新書「海賊の日本史」を読了
講談社現代新書の「海賊の日本史」 山内 譲 著を読みました。
この本の冒頭にはこう書かれています。(以下抜粋)
これから、日本史上に現れる海賊の歴史をたどってみようと思う。
だがじつは、これがなかなか簡単ではない。海賊についてのイメージが読者によってか
なり異なっているのではないかと想像されるからである。 (中略) したがって海賊を
パイレーツのイメージに当てはめてみるのは正しくないということを、最初に断っておき
たいと思う。
このことを言いかえると、現在使われている海賊のいう言葉には二つの意味があるとい
うことである。一つは、日本史上の実在する海上勢力を指す場合であり、もう一つは、そ
こから派生して、パイレーツを含めて世界各地に幅広く存在した、あるいは今なお存在す
る、海上で非法行為をなす武装勢力を総称する場合である。この混乱を避けるために、本
書では後者を<海賊>と表記して前者と区別することにする。
(抜粋終わり)
もちろん、本書のタイトルが「海賊の日本史」となっているのだから
パイレーツ・オブ・カリビアンやONE PIECEと混同する人はいないでしょうね。
ボクは海賊というより縄文時代以前の日本の海民という意味での
歴史に興味があってこの本を手に取ったわけです。
でも、著者は文献資料から海賊を研究しようという手法をとっているため
自ずと文献資料がある時代以降、つまり戦国時代以降が主な対象になってます。
少しは遡った考察があるかなと期待しつつ読み進めたのですが
残念ながらそこにはあまり言及されてませんでした。
まぁそれでも興味深いところもそれなりにありましたけどね。
整理されていて分かりやすいなと感じた部分としては
海賊を4つのタイプに分類しているところです。
①土着的海賊……海上船を襲い金品を奪う略奪者としての海賊
②政治的海賊……政治権力に従わずに歯向かう故にに海賊と呼ばれた集団
③安全保障者としての海賊……通行料など徴収するものの航海の安全を保障するもの
④水軍としての海賊……時の権力とかかわりを持つ水軍
そして、①と②はマイナスイメージの海賊、③と④はプラスイメージの海賊、
また、①と③は海上交通との関係があり、②と④は権力との関係性の海賊とも言えるとし、
4象限マトリクスで捉えられるようになってます。
理系人間はこういう整理に納得しやすいんですよね(笑)
もっとも、①土着的海賊はチンピラみたいなもので、
②政治的海賊はテロ集団みたいなもので、
③安全保障者としての海賊はショバ代要求する暴力団みたいなものだし、
④水軍としての海賊は山賊が武士集団になるのと同じようなものでしょうね。
なんにしてもこれらの海賊がどのように変遷しつつ
日本の歴史とどうかかわってきたかとか、
西の海賊(瀬戸内海の海賊、熊野や伊勢の海賊)や
東の海賊の違いなども含めて解説されています。
全体的よく整理されていて分かりやすい内容になってました。
| 固定リンク
コメント