« 葛生で蕎麦 | トップページ | トイラジ紹介 その4 »

10th Anniversary

A970218_001_1
ちょっと前からスバル・フォレスターの“10th ANNIVERSARY”という
特別仕様車が発売されているようです.
確かに初代フォレスターは1997年の2月13日が発表なので,
ちょうど10年前の今日発表されたことになります.

個人的には縁深いクルマなんですが,
このフォレスター 実は企画当初は2代目インプだったんですね.
でも,初代インプは売れない・儲からない失敗作だったので
(その後,フルモデルチェンジの機会を逸したインプはWRCの追い風と
 減価償却した格安バージョンによって,失敗作のレッテルを逃れることになるが)

キープコンセプトとはいかずに違った道を模索することになったわけです.
 
で,アメリカからはチェロキーを作れ,
日本からはRVRスポーツギヤとかハイラックスサーフを作れ,
極めつけはヨーロッパからランドローバーをなんて声があがってくる始末.
だって,当時はRAV4もCR-Vも無く,ライトクロカンなんて言葉もなかったからねぇ.

上司もその上の上司も周りの偉い人たちも,
どこの馬の骨だか分からないような車には全く興味が無いらしく
(要は目立つ仕事じゃないし,出世には役立たないってことだね),
完全に放任状態,というか責任取りたくないから見て見ぬ振り状態.
 
でもボクはそれをイイ事に全然自分の仕事の領分じゃないのに,
テールゲートに背負ったバカ丸出しのスペアタイヤや殺人グリルガードを止めさせたり,
カタログの最高出力落としてまで実用トルク出させたり,
スバル車としては相当に静かにしたりと
一介のハンドリング&乗心地の実験屋にしてはかなり好き勝手やらせてもらいました.
 
何せ,誰もがどんなクルマにしたらいいかについて自分の意見すら持てない状態だから,
言ったモン勝ちってとこだったね.

今でこそ,“Best of Both” .
乗用車と(トラックシャシーベースの)クロカンヨンクとの良いとこ取りなんて言っているけど,
これは後からでっち上げたキャッチコピー.
 
ボクの考えはちょっと違ってたんだよね.
ここで乗用車って言うのは,この会社に勤めている人にとってはレガシィとインプなわけです.
が,当時は猫も杓子も280ps状態に入りつつあったレガシィもインプも
まともな乗用車なんかじゃなくて,
乗り心地悪くて真っ直ぐ走らない気難しくて楽しくない車,
普通の人にとっては良いとこなんて何処にも無い.
だから,フォレスターはアンチGT-BでありアンチWRXなんですね.
 
一方,いわゆるRVだのSUVだのが流行りだした頃だったけど,
ああいうデカイ・重い・なによりも他人を見下し・威嚇するような車って大嫌いなんですね.

そういう根性で乗ってる人間が大嫌いなんですな.
まぁ,チェロキーは良い車だし,ランドローバーも味わい深い車だし,
すべてのSUVユーザーがそうだとは思ってないけど.
だから,フォレスターはアンチRVもしくはアンチSUVなんですね.

言い換えれば,普通の人が普通に気兼ねなくリラックスして運転できる車,
これが狙いだったんです.
サーキットでタイムアタックするわけでもなし,
海山に分け入って自然破壊するわけでもなし,
移動のために作られたあらゆる道をいかに安全に安心して安楽に走れるかが狙いだったんです.
 
だって,スバル360にしてもスバル1000にしても,あるいはレオーネ4WDにしても
スバルの車造りの原点はそこだからね.

だから,最初からボクは女性と中高年がターゲットユーザーだと考えてました.
アメリカやヨーロッパでは正しくその読みどおりとなりましたが,
日本では当初ターボエンジンのみのスポーツ性を前面に出した売り方となってしまったため,
二極化してしまったようです.
レガシィが売れなくなると困るからフォレスターはとにかく若い人に売りたいというのが
売る側の論理です.
それに騙されて勘違いした運転下手な自称走り屋さんは
「こんなにロールする柔な足じゃ走れん」と騒ぐことになるわけですが,
そりゃそうだよ想定外のユーザーだし,そんなヤツに乗って欲しくないからねぇ.
 
てな誤算(それでも覚悟はしてたけど)もあったが,
フォレスターが発売になってからレガシィの販売台数はガクっと落ちましたからね.
その前年にフォレスターの開発費と同規模の多額の金を掛けてマイナーチェンジをして,
280ps,45タイヤ,ビルシュタイン・サスで売れに売れたはずのレガシィが
売れなくなってしまったんだから会社は慌てたんでしょう.

