以前のここの記事に対するコメントで,
エクシーガのデザインについて振られたので,ちょっと書いてみようと思います.
とは言え,ボクはデザイン論を語れるようなその筋に精通した人間ではないので,
あくまでも私見でしかありません.
しかも,この車のデザイン関係者もユーザーも知っているし,
そもそもボク自身が直接デザインに携わっていなくとも間接的には関係者なので
スバリ言うわけにはいかないんですけどね.
エクシーガのデザイン(外観スタイリングだよね)に対する辛口批評を大別すると,
(1)ミニバンらしいワンモーション・フォルムでない
=Aピラーが立っていてボンネットが長い.
(2)レガシィに似すぎていて(かつ,レガシィよりバランス悪い).
(3)新しさがない.
(4)キャラクターラインやレンズカットや青いライン(笑)など細部が気に入らない.
ってところでしょうか.
スバルってのはスバル360やスバル1000がそうであったように,
中に乗る人から車をデザインするのが基本的なアプローチ(であるべき)だと考えてます.
着座姿勢,居住空間,視界などの要件,
しかもそれは住宅などの静止した状態の空間ではなく
あくまでも自動車として移動する空間としての要件をきっちりと押さえた後に
残り代をスタイリング要素として使うというアプローチなわけです.
自動車を購入する際に最も影響あるのが外観というのは理解しつつも,
だからと言ってただ見栄えのためだけに
人が乗って移動するという自動車の基本を疎かにしてはならないというのが,
スバルの無骨で垢抜けない魅力だと思ってます.程度問題ですけどね(笑)
(でも,R2&R1,トライベッカ,旧くは初代レックスやレオーネ
などはそんなアプローチで創られていないので,
ボクとしては全く認めたくない車です.
現行のレガシィも微かにそういう部分がありますね)
それに加えて,このエクシーガの場合は
悲しいかな様々な社内事情による制約もあります.
それはどこの自動車メーカーでもあることですが,
企業規模が小さく販売力も弱いスバルにとってはその制約は凄く大きいです.
だからこそ,今までなかなかスバルがこの手の車を作り出せなかったわけですから.
つまり,フロント周りの骨格をフォレスター(←レガシィ)をベースにしているのだから,
自ずとレガシィ的なシルエットになってしまいがちなのは無理からぬことです.
そういう点ではデザイナーには同情してしまいます.
でもねぇ,色んな制約があるのは仕事では当たり前.
そういう制約の中でどうブレイクスルーできるかが本当のプロの仕事なんだと思うんですよね.
残念ながらそれは出来なかった.
というより,ほとんどやろうというチャレンジはなかった.
いくらデザイン画(CG)でのユーザークリニックで
レガシィ似の案が好評だったという結果があったとしても,
それはそれ以外の案のレベルがあまりにも低かったことの表れだったのでしょう.
レガシィ似とはいっても,
7人を快適に乗せるという要件がある以上はレガシィよりは屋根も高いし,
リヤゲートもサイドガラスも立てなくちゃならないから,
結局「メタボ・レガシィ」みたいに見えてしまうのは必然です.
スバルは人からデザインすると前述したけど,
デザイン部門の人間からすればそんな理念よりも
セクショナリズムが優先されがちになって,
何故かひと晩明けたら(某デザイン部長の鶴の一声で)
デザインモックの屋根が低く削られていたなんてことも…まぁ,苦労させられましたよ.
結局は,キャラクターラインを入れたり,面をうねらせたり,
色をつけてみたりとデザイン技法でなんとかしなきゃいけなくなって,
終いにはごちゃごちゃした印象になってしまったんですね.
個人的にはやはりもっと初期の段階で制約条件を昇華して
新たなスタイリング提案をして欲しかったという気持ちはありますが,
見ていて拒絶感・嫌悪感を感じるほどのエグいスタイリングではないので
まぁ良いんじゃないかと思ってます.
そもそもスタイリングで勝負する車ではないですからね.
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