーションはなくなります。
でもそれ以上にSTIで嫌いなことを仕事にしていることは
耐え難いほどの苦痛だったのです。
どういうことかというと、前述のように一部マニアの間ではSTIは羨望の対象です。
逆に言えば、STIはそういう人を対象にして事業をしているわけです。
そしてSTIの社員(多くは中途採用)はSTIなりモータースポーツなりが
好きで入社してきた人がほとんどで、STIとしての誇りを持って
モータースポーツに携わっていることを粋に感じている人がほとんどです。
そういう人たちの中で、さらにはそういう純真な若い部下がいる中で、
自分だけが嫌々仕事をしているのが耐え難いほどの苦痛を感じていたわけです。
もちろん、嫌々仕事していると公言できるわけでもなく
かといってSTI大好きを演じるわけでもなかったのですが。
さらに言えば、STIは小さな会社です。
モータースポーツで勝つためには全社一丸とかにならなければいけません。
先ほどのようにお客さんはSTIに憧れ社員はSTIに誇りを持ち
そこには同じ「空気」が醸成されています。
それなりに大きな会社ではそこに「水」を差す役割の社員が重要になります。
でもSTIくらいの規模の会社ではその「空気」が見えない「ムラ」を形成し
「水」を差すことはマイナスにしかならなくなります。
そんな「ムラ」の中ではボクの立ち位置というか存在意義がないんですね。
むしろ、そのことに気づいたからこそ
なんの躊躇も未練もなく早期リタイアを決意できたんです。
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コメント
あ~あ 思い切って言っちゃいましたね(^^♪
でもJETさん 一貫して実用量販車って言い続けてましたものね。
投稿: おおたけ | 2018-08-30 17:56
>おおたけさん
いつかはちゃんと言わなきゃすっきりしませんからね。
投稿: JET | 2018-08-30 22:10
中にいた方しか分からない空気感が感じられました。
どんな業界でも、外から見たのと中身は違いますよね。
とまれ、JETさんは量産車開発に何台もかかわられたようですから、
クルマが世の中で走っている間は、自分の作品だと言えますね。
いいお仕事をされたのではないでしょうか。
投稿: よっさん | 2018-08-31 10:18
>よっさん
何やっているのか何の業種なのかよく分からないような会社の方が
そういう意味では仕事しやすいのかもと思っちゃいますね。
なおボクが関わったクルマにはやはりそれなりの思い入れはありますが
構想から発売まで関わったのは初代フォレスター、4代目フォレスター、
そしてエクシーガだけですからそんなに多くはないです。
4代目フォレスターとエクシーガは性能全体を見る部署にいましたが、
それでも自分の作品という感覚にはなりませんねぇ。
自分の理想や思ったように出来た部分はそんの僅かですし
とても多くの人の苦労の上に出来あがるものですから
一個人の作品という感覚にはならないと思いますよ。
投稿: JET | 2018-08-31 10:57
なるほど。作品という言い方は違っていました。
失礼しました。
クルマは多くの方々の仕事の集合体ですからね。
でも私としては、人々の記憶に残るいい仕事をされたと思います。
投稿: よっさん | 2018-09-01 00:11
>よっさん
ありがとうございます。
そうおっしゃっていただけると嬉しいです。
投稿: JET | 2018-09-01 05:37