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エクシーガの生産終了のお知らせに思う

今年のアメリカ・ロサンゼルス・オートショーで
3列シートSUVのスバル・アセントが発表されましたね。
その陰でひっそりと(?)国内専用3列シートの
スバル・エクシーガ・クロスオーバー7生産終了のお知らせが
スバルのオフィシャル・ウェブサイトに掲載されています。

それによると、
 新規注文は12月18日(月)までで以降は在庫販売のみ、
 生産終了は来年3月末となっています。

今はクロスオーバー7という名前が付いていますが
中身は2008年6月に発表されたエクシーガそのものですから
10年間まであと少しというところで生産終了になっちゃうんですね。

このエクシーガは
ボクが現役時代に車両研究実験総括部という部署に異動して
初めて携わったクルマになります。

車両研究実験総括部というのは新車開発にあたっての
実験部門をとりまとめるというと偉そうに聞こえますが、
例えば燃費、衝突安全、動力性能、ブレーキ、乗り心地、振動騒音…
など様々な性能実験を担当する部署間の性能バランスの調整をしたり
実験車両のやりくりや日程進捗を図ったりしていく部署ですが、
スバルではクルマの目標性能を提案するのもそれを実現するのも実験部門ですから
それをまとめるということはクルマそのものの性能全部に携わることになります。

スバルでは車種開発プロジェクトチーム(略してPT)制を採用しており
それぞれのクルマの開発毎に各部門の代表メンバーが集まってPTを作りますが、
車両実験総括部からPTメンバーになるということは
そのクルマの性能全体に責任を持つということと同意になるので
それ故に初期の企画からメディア対応など市場導入イベント支援などまで
一貫して携わるということになります。

そのためもあり、このエクシーガについてはいろいろと思うところもあり
今回の生産終了のアナウンスについても感慨深いところがあります。

ただしその辺りについてはこの時の記事にたっぷり書いちゃったので
(現役時代としてはちょいと書き過ぎた気もしてますが…)
今さら書き足すことも残ってないから今日は小ネタ紹介でもしましょう。

 

まず、このエクシーガの開発符号はYS4でした。
開発符号は意味のない記号の羅列ということになってますが
実は名付け親はちゃんといて「ヤスイヨン」の意味でした(笑)
なかなかいいセンスのネーミングだと思いました。

もっとも販売価格を安売りしようという意味ではなく
スバルの販売規模でも採算割れしないように
開発投資を安く抑えましょうという意味ですね。
それまでのスバル・ミニバンがことごとく企画倒れしていた理由のひとつが
開発投資と採算性の問題でしたからね。

 

このころのスバルは脱プレミアム、脱走り(オタク)の過渡期と考えられ
家族向け多人数乗りのエクシーガはその象徴でもあったわけですが、
社内外には抵抗勢力やなかなか意識を変えられない人々も多くて
そういう部分での衝突・葛藤に苦労されられました。

足踏みパーキングブレーキじゃサイドターンが出来ないとか
スバルにはFFなんて要らないとかガラスルーフなんて走りがスポイルするとか…
でもクリニックや社内の子育てママさんの方々の声を聞くと
サイドブレーキなんか邪魔でハンドバックが置けないとか
日常使いにAWDなんて要らない(地域による)とか当然のように出てくるわけですよ。

そこで、ボクは設計7部署からそれぞれ子育てママさんを代表として選出してもらって
仮称「チーム・マダム7」を結成して彼女たちの意見を直接反映していきたいと
とあるDR(デザイン・レビュー)でぶち上げて
その場では賛同の雰囲気だったのですが…
“マダム”の単語にひっかかったのか実現しなかったのが残念でしたね(笑)

たぶん、スバルって女性エンジニア比率が業界最下位レベルじゃないかな。
だから男臭いクルマばっかりできるんでしょうし
それが良い面もないわけではないですが
やはりどうしても苦手な分野もでてきてしまうんですよね。

それから、クルマの開発が終盤に近づいてくると社長以下役員さんたちが
発表・発売に向けてあれやこれやの総合的な進捗状況を審査する場があり、
そこでは開発試作車(本当は試作車とは呼ばないですが)にも
テストコースで試乗するんですが、
多くの役員さんが普段は自分でクルマ運転してないのに
ここぞとばかりタイヤ鳴らしたりアクセル全開でぶっとばして走るんですよね。
まだ脱走り(オタク)ができない役員さんもいたわけです。

このエクシーガはそういうクルマじゃないでしょというわけなので
この日記のように「みんな笑顔で 楽しくドライブ」なんて
電光板標示してもらったりしたのも思い出です。