でも,レガシィが売れなくなった真の理由は消費税値上げ前の駆け込み需要が終わった
だけのことで,それ前は大金使ってマイナーチェンジなんかしなくたって
世の中みんな売れたんだよね.
それでも,その時280ps,45タイヤ,ビルサスの三種の悪器をやった人が
副社長まで成り上がって未だに威張ってるんだから呆れるねぇ.

グチついでに,当時のスバルは新型車を売り出すときには
何か「世界記録」なる勲章が無いとダメとかいうことになっていて
(勲章が欲しかったのは関係者自身が目立って出世したい為なのだが)
フォレスターでもインディ500で有名なインディアナポリスのサーキットで
世界速度記録を樹立しようということになりました.
 
こんな馬鹿げたお祭りなんかやりたくないし,
フォレスターのコンセプトにはそぐわないのでボクは大反対をしていたんだけど,
ここで突然ボクの上司がしゃしゃり出てきていつのまにやら世界記録挑戦の隊長面して,
挙句の果てにフォレスターは自分がやってきたみたいなことを言い出す始末.
スイカ泥棒ってやつですな.

と,脱線&グチになってしまったけど,
10年越えて次のフォレスターはどんな車になるんでしょうねぇ.
もう一度ゼロからコンセプトを考える時期に来ているんじゃないかとは思いますけどね.

 おまけ動画をこっそり載せますね.姿形は違うけれど中身はフォレスター,運転手はボクです.
 こう見えても大抵の道と言われる道は走れるんですよ.

|

« 葛生で蕎麦 | トップページ | トイラジ紹介 その4 »

コメント

JETさんには申し訳ないけど開発者のホンネが聞けて大変おもしろかったです。
苦労されたのも垣間見えてホントお疲れさまです。この手の話また聞かせて下さい。

投稿: おおたけ | 2007-02-13 22:23

>おおたけさん

「また」はオフのときにでも.

投稿: JET | 2007-02-13 22:34

興味深い話でした。偉くなっていく人はどうでもいいとして。
JETさんはスゴイ人なんだって解りました。言い方変ですね。
スバル教の信者に聞かせてあげたい話しですね。

投稿: こてっちゃん | 2007-02-13 22:38

特に最後の「世界記録」の段落がおもしろい!

”どこでも安全に走れて静かな車”
この車の本音はこれだったのですね。
2代目も当初はそれを継承したかのように見えましたが、結局WRX化している様に見えます。


投稿: あだち | 2007-02-13 22:52

すごーくおもしろかったです。
その開発者の考えの先にある、売りたい人と、買う人の間で僕は仕事してます。
たくさんの人が関わると、どうしてもいろいろな考えが混ざって最初の清らかな色が濁ってしまいますよね。
広告関連のデザインに関わっていると、マーケティングや広報の関連のひととお話をする機会が多いですが、それらは売りたい人の意見なんですよねぇ。当然売ってなんぼなわけですが、開発者の長い時間をかけた意図とは別に、そのことばを言う瞬間にずれたこと言う人はたくさんいるし、別の思いを乗せちゃうことも多い。
その上残念なことに、そういう発言がユーザーに声たからかに伝わってしまう。

どうしてこんな考えなんですか?というような疑問は開発者やデザイナーの方と話せば即座にクリアになる事って多いんですよねぇ。きみたち何故それをちゃんと伝えないのよ。ねぇ。

投稿: noby (yasupi) | 2007-02-13 22:56

いつの間にか車好きが出世大好きになっちゃうんだね。
いずこもそうだけど。
ぶれないコンセプト。
素晴らしいです。

投稿: 並さん | 2007-02-13 23:26

>こてっちゃん

○バ○ごときで偉くなってもたかが知れてるでしょ.だったらそもそもこんな会社に入社しないし,いつまでもいないよね.


>あだちさん

世界記録はねぇ.最初のレガシィ10万kmギネスに挑戦(笑)から自ら渦中の人間になってしまったので,アレですけどね.


>nobyさん

開発者,デザイナー,ともに口下手が多いのは損している.いやいや損することが問題じゃなくて,やはりちゃんと伝えられないことが問題なんですね.
分かっちゃいるけど,そんな訓練積んでないし,そこに意識が向かわないから一向に良くならないんだよね.反省しなくちゃ.

投稿: JET | 2007-02-13 23:36

>並さん

クルマ好きよりも,単にラリー好き/ダートラ好きなだけの人が多過ぎですな,この自動車会社の今は.
いわゆるスバヲタという人々もそういう狭い価値観の中だけでの車好きな人なので,自己完結してしまっているんでしょうけどね.

