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クロスオーバー7

とうとう世に出しちゃいましたなぁ,この車

スバル・エクシーガは2008年6月に国内で発表されました.
このクルマはボクの生活や趣味で乗るようなジャンルのクルマではありませんが,
個人的には企画段階から発売までクルマ全体に携わった初めての車種ですので,
それなりの思い入れがあります.
さらに,これまた個人的にはこのクルマを世に出せるようになったことが
スバル(富士重工)の転換期になったと考えているので,
相当に強い思い入れがあります.

新型の自動車を開発するには何年も(短いものでも3,4年)かかります.
なので,その頃からスタートしていたということです.
“その頃”ってのは,GMの経営が悪化して,富士重工株を放出し,
トヨタが助けてくれた頃ということです.
あっ,だからと言って短絡的にトヨタの指示・命令で作ったなんて話じゃありませんよ.
いくら筆頭株主でもそんな権限ないし,そんな意向もなかったでしょうし.

GMグループの一員だった頃のスバルはその中期経営計画(FDR-1)の中で
「プレミアムブランドを目指す」と掲げて(2002年),
BMWやアウディみたいにブランドネームだけで美味しい商売したいと願ってたわけです.
ラリー世界選手権でチャンピオン取ったりして勘違いをして
「走り」「走り」だと元ダートラ屋さんが肩肘張って突っ走り,
狭く・快適性低く・燃費悪く・スバヲタご用達の息苦しい車を突き詰めると
プレミアムブランドに成れると思い上がってしまったんですね.

まぁ,GMグループの一員として存在感を示したいとの側面もあったんでしょうが,
GMから見ればキャデラックの下,サーブの下,さらに下くらいの
プレミアムにはほど遠いブランドでしかないと目されていたから,
そのギャップもまたアライアンスをギクシャクさせた一因となってしまったのでしょう.

ただ,それでもスバルのミニバン・多人数乗り車が欲しいという
お客さんからの要望は少なくなく,
レガシィ・ツーリングワゴンから他社製ミニバンへの流出が続くなかで
それを食い止める車種が欲しいという販社からの声もあり,
そこで幾多のケーススタディもあったわけですが,
それは「プレミアム」だの「走り」だのの社内外の声に翻弄され
実現までには至らなかったわけです.
だって,「プレミアム」とか「走り」とかに突っ走るならミニバンは相容れないし,
ミニバンなのに「プレミアム」や「走り」に突っ走るなら健康的なクルマは出来ませんからね.

それでも,そんな中でも社内からも徐々に「プレミアムブランドを目指す」への疑念も出て,
2005年に修正FDR-1と言うのが出されて,
「小粒でも存在感と魅力ある企業」を目指しましょうという表現に改められました.
この頃から「スバルらしさ」って何なんだろう? というような議論もされるようになり,
それは単に水平対向エンジン,AWDとかいうハードの特長ではないし,
「走り」とか「モータースポーツ」とか「ボロボロ・ボクサーサウンド」でもないし,
ましてや「プレミアム」なんかでは断じてないと.

そして,2007年からの新中期経営計画の中では,
「すべてはお客さまのために」という上位スローガンの元で
「スバルらしさの追及」という表現になるに至ります.
簡単な話です,スバルはスバル360からいわゆる庶民の足として
最高に実用的なファミリーカーを目指してお客さんに喜んでもらえるものを
理想主義的に作ってきたのであって,
一部の金持ちの趣味や道楽や見栄の車を作ってきたのではないんですから.

そんな流れの中で,エクシーガの開発はスタートしたことになりますね.
いや,そんな流れだからやっとエクシーガの開発がスタートできたということです.
正直なところ出遅れ感というか周回遅れ感をバリバリ感じつつも
最高に(は届かないかも知れないけど)実用的なファミリーカーを目指すことによって
お客さんに向けても社内に向けても変化を示すことが使命となったわけです.
まぁそんなことは明文化されていませんが,ボクなりにそういう考えで携わっていました.

ボク自身のライフスタイルとは全く無縁ですが,
小さなお子さんのいるお母さんやお孫さんがいる方々が
「へぇー,スバルにもミニバン(多人数乗り車)があるんだ」
「スバルって走り好きの変わり者向けの車ばかりじゃないんだ」
と思ってもらえることが一番大切なんじゃないかと.

たとえスバルを買わないにしてもそういう世間の見る目を変えることが大切だし,
それはもちろんエクシーガだけで出来るわけじゃなく,
当時のインプレッサ(3代目),フォレスター(3代目),レガシィ(5代目)も
脱プレミアム,脱(肩肘張った)走り として最高に実用的なファミリーカーを目指したものです.
そういうことから徐々にスバルのイメージは変わり(というか原点回帰なんですが),
今へと至るわけです.
まぁ,アイサイト効果も非常に強かったと思いますが,
それでも「プレミアム」「走り」で突っ走っていた車では
アイサイト付けても今のようなヒットにはならなかったでしょう.

 

しかしねぇ,エクシーガを発売してからもうほぼ7年ですよ.
そして,スバルも変わったしお客さんも変わった.もちろん良い意味でね.
それに市場も変わった.
今は箱じゃないミニバンは全く売れません.それもトヨタ,ニッサン,ホンダだけ.

エクシーガの役目はもう終わったので
静かに引退させてあげたかったというのがボクの本音ですね.

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コメント

販社としてはせっかく7人乗りのファミリーカーが出てきたのに、
終わらせたらもったいない。って思っているかもしれません。
ステーションワゴンテイストの3列シートはスバルっぽくないかも
知れないのですが、他にめぼしいのがないのも事実ですので
もうちょっと売ってて欲しいな。
Kangooの3列シートはちと間延びしちゃってカッコ悪いんで。
(日本じゃ売らない…かな?)

投稿: 並さん | 2015-04-17 01:22

>並さん

コンセプトカーで終わりましたが,SRD-1なんてスバルらしいと思いますけどね.

http://matome.naver.jp/odai/2135752105702267201

投稿: JET | 2015-04-17 05:51

もうちょっと早く出ていれば市場食えたのにな~って思います。
でも、すこしずづこういった車種を増やしていくのは良い事ですね。

投稿: きき | 2015-04-17 11:16

>ききさん

まぁでも販売力の違いがありますからねぇ.

投稿: JET | 2015-04-18 06:49

大変興味深く読ませていただきました。
企画して生産して販売して・・というご苦労がよくわかりました。

投稿: おおたけ | 2015-04-18 08:51

>おおたけさん

ちょっと勢いにまかせて書きすぎました(汗)

投稿: JET | 2015-04-18 12:43

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