また、ハンドリングコースのコーナーにこのアンパンマンを置いたのもボクでした。
他メーカーのミニバンはAピラーの死角が大きくて子供が見えないのに
エクシーガはちゃんと確認できるでしょってのを体感してもらうためですね。
スバルは元々こういう安全のための視界の確保など
基本的なところを愚直にしっかり守って作るメーカーで
それを今ではきちんと発信してある程度認知されてきていますが、
当時は役員も販売会社の重役さんも理解が進んでませんでしたから。

 

それでも、一番の思い出と言えばやはり両脚MPSで入院して病み上がり状態での
国内仕様エクシーガをそのままアメリカ出張して走らせてきたことです。
これは国内専用(後に一時期オーストラリアにも輸出してましたが)の
エクシーガを発売前にアメリカで走らせてそれを
スバル・オフィシャルWebページでティザー広告として披露しましょうという企画でした。

いちおう、国内専用車でも世界中の様々な環境で使えるよう試験してますよ表現とか
国内では機密やら撮影許可やら難しいのでアメリカで撮影したことが
表向きの理由になっておりますが、
実は某大物ハリウッドスターのJ.D.氏が関係していたのです。

エクシーガのTV-CFとして彼と超高額契約をしたのですが、
日本まで行って撮影なんかしたくないからクルマをアメリカに持って来い
と我がままを言われてしまいしかたなくクルマをアメリカに送ることになったのです。
それで、ではWebもそのクルマを使って撮影しましょうとなったわけです。
ところが、ボクらのWeb用撮影が終わったころに
さらに彼の我がままが炸裂してそんなクルマのTV-CFなんかやんない!
と言ったかどうかは知りませんがドタキャンされちゃったんですね。

J.D.氏ありきのCF企画で進んでましたし
エクシーガの発売日程はもう迫ってますから
ドタキャンされてもそんな簡単に代役見つかりませんし
新たなCF企画もできるわけがありません。
で結局かなりどうしようもないTV-CFになってしまいましたね。

まぁ水面下でどういうやりとりがあったのか知りませんが
それ以来彼の印象は良くないですね。
もともと良かったわけではないですが(汗)

ちなみに、「ヤスイヨン」なのによくそんな大物スターと
契約する金があったなと思われるかもしれませんが、
不思議なことに広告宣伝費は車種毎に割振りされないし
開発費にはカウントされないのでバブリーなんですよね。

このアメリカ出張によるWebのティザー広告は
もう跡形もなく消えてなくなってますから、
ちょいと手元に残っていた恥ずかしい動画を載せておきましょう。
厳密に言えば著作権問題がありそうですが指摘されたら削除しましょうかね。

 

 

最後におまけで近所みかけた印象に残ったエクシーガの画像を。
どちらもオーナーが誰かはまったく知りません。

A161212_1 A171128_1
左のはどう見ても先代・スバルXV専用色のタンジェリン・オレンジを纏ったエクシーガ。
スバルのデザイン部がスタディで塗ったものが
中古車市場に流通する場合もありますがこれは???
個人的な趣向で全塗装にしたのかな。
嫌いじゃないです。

右のはエクシーガ・クロスオーバー7なのに
レーシーなアルミホイールにナンバー555と
ちとチグハグな仕立てのエクシーガ。
終焉の迷走ぶりはユーザーにも波及したか…(苦笑)

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コメント

伊豆のサイクルスポーツセンターに、私も行きました。

投稿: よっさん | 2017-12-02 02:25

スタディで塗ったやつを車内販売してたよね。
ヘンテコなツートンのアルシオーネとか、案内が回ってきた記憶がある(笑

投稿: ゆのじ | 2017-12-02 07:29

>よっさん

えっ、もしかして双子さんですか?

投稿: JET | 2017-12-02 07:50

>ゆのじさん

そちらの製作所にまで案内がまわっていたんですね。

投稿: JET | 2017-12-02 07:51

ハリウッドスターが気になって眠れず考えてました(笑)
まさか海賊の人ですか?凄いコスト掛かりそうですね❗

投稿: KIKI | 2017-12-03 07:03

おひさしぶりです。お元気ですか?エクシーガ乗っています。満足しています。

投稿: しゅうさく | 2017-12-03 16:50

>KIKIさん

そうですよ!
すごい高額、それ以上にすごいワガママ(+o+)

投稿: JET | 2017-12-03 21:44

>しゅうさくさん

どうもお久しぶりです。
エクシーガ、末永くご愛顧くださいね。

投稿: JET | 2017-12-03 21:45

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