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小エビ・ブレーキ考

3輪車(トライク)の中でも前2輪/後1輪のものは
ブレーキングに関しては基本的に有利であることは数年前にも書いたわけですが…

小エビと呼んでいる変態三輪自転車であるワイカ・ファン2トップに関して言えば
フロントサスの設計ミスにもまして
ブレーキはもっと設計ミスじゃないかと思うわけです.
いや昔から常々思っていてずーと前にも少しその話題に触れました.

メーカーの謳い文句では「前二輪でブレーキ掛けるからしっかり止まれる」
みたいなことが書かれていますが,
実際は非常に癖のある危険なブレーキとなってしまっています.

先日,小エビが失踪した時,つまり泥棒が盗んで乗って行った時には
犯人は丁字路にさしかかって前輪ブレーキをぎゅっと掛けたら…
ハンドルとられてすっ転んでしまい,
こんな自転車乗ってらんねぇよとなってその場に乗り捨てた,
というのがボクの勝手な想像なんですが
あながち外れてはないだろうし
そのくらい癖の強いやっかいなブレーキになっているんですよ.

では,もう少し整理してみましょう.

小エビのブレーキ仕様は,
前輪には左右それぞれ唐沢製作所のバンドブレーキが付き,
後輪にはシマノのローラーブレーキが付いています.

B150729_04
バンドブレーキというのは今でも格安ママチャリの後輪に装着されているもので,
C字型のバンドがブレーキシューとなってドラムの外側から巻きつくことで
ブレーキがかかる構造になってます.
バンドは薄いステンレス板のためブレーキかけると振動してキーキー鳴き易く,
鳴き出したら調整しても収まらず交換するしか根本解決はないというシロモノです.

バンドの巻きつく方向とドラムの回転方向とによって自己倍力作用が働きます.
つまり,前進時は弱いブレーキレバー操作でも急激に強いブレーキ力を発生できますが,
逆に後進時,自転車は後進することはありませんが
坂道で後ろに下がるのを防ぐ時などではほとんどブレーキが効きません.

自己倍力作用は弱いレバー操作での強いブレーキ力が得られるという点では
一見良さそうですが,リニアな効きという点ではマイナスになります.

キーキー鳴くのも嫌われるのでもうちょっと高級な自転車向けには
同じ唐沢製作所からもサーボブレーキというのがラインナップされています.
これは自動車のドラムブレーキとほぼ同じ構造で,
2枚のブレーキシューをドラム内側から押し広げるようになってます.
こちらはほとんど鳴かないようですが自己倍力作用は同じようにあります.
まぁそれでもバンドブレーキよりはコントロール性がマシと思われますが.

B150729_02
次に後輪のローラーブレーキですが,こちらは世界に名だたるシマノ製で
シマノ内装3段変速とともに多くの普及帯のママチャリに装着されています.
前出のバンドブレーキとサーボブレーキは互換性がありますが,
ローラーブレーキはシマノの専用のハブとの組み合わせになるので
ハブとセット交換,つまり車輪ごとの交換かリムのスポーク組みが必要になります.

このローラーブレーキはグリス封入された中で
金属コマがドラム内側を押し広げる構造になっています.
鳴きの発生もなく(グリス切れの時に音がする)
密封構造なので雨に塗れても制動力は落ちません.
なによりも自己倍力作用がないので効きはリニアでコントロール性が良いです.

と良いことづくめのようですが要は効きがあまり良くないんですよ.
しっかりブレーキレバーを握らないと効かないわけです.
まぁママチャリでのんびり走るくらいなら全然問題はないレベルですが,
高速からとか急な下り坂とか荷物満載(さらにトレーラー牽引)は厳しいわけです.

B150729_05
この左右前輪/後輪ブレーキの組み合わせでどうなるかというと
鳴く鳴かないという点では前輪にバンドブレーキを使っているのでいずれ鳴きます.
現に前輪ブレーキを強めに掛けると少し鳴きます.

