「操縦のはなし」を読みました
今週末は隣町の群馬県桐生市では桐生八木節まつりが開催されていて、
今日の夕方には航空自衛隊ブルーインパルスの展示飛行が行われるそうです。
飛行隊長の福田氏が桐生市にキャンパスのある
群馬大学理工学部卒だからだそうですが、
だからといって八木節とブルーインパルスは全然関連ないんですけどね(汗)
ボクはそれほど自衛隊も曲技飛行も興味はないし
どうやら結構な人混みで溢れかえってそうなので
エアコンの効いた室内に籠っていることにしました(笑)
といいつつ、たまたまですがこんな本を読みました。
技報堂出版の「トップガンの実像 操縦のはなし」服部 省吾 著です。
この本は初版が1992年ですからもう25年以上前に書かれた本です。
¥1,800とそれなりに高額ですがたぶん
ブックオフで安売りしてたのを買って置いたものだと思います。
著者は航空自衛隊の所属経験があり
まぁいわゆるトップガンとかエースパイロットと呼ばれていた人のようです。
とは言っても、実際の戦闘経験があるわけでもないですし
逆に現在の最新鋭機の操縦経験があるわけでもないのですが、
いずれにせよこの本の“操縦”とは飛行機、中でも戦闘機の操縦に特化したものです。
まぁボクはそれほど戦闘機の操縦そのものに興味があるわけではありませんが、
現役サラリーマン時代にはひと時自動車の操縦性に関わる部署にいましたから
自動車の操縦性には興味があり何かそこに通じるものがあるかもしれないと思って
買っておいた本ということになります。
そのボクが現役時代のひと時にした部署では
自動車の操縦性(ハンドリング)と安定性(スタビリティ)をセットにして
操縦安定性、略して操安と呼んでいました。
操縦性と安定性はある面では相反する概念ですが
場面によってはあるいは見方によって相互補完する概念であったりもします。
またサスペンションのセットアップに際しては乗り心地も同時に考慮していきますから
操安乗り心地、あるいはさらに略して操安乗なんて言葉を使ってましたね。
この自動車の操安性の理論の元となっているのは実は航空機の理論なんです。
戦後、優秀な航空技術者が自動車開発に携わることになったからなのか、
というより日本だけでなく欧米でもおそらくそのような流れの中から
航空技術から自動車への技術応用が進んだからなのかと思いますが。
ただし、この本の中ではそのような理論(科学、物理、数学)の話はまったく出てきません。
まっ基本的なところは理解していたとしても
実践(戦闘だろうが演習だろうが)の場で飛んでいる最中に
そのような理論で計算しているわけではないでしょうからね。
そうはいっても、いきなりドッグファイトでの飛行戦術や
射爆撃の技術が出てきて華麗な空中戦のテクニックが解説されるわけでも、
逆にそのようなテクニックより精神的な哲学的なものに
終始されているわけでもありません。
戦時中の著名なパイロットの言葉なども引用しつつ
そのような精神的なものやテクニック論にもおよんでいるのですが、
戦闘機パイロットに一番大切なことはなにより
「敵より早く敵を見つけること」だと書いてあります。
要するにドッグファイトなんてやらずに
敵に忍び寄って奇襲して一撃でしとめるべしということです。
なるほどですが、そういう視点から“操縦”といわれても実践すぎて
自動車の操縦に通じるものはなさそうです。
けれども、自動車開発の仕事などでテストコースを走行するときなどは
まさしくこの「他の走行車両を早く見つける」ことが重要なのです。
こじつけ感がありますけどね。
自動車の操縦性のデータ計測や官能評価(フィーリング評価)では
テストコースの幅をいっぱいに使うような急な車線変更をしたりするのですが
その時に後方から速い車両が近づいてこないかどうかを常に見ていないといけません。
6割から7割くらいは後方に意識を傾けているくらですね。
ちなみに、テストコースでは原則速く走っている車両が優先です。
なので、一般道や高速道路を走ってる時でもその癖で
常に後方車両を意識するようになってますし、
後方から速いクルマが近づいてくれば必ず進路を譲る癖もついてます。
逆に後方をまったく見てないドライバーは信じられませんね。
この周りをよく見るって、実はサーキット走行でもかなり重要なことだと思います。
ただ、お遊びレース(もどき)なんかではそんな教育もされてなくて
目を三角にして前しか見てないドライバーも多くてとっても怖いんですけどね(汗)
戦闘機の話より自動車の話が多くなってしまいましたが
それはボクが自動車の操縦に何か通じるものがないか
という観点で読んでるので仕方ないと思ってください(笑)
他にも航空機ではトリム調整が重要でこれをいかに巧く使えるかで
編隊走行のやりやすさも燃費(航続距離)も射撃の精度も左右されるそうです。
トリム調整とは中立位置の微調整とかの意味だと思いますが、
ラジコンとかやってる人ならプロポにも付いているので理解しやすいでしょうね。
自動車では整備の時に調整することは出来ても走行中に
ハンドルの中立位置やアクセルのゼロ位置を調節することは
普通できませんからそのまま通じることではありません。
ただ、自動車の運転でもこのトリム調整の概念は非常に有効だと思います。
特に高速コーナーでハンドルを小刻みに動かさないと運転できない人とか
一定速度で走ることが出来ずに常に加速減速を繰り返してしまう人などは
このトリム調整の概念がまったくないからだと思いますね。
それに合わせて本書では操縦桿の操作についても
「直線飛行や緩やかな旋回は指の圧力で、急旋回やアクロバットは掌の圧力で行う。
映画のシーンのように、操縦桿を握りしめて、いきなり10センチも20センチも
ぐいっと動かすことはまずないのである。」と書いてあります。
これって自動車の運転でもそのまんま当てはまりますね。
ハンドル操作も同じですしアクセルペダルの操作でも同じですね。
結果的に肘や肩、あるいは足首や膝を動かしているとはいえ
意識の上では指や掌、足裏の圧力を感じとって
それをトリム調整するかのごとくずらしていくようにしないと
スムーズな運転はできませんからね。
そして、そのような運転をしないと正確なデータ計測もできませんし、
どんな操作をしたら車両がどんな挙動をしたのかの分析もできませんから
自動車開発のためのドライバーとしては失格になってしまいますから。
他にもこじつけまがいでもクルマとの共通点や
一方で目から鱗みたいな航空機ならではの操縦技術など
いろいろあって面白い内容の本でした。
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コメント
JETさんに「スバルの実像 操縦のはなし」という本を書いてほしいです。
上手い人の公道の走り方を見習いたいです。
投稿: ぶらっと | 2018-08-06 18:31
>ぶらっとさん
いやーボクはそんなにクルマの運転上手くないですから。
それに、公道でもけっこう事故ってますしね(*_*;
投稿: JET | 2018-08-06 18:53