投稿: JET | 2007-02-13 23:46

この車は確か、私が入社した前の年にデビューしたので、同期入社した友人の何人かは新車で購入しました。

実は私、入社当時はレガシィの事もインプレッサの事もフォレスターの事も良く知らなかったんですが、、、

友人が買ったフォレスターに乗らせてもらった印象は、まさにJETさんの本来の狙いそのもの!だった記憶があります。
ただ付け加えるとすれば、筑○山のパ○プルラインとかをかっ飛ばした時の印象は、当時走り屋気取りだった私からみても全く「柔な足」ではなく、どちらかというと「自由自在」だったですけどね。生まれて初めて運転した4WD車にもかかわらず…。(←フォレスターに相応しくないヤツでした(汗)。今も…(汗汗))

投稿: よっしー | 2007-02-14 00:07

>よっしーさん

 「普通の人が普通に気兼ねなくリラックスして運転できる」ってことはね,アメリカで一日500~600マイル移動したり,4×4オンリーの峠越えしたり,ドイツのアウトバーンで200km/h巡航したり,アルプス越えのくねくねのアウトストラーダをタイヤが僅かにスキールする程度で駆け抜けたり,フランスのうねった田舎道を120km/hで飛ばしたりもするわけですよ.普通のオジサン,オバサンがね.
 そういうところもちゃんと真面目に作りましたからね.

 設計速度120km/hの某テストコースを160km/hで片手鼻歌まじりで運転できること.それがボクが密かにこのクルマに課したハードルのひとつでしたよ.

投稿: JET | 2007-02-14 05:45

しょもないことで申しわけないのですが、実は、私の名刺には「Forrester」という文字が刷ってあります。世界でNo2だか3だかの(車のではない)リサーチ会社なんですが、パートナーになっているのであります。

さておきまして、オヤジのマーク2四駆を買い換えるタイミングになったら、是非薦めたいと思います。ベンツワゴンの四駆がいいとかいったりしてますけどね。

投稿: KAZU | 2007-02-14 14:05

なかなか面白いはんしですね。

友人のいんぷれっさ乗りに教えてあげたいです。
エンジン周りがぶっ壊れても乗り続けてるキチなのですが…
そろそろ新しいインプに乗り換えたいと申してます…

投稿: nasa | 2007-02-14 16:22

>KAZUさん

ベンツとスバルを比べちゃいかんですよ.如何に地に落ちた今のベンツと言えどもね.ただ,そのベンツでも四駆を選択する理由はあまり無いと思いますけどね.(FRが良いと言う意味ではありません)


>nasaさん

インプのWRXみたいな車を完全否定しているわけではないので,誤解しないでね.ただ,ああいう車で儲けようって魂胆には賛同しかねます.ああいうのに乗る人にも「オレは変態だ」と自覚した上で乗ってくださいと言いたいですね.

投稿: JET | 2007-02-14 19:58

>JETさん

ホントですね、マーク2で四駆を選択するのも少数派だと思うのですが、親父は次の車にも絶対に四駆を求めると思います。

最近は雪が少なくなったものの、秋田ですし、なにより、一般道から30m弱の狭い坂を昇ったところに実家が建ってるのが大きいです。ちなみに、この坂を昇り切るには、途中2箇所ほど道幅が狭くなっているコーナーがありまして、2tトラックがすごく苦労してようやくすり抜けれるって感じです。

ちなみに、私の車だと多分無理です。道幅が狭いだけじゃなく、樹齢300年近い腐りかけた楠の根っこがはみ出していて、その上にタイヤをかけないとダメだとか、まあそんなやこれやありまして。

そして、両親とも年ですからねえ、雪かきは機械を使って、最低限、しかたなくしかやらないので、四駆にこしたことはないと思うでしょう。息子は、全然実家に近寄らないので頼りになりませんし(笑)。

また、オヤジは老けたとはいえ、いまだに競技スキーが好きで、先週も国体だとかいって4日ほど遠征してました。整備されたスキー場にだけ出かける訳ではないので、保険にもなる四駆を選びたいのだと思います。

それではなぜにベンツ? と本人が言ってるのかと申しますと、仲間内の車をレスキューとして運転したところ、ビーエムは大したことなかった(失礼な言い分ですが、本人には良さが判りにくかったようです)けど、ベンツは良かったなあ、というところからきていると思います。ちなみに、マーク2は、本人にとってカッコよくて四駆も選べるってことが選択の理由だったようです。

話は変わりますが、オヤジはポルシェにあこがれがあったみたいで、乗せろ乗せろってうるさかったんですが、実際乗ってみたら一回でこりたみたいです。本人にとっては、いつでもどこでも安心、安全で走れる車とは正反対と感じたのでしょう。

普通の911だったら、また違ったのかもしれませんけど、それで懲りたせいか、今の車には助手席に乗せろとすらいいません。

投稿: KAZU | 2007-02-14 22:00

>KAZUさん

長文コメントありがとうございます.
背景がよく分かりました.であれば,ベンツの四駆という選択肢もありなのかもしれませんね.