それよりも,前輪のバンドブレーキは自己倍力作用があるため
あるところから急にブレーキ力が強くなります.
これが左右釣り合っていればそれほど問題ないのですが,
どんなに調整しても左右の不均衡が生じてしまい,
するとブレーキ力の強い方に一気にハンドルが取られます.

それでも油圧ブレーキなら油圧は左右均等にかかりますし,
自動車のハンドブレーキのようにイコライザー(天秤のような機構?)があれば
ワイヤーを引く力は左右均等になるのですが,
残念ながら小エビにはそんな設計配慮はされていません.

最近は調整を怠っていましたから盗難にあった時は
少し強めにブレーキレバーを握ると一気にハンドルがくるっと回って転ぶ状態でした(笑)
ボク自身は分かっているのでほとんど前輪ブレーキは使わないで走ってたので
転ぶことはなかったのですけどね.

ワイカ・ファン2トップの前身のランドローバーとか呼ばれていた製品は
前輪は左右独立のディスクブレーキがおごられていたので
自己倍力作用はなく左右アンバランスの問題は大きくなかったと思われます.
ただ,それではママチャリとしてはあまりに高価なブレーキですから
なんとかコストダウンを図ろうとしてバンドブレーキに換えてしまったのでしょう.

小エビの前輪サスの構造からしてフォークがないので
リムに両側からシューを押さえつけるタイプ=普通のバイクの前輪に付くような
キャリパーブレーキやVブレーキやカンチブレーキは採用できないので,
ディスクブレーキ,バンドブレーキ,ローラーブレーキなどにせざるを得ないわけです.

ではディスクブレーキは高すぎるとしても
ローラーブレーキにしなかったのはどうしてでしょうか?
察するにローラーブレーキは普通後輪の左側に取り付けるように作られいるわけで
それを前輪の左右に対称に取り付けるのが困難だったのではないでしょうか.

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そんなのはバンドブレーキだってそうじゃないかと思われるでしょうけど,
なんと唐沢製作所のバンドブレーキは車椅子用にも提供されていて
これだと左右対称の製品があるようなんです.
おそらく,小エビにはその車椅子用のものが(少なくとも左輪には)
取り付けられていると考えられます.

ただねぇ,車椅子のブレーキって高速で走って制動するためじゃなくて
パーキングブレーキ的に使用するのだから
左右バランスとかリニアな効きはあまり要求されないんですよねぇ.

 

そして,そのやっかいな左右前輪のブレーキに対して
後輪ブレーキは効かないローラーブレーキなわけです.
普通の感覚で左右のブレーキレバーを握ったら
後輪は全然効かずに減速感がなくあわてて前輪ブレーキ強く握ったら
前述のように左右アンバランスですってんころりんというわけです(爆)

しっかり止まろうとしたらあっという間に転んでしまうようなシロモノなわけです.
もちろんかなりしっかりと調整されていればそれなりに安全に止まれますが,
それでも高速走行ではかなり危険が伴うのは事実であり
これは基本的な設計が間違っていると言い切ってもいいかと思ってます.

ちなみに,エビちゃんことピアジオmp3は同じように
傾けで曲がる前2輪/後1輪の3輪車ですが,
3輪ともに油圧ディスクブレーキです.
ABSや前後連動ブレーキなど複雑なものは付いていませんが,
油圧なので左右前輪のバランスは取れてますし
ディスクブレーキなのでコントロール性も難はありません.

そもそも急制動すれば前荷重になるので前ブレーキが主体となります.
が,二輪車で前輪ロックしてスリップすれば即転倒となってしまうので
急制動はそこが難しいわけです.
一方,前2輪の3輪車は前ブレーキは2個で強力ですし
前輪ロックしても転倒しにくいので(絶対転倒しないわけではないですが)
かなり強力にブレーキがかけられるもんなんです.

なのにこの小エビは重要な前ブレーキに
安物バンドブレーキなんかを付けちゃうという
確信犯的設計ミスを犯しているんですから
こりゃもう犯罪に近いですよね.

さてさて,何かいい対策はあるのかな?
(って今頃になって考えてるのもなんですけどね)

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