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新書「不死身の特攻兵」を読了

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講談社現代新書の「不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか
鴻上 尚史(こうかみ しょうじ)著を読み終えました。

帯に書いてあるように
1944年11月の第一回の特攻作戦から、9回の出撃。
陸軍参謀に「必ず死んでこい!」と言われながら、
命令に背き、生還を果たした特攻兵がいた。

というのです。

その特攻兵、佐々木友次さんが2015年時点で存命であることを知った著者が
面会インタビューをしたり情報収集したりした内容がこの本に書かれています。
著者は他にも佐々木友次さんを扱った「青空に飛ぶ」という小説を書いているのですが
この本は小説ではなくノンフィクションという形となっています。

特攻兵に命じられ9回出撃し9回生還した当時の経緯から
面会インタビューでのやりとりまで書かれていますし、
最後には特攻とは何だったのかその実像を著者の目線で迫っています。

特攻隊というと予科練出てすぐとか学徒兵など操縦技術も未熟なパイロットが
自ら志願したり命じられるがままに出撃していったと思いがちですが、
最初の特攻では絶対に失敗は出来ないということで
かなり優秀なパイロットが厳選されて命じられたとのことです。

佐々木友次さんもその最初の特攻兵として命じられたものの死ななかったわけですが、
死ぬのが怖くて逃げ回っていたわけではなくしっかりと戦果をあげているのです。
もちろん、運が良かった(佐々木さんはそれを“寿命”と語ってます)こともあるし
仲間に救われたこともあります。

それでも、佐々木さんが生き延びることが出来たのは、
「人は簡単には死なない(死んではいけない)」という信念と
飛行機で突っ込むより爆弾を命中させた方が戦果が大きくなるという真実を理解していて
さらにそれを実行できる卓越した操縦技術を持っていたからのことでしょう。

当時の精神論・根性論だけの日本軍において
死を突き付けられながらも冷静で理性を持ち続け
それを貫き通したのはなんといいますか奇跡のような人だと思います。
おそらく生き続けるより死を選ぶ方が楽な状況で
敢えて生きることはさぞ辛い選択だったでしょう。

 

補足すると、軽合金で極力軽く造られた飛行機にいくら大量の爆薬を抱えて
戦艦や空母に突っ込んでも装甲板は破れないから威力はなく
爆弾だけを命中させた方がはるかに大きな威力を持つということです。
そりゃそうですわな。

なので、実際にきちんとした装甲板を装備している米軍の
空母、戦艦、巡洋艦の特攻隊による撃沈・撃破は皆無であって、
撃沈・撃破したのは民間船を改造した駆逐艦とか掃海艇や輸送船しかなかったようです。

また、命中率もかなり低くて特攻初期でも10%程度しかなく
パイロットのレベルが落ち飛行機の整備もままならなくなった沖縄戦になると
5%ほどしかなかったと分析されています。
そもそも突入する前に敵戦闘機に撃墜されたり
機体不良で不時着事故になる機体も多かったでしょうから
ほとんどの特攻は失敗し大きな戦果は得られなかったことになります。

しかし、それなのに当時の軍は特攻の戦果を誇大報告し、正当化し、
一方で特攻兵を軍神として讃え日本国民を鼓舞させたわけです。

 

著者は最後の章でこんなことを書いています。(以下抜粋)

 ですから、特攻隊員を「英霊」「軍神」と無条件で讃える言い方も、僕は気をつけない
といけないと思っています。そういう言い方によって、「命令した側」の存在が曖昧にな
ってしまうからです。「英霊」「軍神」と褒め讃えると、そんな特攻隊員を生んだ「命令し
た側」も評価されるイメージが生まれるのです。
 特攻隊員の死は、「犬死に」や「英霊」「軍神」とは関係のない、厳粛な死です。日本人
が忘れてはいけない、民族が記憶すべき死なのです。 
   (抜粋終わり)

このようなスタンスはとても大切ですね。
この前に読んだ本とは違ってこのようなスタンスには共感を持ちます。
さらには以下のようなことも書いてあります。(以下抜粋)

特攻が続いたのは、硬直した軍部の指導体制や過剰な精神主義、無責任な軍部・政治家
達の存在が原因と思われますが、主要な理由のひとつは、「戦争継続のため」に有効だっ
たからだと、僕は思っています。戦術としては、アメリカに対して有効ではなくなってい
ても、日本国民と日本軍人に対しては有効だったから、続けられたということです。

                                             (抜粋終わり)

ここで「日本国民」と書いてあることがとても重要だと思います。
特攻兵はけっして「軍部上層部」の一部だけの暴挙ではなく
多くの報道がそれを後押しし多くの国民がそれを受け入れたわけですし
昭和天皇もそれを止められなかったわけです。
それは当時の「空気」だったと言えばその通りなんでしょうが
その「空気」を作り「水」を差さなかったのは日本国民そのものだったのですから。

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