ちょっと前からスバル・フォレスターの“10th ANNIVERSARY”という
特別仕様車が発売されているようです.
確かに初代フォレスターは1997年の2月13日が発表なので,
ちょうど10年前の今日発表されたことになります.
個人的には縁深いクルマなんですが,
このフォレスター 実は企画当初は2代目インプだったんですね.
でも,初代インプは売れない・儲からない失敗作だったので
(その後,フルモデルチェンジの機会を逸したインプはWRCの追い風と
減価償却した格安バージョンによって,失敗作のレッテルを逃れることになるが),
キープコンセプトとはいかずに違った道を模索することになったわけです.
で,アメリカからはチェロキーを作れ,
日本からはRVRスポーツギヤとかハイラックスサーフを作れ,
極めつけはヨーロッパからランドローバーをなんて声があがってくる始末.
だって,当時はRAV4もCR-Vも無く,ライトクロカンなんて言葉もなかったからねぇ.
上司もその上の上司も周りの偉い人たちも,
どこの馬の骨だか分からないような車には全く興味が無いらしく
(要は目立つ仕事じゃないし,出世には役立たないってことだね),
完全に放任状態,というか責任取りたくないから見て見ぬ振り状態.
でもボクはそれをイイ事に全然自分の仕事の領分じゃないのに,
テールゲートに背負ったバカ丸出しのスペアタイヤや殺人グリルガードを止めさせたり,
カタログの最高出力落としてまで実用トルク出させたり,
スバル車としては相当に静かにしたりと
一介のハンドリング&乗心地の実験屋にしてはかなり好き勝手やらせてもらいました.
何せ,誰もがどんなクルマにしたらいいかについて自分の意見すら持てない状態だから,
言ったモン勝ちってとこだったね.
今でこそ,“Best of Both” .
乗用車と(トラックシャシーベースの)クロカンヨンクとの良いとこ取りなんて言っているけど,
これは後からでっち上げたキャッチコピー.
ボクの考えはちょっと違ってたんだよね.
ここで乗用車って言うのは,この会社に勤めている人にとってはレガシィとインプなわけです.
が,当時は猫も杓子も280ps状態に入りつつあったレガシィもインプも
まともな乗用車なんかじゃなくて,
乗り心地悪くて真っ直ぐ走らない気難しくて楽しくない車,
普通の人にとっては良いとこなんて何処にも無い.
だから,フォレスターはアンチGT-BでありアンチWRXなんですね.
一方,いわゆるRVだのSUVだのが流行りだした頃だったけど,
ああいうデカイ・重い・なによりも他人を見下し・威嚇するような車って大嫌いなんですね.
そういう根性で乗ってる人間が大嫌いなんですな.
まぁ,チェロキーは良い車だし,ランドローバーも味わい深い車だし,
すべてのSUVユーザーがそうだとは思ってないけど.
だから,フォレスターはアンチRVもしくはアンチSUVなんですね.
言い換えれば,普通の人が普通に気兼ねなくリラックスして運転できる車,
これが狙いだったんです.
サーキットでタイムアタックするわけでもなし,
海山に分け入って自然破壊するわけでもなし,
移動のために作られたあらゆる道をいかに安全に安心して安楽に走れるかが狙いだったんです.
だって,スバル360にしてもスバル1000にしても,あるいはレオーネ4WDにしても
スバルの車造りの原点はそこだからね.
だから,最初からボクは女性と中高年がターゲットユーザーだと考えてました.
アメリカやヨーロッパでは正しくその読みどおりとなりましたが,
日本では当初ターボエンジンのみのスポーツ性を前面に出した売り方となってしまったため,
二極化してしまったようです.
レガシィが売れなくなると困るからフォレスターはとにかく若い人に売りたいというのが
売る側の論理です.
それに騙されて勘違いした運転下手な自称走り屋さんは
「こんなにロールする柔な足じゃ走れん」と騒ぐことになるわけですが,
そりゃそうだよ想定外のユーザーだし,そんなヤツに乗って欲しくないからねぇ.
てな誤算(それでも覚悟はしてたけど)もあったが,
フォレスターが発売になってからレガシィの販売台数はガクっと落ちましたからね.
その前年にフォレスターの開発費と同規模の多額の金を掛けてマイナーチェンジをして,
280ps,45タイヤ,ビルシュタイン・サスで売れに売れたはずのレガシィが
売れなくなってしまったんだから会社は慌てたんでしょう.
でも,レガシィが売れなくなった真の理由は消費税値上げ前の駆け込み需要が終わった
だけのことで,それ前は大金使ってマイナーチェンジなんかしなくたって
世の中みんな売れたんだよね.
それでも,その時280ps,45タイヤ,ビルサスの三種の悪器をやった人が
副社長まで成り上がって未だに威張ってるんだから呆れるねぇ.
グチついでに,当時のスバルは新型車を売り出すときには
何か「世界記録」なる勲章が無いとダメとかいうことになっていて
(勲章が欲しかったのは関係者自身が目立って出世したい為なのだが),
フォレスターでもインディ500で有名なインディアナポリスのサーキットで
世界速度記録を樹立しようということになりました.
こんな馬鹿げたお祭りなんかやりたくないし,
フォレスターのコンセプトにはそぐわないのでボクは大反対をしていたんだけど,
ここで突然ボクの上司がしゃしゃり出てきていつのまにやら世界記録挑戦の隊長面して,
挙句の果てにフォレスターは自分がやってきたみたいなことを言い出す始末.
スイカ泥棒ってやつですな.
と,脱線&グチになってしまったけど,
10年越えて次のフォレスターはどんな車になるんでしょうねぇ.
もう一度ゼロからコンセプトを考える時期に来ているんじゃないかとは思いますけどね.
おまけ動画をこっそり載せますね.姿形は違うけれど中身はフォレスター,運転手はボクです.
こう見えても大抵の道と言われる道は走れるんですよ.
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