イメージで四駆を選ぶのは愚かなことだと思っているのですが,必然があれば先ずは四駆という中で好きなブランド・車種を選ぶのは良いんでしょう.特に,KAZUさんのお父様は自分で運転した感覚に基づいて自らの価値観でベンツが良いと考えていらっしゃるようなので,第三者がとやかく言う話ではないですね.

ベンツも以前の「最善か無か」と言っていた頃に比べると大したことのない車になっちゃったという感想をもっていますが,それでも昨今のBMWより奥深さを感じますね.今のBMWはあまりにも表層の分かりやすいスポーティ&高級感の過剰演出に走っていて,KAZUさんのお父様もきっとそういうところが「大したことがない」と感じたのだと思います.

投稿: JET | 2007-02-15 05:35

私の友人は、STIに乗ってるので十分『変態』かも(笑)
その辺は、自分でも自覚してる様です。

燃費が悪くても、後部座席が冬場は、凍死しそうになっても、クラッチ焼き付いても、燃料ポンプ壊れても、エンジンセンサーが壊れ様と、
車年齢10才になろうと乗ってます。

運転しても車重量は、有りますが、力が有るので、無理な運転をしなければ、楽しい車ですけどネ!

投稿: nasa | 2007-02-15 21:18

 職場の後輩が最近、初代フォレスターを中古で買ったので、「これを読んどくように!」と命令(笑 しました。車には余り詳しくない奴なんですが、感動してましたです。

 ただ、スピード違反その他で一度、免取りになってる奴なので、「スピードは控えめに」と申し添えておきました・・・。

投稿: こしょやん | 2007-02-17 18:52

フォレスターの開発者にお会いするとは思いもよりませんでした。お会いと言っても、このブログを読んでいるだけですが。

私は、1985年からスバルの車を乗り継いでいます。最初はレオーネツーリングワゴンGTターボ(エアサス)でした。スバルと言う会社さえ知らない頃でした。私がスキー、親父が釣りに行くのに良い4駆を探して、すべてのメーカーを回り、ほとんどの4駆を見たり試乗したりして、最後の最後、T社の車に決めかけた時に会社の先輩が乗っていたのがレオーネでした。
聞きなれないその車を試乗したら、もう楽しくて。。
スバルの車は、いつも、ワクワク(する気持ち)が付いている様に思います。

レオーネ1台、レガシィー2台、インプ2台と乗り継ぎ、今回フォレスターの10thを注文させていただきました。

もう、峠を攻めたり、高速道路を言えないスピードでかっとんで来る年頃でも無いオヤジ年齢になりましたので、普通の運転で楽しめる車が良いです。
今、私が10thを注文できるのは、JETさんのお陰ですね。

フォレスターは女房(女性)も楽しく運転できる車だと思います。納車が待ち遠しいです。
まずは、フォレスターを世に出して下さったJETさんに感謝致します。

投稿: ta2 | 2007-02-21 22:28

ta2さん,はじめまして.
わざわざコメントありがとうございます.

新しいフォレスターも大切に,かつアクティブに使っていただけると嬉しく思います.
ボクも「オヤジ年齢」になってるにもかかわらず峠走ったりしている「バカオヤジ」ですが,今後ともよろしくです.

投稿: JET | 2007-02-21 23:10

JETさん

ご挨拶が、まだでした。
はじめましてペコリ。

いやあ、ホントは峠、大好きなんですよ。箱根旧道、ボソ。
コーナリングが遅い車は嫌いだったんです。
だから、背の高い車は敬遠していたんですけどね、ずっと。

ま、フォレスターにしたので、フォレスターなりの運転の楽しさが味わえればよいと思っています。
また、時々寄らせて頂きます。よろしくお願いします。

投稿: ta2 | 2007-02-23 08:28

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/83269/13890493

この記事へのトラックバック一覧です: 10th Anniversary:

« 葛生で蕎麦 | トップページ | トイラジ紹介 その4 »